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科学技術振興機構報 第247号

平成18年1月27日

東京都千代田区四番町5−3
科学技術振興機構(JST)
電話(03)5214-8404(総務部広報室)
URL http://www.jst.go.jp

地中を3次元的に画像化する"対人地雷探知システム"を実証試験レベルで実現

(クロアチアの実証試験で技術評価 平成18年2月〜3月)

 JST(理事長:沖村憲樹)は、「人道的対人地雷探知・除去技術研究開発推進事業」において、対人地雷が埋まっている深さが正確に判る、実証試験レベルの対人地雷探知システムを実現しました。
 従来の地雷探知作業では、主に金属探知機が用いられていますが、金属くずにも反応してしまうことから誤探知が非常に多く、地雷の埋設深さも正確には分かりませんでした。10〜15cm以上深く埋められた対人地雷を探知することさえも困難な状況です。
 今回発表する地雷探知システムは、佐藤 源之(東北大学東北アジア研究センター 教授)と荒井 郁男(電気通信大学 電気通信学部 教授)らによる先端的な地中レーダ技術を活用することにより実現したもので、深さ20cm程度までの地中の様子を3次元座標系で画像化します(図1)。地雷探知作業者はこの画像を見て埋められている対人地雷の埋設位置、深さ、および姿勢を確認してから、地雷の除去作業を行います。本システムは、金属くずとの見分けをすることもできます。そのため、より安全かつ確実に地雷処理ができるようになります。
 今年の2月から3月上旬にかけて、地雷被埋設国のクロアチアのベンコヴァッツにある試験場にて行われる実証試験に、本システムを提供することになりました。
 また、2月16日(クロアチア時間)に試験の様子を、現地にてワークショップを開催し、一般公開する予定です。この実証試験が成功すれば、国際的な取り組みの中で、民間企業の技術開発力を活用した実用化が促進されることが望まれます。

 人道的対人地雷探知・除去技術研究開発推進事業(研究総括:古田勝久 東京電機大学教授)は、世界各地で行われている人道的観点からの対人地雷の探知・除去活動をより安全かつ効率的に実施できるよう、先端的な科学技術を駆使して、地雷被埋設国における実証試験に提供できる(実証試験レベル)技術の研究開発を推進しています〔参考1〕。具体的には、1対人地雷を探知する新規なセンシング技術〔参考2〕、2地雷原に安全かつ効率的にセンサ等を持ち込むためのアクセス・制御技術〔参考3〕の研究開発を行っています。研究開発は、平成14年に始まり、3年計画で現地実証試験に提供可能な技術を目指す短期的研究開発課題と、5年計画で現地実証試験に提供可能な技術を目指す中期的研究開発課題とがあります。 このうち短期的研究開発課題において、地中に埋められている対人地雷を3次元座標系で画像化する技術を実現しました。

 従来の対人地雷の探知には主に金属探知機が単独で用いられており、作業者は金属探知機の反応音をよりどころに探知作業を行っています。しかしながら、地中には金属くずも埋まっているため誤探知が多く、地雷による反応は1,000回に1回の割合ともいわれています。10〜15cm以上に深く埋まった対人地雷を探知することも困難です。また、金属反応の音による探知なので、対人地雷の埋設深さが正確には把握できません。そのため、探知後の地雷処理作業(土を掘り、対人地雷を露呈させて、その場で爆破処理する作業)に大きな危険が伴います。
 本事業による地雷探知機は、大学等の先端的な研究の成果である地中レーダに、従来の金属探知機を補完的に組み合わせた複合センサです。地雷探知において十分な性能とされている、深さ20cm程度までの地中の様子を、3次元座標系で画像化します(図1)。この画像には地中に埋まっている物の位置と形状が映し出されますので、作業者はこの画像を見て対人地雷を探知します。この技術により誤探知を大幅に減少させることができます。また、地雷の埋設位置を視覚的に把握することができるので、より安全かつ確実に地雷処理作業を行うことができます。

 JSTでは、この技術を地雷被埋設国のクロアチアが行う実証試験に提供します。実証試験は、準備期間を含め2月から3月上旬まで、クロアチアのベンコヴァッツにあるCROMAC−CTDT注1注2の試験場にて実施されます〔参考4〕。この試験場は、地雷探知技術を試験するために常設されているもので、試験レーン(幅約1m、長さ約50m)に起爆剤を取り除いた対人地雷が埋設されています。実証試験では、作業者は地雷の埋設位置は知らされずに探知作業を行い、CROMAC-CTDTがその結果を評価します。また、実際の地雷原で作業している方に金属探知機を用いて探知していただき、従来技術との比較評価も行われます。

試験の様子は、次の日時および場所にて一般に公開します。探知試験の中間結果も公開します。実際の地雷原において地雷探知・除去活動に携わる専門家や国連からの参加も予定しております。


図1 本事業による地雷探知センサの地中画像の例
参考1 人道的対人地雷探知・除去技術研究開発推進事業とは
参考2 地中を3次元的に画像化し、対人地雷を探知する地中レーダ
参考3 地雷探知センサの性能を引き出すアクセス・制御技術
参考4 クロアチア ベンコヴァッツの試験場

開催日:平成18年2月16日(木)
・地雷探知技術の説明および実証試験概要説明(日本人研究者によるプレゼンテーション)
時 間:9:30〜11:30 (現地時間)
場 所:Hotel PORTO (ul. Nikole Jurisica, 2, Zadar, CROATIA)
〔移動〕
・現地実証試験の一般公開(試験機の演示)
時 間:14:00〜15:30(現地時間)
場 所: CROMAC-CTDTの試験場(Polygon Benkovac, CROATIA)
〔移動〕
・意見交換会
時 間:16:30〜18:00(現地時間)
場 所: Hotel PORTO (ul. Nikole Jurisica,Zadar, Croatia)
*詳細スケジュールなどは、追ってホームページにてお知らせします。
  (URL: http://www.jst.go.jp/kisoken/jirai/index.html
   クロアチアは、日本時間より8時間遅れです。

クロアチアでの試験結果については、平成18年度内にホームページ等にて公開する予定です。また、これまでは、主に大学などの研究者を中心に国内で研究開発を進めてきましたが、今後はこの実証試験を契機に、国際的な取り組みの中で、民間企業の技術開発力を活用した実用化開発が実施されることが望まれます。

注1) CROMAC(Croatia Mine Action Center:クロアチア地雷対策センター)
 クロアチア共和国における地雷対策(地雷探知・除去活動のコーディネート、地雷回避教育、地雷被害者支援など)の計画および実行を主な業務とする。
1998年にクロアチア共和国の政令により設立。
注2) CROMAC-CTDT (CROMAC-Center for Testing, Development and Training)
 地雷や不発弾の探知技術の試験・評価、および地雷探知・除去活動の従事者の訓練を主な業務とする。2003年にCROMACの下部組織として設立。

<お問い合わせ先>

独立行政法人 科学技術振興機構
戦略的創造事業本部 研究推進部 研究第三課 相馬融、加藤豪、土屋暢久
TEL 048-226-5636 FAX 048-226-1216