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平成19年度第1回プログラムオフィサーセミナー開催報告

プログラム 参加者実績

1.開催日

平成19年6月27日

2.場所

東京大学鉄門記念講堂

3.POセミナーの経緯と位置づけ

会場の様子
 競争的研究資金のマネジメントは、いかなる研究に資金提供するか、即ちプログラム設計と課題採択プロセスが第一義的に重要であるが、同時に、どれだけの資金をどのように提供すれば、最大の資金効率(研究成果)が上げられるかという会計的側面の設計とマネジメントも極めて重要である。
 本年2月に文部科学省よりガイドラインが出され、我が国の競争的資金制度の会計的側面に関し大きな改革がなされる状況にある。例えば、これまでは、研究者個人に支給される形態をとっていた競争的資金が、今後は大学等研究機関に支給され、研究機関の責任において、管理される方向にある。
 こうした背景を踏まえ、競争的資金の会計的側面に関し、我が国の現下の状況を、総合科学技術会議、財務省、文部科学省、日本学術振興会からご紹介頂き、かつ、競争的資金の会計的側面に関し、ほぼ20年前より全米的に取り組んでいる米国の状況を理解する目的で、NSF(National Science Foundation)、シカゴ大学、メリーランド大学のURA(University Research Administrator)の方々にご講演をお願いした。プログラムは添付のとおりであり、約240名の参加者から多くの質問が寄せられ、今回のPOセミナーの企画が時宜にかなったものであることが伺われた。各講演の概略は以下のとおりである。

4.各講演の概要報告

(1) 総合科学技術会議 本庶佑 有識者議員
競争的資金制度は科学技術政策の根幹であるが、今なお多くの課題を残しており、総合科学技術では、昨年12月より研究資金ワーキンググループの活動を行い、そのまとめが「競争的資金の拡充と制度改革の推進について」と題して平成19年6月14日の日付で提出されており、そのコピーが会場に配布された。我が国の競争的資金は、細分化されており、継続性の点で難点があるなど、米国の、例えばNIH(National Institute of Health)の制度と比べても改善すべき点は少なくないなどの指摘がなされた。
今後改善すべき点として、更新性(継続性)、大型設備の共有化、若手支援、ハイリスク研究、研究費の単年度性、競争的資金の偏在、研究機関毎の資金効率などに触れ、競争的資金制度改革の重要性が強調された。

(2) 科学技術振興機構 高橋宏 主監
POセミナー開催の経緯と今回開催のPOセミナーの背景説明がなされた。ついで、各講演者及び講演内容の概要紹介がなされ、特に海外の講演者の講演に関しては、参加者の理解を支援する目的で以下の予備知識の提供がなされた。
米国の競争的資金制度が"Award Year"で管理されていること、"Award Year"は競争的資金が提供された時からの一年を言い、会計年度とは無関係に設定できること、米国の繰越は"Award Year"をまたいでの繰越であって、会計年度間の繰越が問題となる日本とは本質が異なること、米国には10のFunding Agencyと98の大学および研究所が共同で競争的資金制度改革に約20年前から取り組んできたFDP(Federal Demonstration Partnership)という枠組みがあり、その活動が現在の米国の競争的資金制度の柔軟性を実現してきており、現在もその活動が続けられていること、米国の大学で競争的資金のメネジメントを担当する人材をURA(University Research Administrator)とよび、URAの団体としてNCURA(National Council of URA)があり、URAの能力向上と育成に取り組んでいること、今回のPOセミナーの講演者である、Dr. SheridanとMs. Geronimoは二人ともURAとして約30年の経験を持ち、NCURAの重鎮であることなど。

(3) 科学技術振興機構 小間篤 研究主監
科学技術振興機構では、科学技術振興機構が提供する競争的研究資金を一層効率的なものにする目的で、プログラム調整室を立ち上げた。プログラム調整室は、研究経歴のあるプログラムオフィサーにより構成され、課題採択時には、競争的資金の重複受領状況あるいは研究経費の使用計画の妥当性に関する意見を選考委員会に提出し、適切な課題採択に資する一方、研究推進時には、書面あるいは現地調査により、研究経費の使用状況を定期的にチェックし、不適切な使用があった場合や、制度上の欠陥のために研究経費の使用がしにくくなっている場合には、助言や改善策の提示を行うことを任務としている。

(4) 文部科学省 吉川晃 文部科学省科学技術・学術政策局 科学技術・学術総括官
文部科学省における、競争的資金の適正な管理と制度改善に向けた取り組みの紹介がなされた。具体的には、昨年12月にとりまとめられた「不正対策検討会報告書」の内容や、これを踏まえた「研究機関における公的研究費の管理・監査のガイドライン(実施基準)」の策定など、研究機関における公的研究費の適正な管理体制の強化のための文部科学省における取組みについて紹介がなされた。また、制度改善については、「年度間繰越」「間接経費の拡充」「不合理な重複及び過度の集中の排除」等に関し、文部科学省における取組み状況の説明がなされた。

(5) 財務省 中川真 財務省主計局 主計官
「国の研究開発予算の会計管理の原則」に関し、予算の単年度主義、会計年度独立の原則、繰越明許費など会計年度独立の原則の例外、などの説明がなされた。こうした原則を踏まえた上で、「研究開発予算への対応」として、早期の予算交付、繰越明許費の活用に関し状況報告がなされ、こうした対応が、研究現場での資金管理体制の確保や配分機関を通じた適正執行の確保が前提としたものであるとの認識が示された。

(6) シカゴ大学 Dr. Mary Ellen Sheridan
Associate Vice President for Research and Director of University Research Administrator
シカゴ大学(私立)の全学の歴史、組織、予算の概要に続き、競争的資金(ファンド)の獲得状況とその内訳の紹介がなされ、続いてファンディングの事務を統括する部門であるUniversity Research Administration=URAの機能や組織について紹介された。URAは、主としてファンディングの応募段階の各種事務を担当するが、URAと対の組織としてのRestricted Funds Office=RFOはファンディングを獲得した後の、主として会計的側面の事務を担当する。URAもRFOも大学本部の組織であり、各部局に配置されているLocal Administrator(各部局におけるファンディング業務担当者)の教育訓練もURAやRFOの責任業務となっている。
URAの任務は、各種ファンディングのスポンサーの意向を十分に理解し、それを研究者に伝え、かつ研究成果が最大化されるようマネジメントして次の新たなファンディングの獲得につなげて行くこととのまとめがなされた。また、米国の大学側とFunding Agency側とが協力してファンドの仕組みを改善する仕組みとしてのFDP(Federal Demonstration Partnership)や、大学側のファンディング業務に従事する専門家としてのURAの活動団体であるNational Council of URA=NCURA について紹介がなされた。

(7) メリーランド大学 Ms. Anne S. Geronimo
Director Research, Development Division of Research
メリーランド大学(州立)の歴史、組織、ファンディング資金獲得状況の紹介がなされたがメリーランド大学で特徴的なものは、DOD(Department of Defense)からのファンドが多いこと、また、政府外(Non-Federal)のファンドが多いことである。これは、メリーランド大学が工学(Engineering)を得意としているからとのこと。またファンド資金の約55%が人件費として支出されていること、ファンドが研究者個人ではなく大学になされること、これはどこのファンドでも同じであること、米国のファンディング制度が、政府組織の一つであるOMB(Office of Management and Budget)の定めるA-21、A-110、A-133などのCirculars(通達)によって規定されていることまた間接経費、直接経費の考え方、さらに、Allowable Costs 即ち、ファンド資金の使い方に関するルールについて説明がなされた。またExpanded Authority、これは、大学に一定のファンド管理能力があると認定された場合、ファンド資金の使い方、No-cost time extensions (研究期間の延長)、Pre-award cost (採択決定前の支出をファンド資金で充当する仕組み)、繰越、など、Funding Agencyに代わって、大学のURAが判断する仕組みであり、これが、米国のファンディング事務の合理化に役立っていることについての説明がなされた。まとめとして、大学のURAの任務は、研究者が多くのファンドを獲得出来るよう支援し、Sponsor(Funding Agency などファンドを出す側)との良好な関係を構築し、研究者とSponsorsとの懸け橋になり、さらに多くのファンド獲得につなげることであるとのことであった。

(8) National Science Foundation (NSF) Dr. Larry Weber
Head, NSF Tokyo Regional Office
NSFの使命,予算規模、ファンディング状況、ファンディングの仕組み、採択審査の仕組み、ファンディング領域、課題審査の視点、プログラムオフィサーの役割、受託者(Grantee)の役割について説明がなされた。続いて、NSFの機能、ファンディングプログラムの種類、プログラムオフィサーの役割がProgram Managerであって、個々の課題を管理するProject Managerではないこと、個々の課題に関する研究者や予算の管理は受託者である大学等の責任であることに触れ、具体的に受託者である大学側の役割とNSF側の役割について説明がなされた。NSF側の役割としての監査とモニタリングに関し、受託者をHigh Risk機関、Medium Risk機関、Low Risk機関に3分類し、リスクの程度に応じた監査やモニタリングがなされているとのことであった。要は、個別の研究者の管理は受託者(Grantee)である大学に任せていること、個別の課題管理とプログラム管理を分けてとらえていること、受託者をそのリスクに応じてモニターしていることがNSFの基本原則であるとのまとめであった。

(9) 日本学術振興会 伊賀健一 理事
閉会の挨拶を兼ねて、我が国の競争的資金(ファンド)の全体像と、日本学術振興会が実施している科学研究費補助金(=科研費)のマネジメントについて紹介がなされた。具体的には、「学術システム研究センター」の業績例、「学術研究動向に関する調査・研究」、科研費の間接経費拡大、繰越明許の活用促進、不正使用への対応等について紹介がなされた。

5.アンケート結果

平成16(2004)年9月21日に第一回POセミナーが開催され、今回は都合第7回目のPOセミナーであった。これまで、海外のPO制度の紹介など比較的ジェネラルな内容のプログラムにより実施されてきたが、毎回行っているアンケート調査によれば、PO制度に関し、より掘り下げた内容のセミナーを希望する意見が散見された。そこで今回のアンケートでは今後のPOセミナーのプログラム構成に関し、従来のようにジェネラルな内容のものと、専門的な内容のものとどちらを希望するか訪ねたが、いずれの内容も希望する意見が少なくなかった。我が国にPO制度が導入されて約4年が経過するが、この間、人材の異動が激しく、専門家としてのPOが必ずしも蓄積されていない状況がアンケートから読み取ることが出来る。我が国にPO制度を定着させて行く上で、今後の大きな課題である。今後のPOセミナーのプログラム構成に関しては、専門性を含めつつジェネラルな内容も含めるという構成を目指す予定である。
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