プログラムオフィサー及びプログラムディレクター制度について |
※本内容は総合科学技術会議 競争的資金制度改革プロジェクト
第8回会合議事資料「プログラムオフィサー及びプログラムディレクター制度について」より再構成しました。 |
「競争的研究資金制度改革について中間まとめ」(意見)
【総合科学技術会議 平成14年6月19日】
リンク先はこちら |
「競争的研究資金制度改革について」(意見)
【総合科学技術会議 平成15年4月21日】
リンク先はこちら |
《「中間まとめ」におけるプログラムオフィサー等の抜粋(要約)》 |
3.公正で透明性の高い評価システムの確立
ii | 研究課題管理者(プログラムオフィサー)等の設置
第2期科学技術基本計画等においては、各制度の個々のプログラムや研究分野で課題の選定、評価、フォローアップ等の実務を行う研究経歴のある責任者「プログラムオフィサー」と競争的研究資金制度と運用について統括する研究経歴のある高い地位の責任者「プログラムディレクター」を各配分機関に専任で配置し、競争的研究資金制度の一連の業務を一貫して、科学技術の側面から責任を持ち得る実施体制が整備されるよう努めるとされており、さらに以下のように具体的に推進する。 |
○ | 配分機関においては、プログラムオフィサーを配置し、法人においては、これに加えプログラムディレクターを配置する。 |
○ | 配分機関は、専門性と業務量、プログラムの編成等を勘案して、求められる資質と要件、人数と配置部署、職階等と配置時期を明確にした実行計画を平成15年度の概算要求に併せて総合科学技術会議へ提出し、プログラムオフィサー等の配置体制を平成17年度までに完了する。 |
○ | 各府省のプログラムディレクター等と総合科学技術会議との連絡会議を行う。 |
|
|
<プログラムオフィサーに求められる資質> |
プログラムオフィサーは、一般的に自然科学系の博士号を有しており、担当プログラムに関わる研究分野の専門知識や一定期間の研究経験を持つ。高度な専門知識に基づく判断ができるとともに、研究者や技術者と一定レベルの科学技術上の議論をする能力をもつ。普段から研究開発の動向を把握しており、広い人的ネットワークを有している。
NFSやDARPAの場合、研究開発や研究管理に少なくとも博士号取得後5〜6年以上の経験を持つことが必要。NIHは、規定がないが5年以上の研究経験と競争的資金への応募歴を有しているのが通常の要件である。大部分のプログラムオフィサーが、大学、公的研究機関、産業界等の元研究者であり、多くは30代後半〜50代である。 |
プログラムオフィサーの役割 |
|
I. 担当プログラムの方向付け |
専門知識を持つプログラムオフィサーが、継続的にきめ細かく研究動向を把握することで、プログラムの方針や新規プログラムを能動的・機動的に設定することができる。 |
|
|
- 有望な研究開発、優れた研究者の発掘(論文、特許、各種研究報告書等からの情報収集)
- 人的ネットワークの形成と維持、技術シーズの発掘(国内外の学会、セミナー等に出席)
|
|
- ワークショップ等での議論も踏まえて、プログラムの方針(案)(目的、目標、重点テーマ、新規テーマ設定)を作成
- その際、他のプログラムと調整、新規プログラムや新規領域設定の提案(融合分野や新規分野等)を実施
|
|
- プログラムの方針(案)を作成しプログラムディレクターに提言
|
|
- 学会、セミナー等に、所属機関の代表としてプログラム方針を説明等
|
|
注:●はプログラムオフィサーが特に行うべき役割 |
|
II. 公募・審査・採択決定 |
・ | 申請書の研究内容に基づく第一線の研究者・技術者からの評価者の選任、及び評価者の評価が可能。 |
・ | プログラムオフィサーの権限と責任で、リスクは高いが先駆的あるいは政策的に重要な課題の採択が可能。 |
・ | プログラムオフィサーが助言を行うことで、選択課題の質の向上、評価が次の企画(再申請)に反映。 |
|
|
- プログラムの方針を説明
- 研究者や研究機関からの応募等に関する相談に対応
|
|
- 申請書の内容を把握
- プログラムの方針や基準に適合しない申請書は他のプログラムへ割り振り、あるいは返却
- 評価方法(メールレビュー、パネルレビュー等)の選択
|
| |
米国の各配分期間の詳細は 下記参照
|
基本的な役割
- 評価者の選任(第一線の研究者・技術者)
- 外部評価の計画・実施
- 評価結果やコメントのとりまとめと、審査報告書の作成
- 採択課題候補(案)の作成
- 評価結果を参考にして、各課題の科学的技術意義や政策的意義等を判断して作成
- 評価コメントやエフォート等を踏まえ、どの課題にどの程度の資金提供を行うかを立案(研究費の査定)
- 研究分担者の必要性や役割の適切さを判断
- 他の制度において、同じ研究者による同じ研究内容の課題がないかを確認(重複の排除)
- 選択課題候補(案)をプログラムディレクターに説明・提言
|
| |
|
- 評価内容や不採択理由が記載された審査報告書の送付
- 申請者からの質問、確認、相談等への対応
- 不服申立への対応
- 採択課題について、研究計画の改善点を指摘。不採択の申請書にも助言(研究計画の改善)
- 課題の継続(Renewal)についての相談
|
|
注●はプログラムオフィサーが特に行うべき役割 |
|
事前評価および採択決定(米国のケース)
(注)DOEは外部評価の前にプログラムオフィサーによる評価がある。
■部分:外部評価
NIH(約1100人) |
NSF(約400人) DOE(注)(人数は不明) |
DARPA(約140人) |
■申請書の振分け
約120の評価委員会
・評価委員会の委員(評価者)は事前に選任
▼
■1次評価
評価委員会(専門家)点数化
・メールレビューの依頼とパネルレビューの実施
・必要に応じて、現地調査
▼
■プログラムオフィサーによる評価
(内部ミーティング)
・外部評価の結果及びコメントのとりまとめ
・各課題毎に審査報告書を作成
・評価結果を踏まえ、科学技術及び政策的な判断を行い、採択課題候補案を作成。極端な評価結果、ボーダーライン近傍、政策的に重要な課題は、優先順位を入れ替える
▼
■2次評価
資金提供をする各研究所(25)のカウンシル(専門家、有識者)政策との整合性も加味して優先順位付け
▼
■Exective Committee
(各研究所の所長および局長)採択課題の決定 |
■評価者の選任
・メールレビューでは、申請書毎に評価者を選任
・パネル(評価委員会)の委員(評価者)の選任
▼
■メールレビュー 若しくは
(後にパネルレビューがある2段評価もある)
パネルレビュー
・メールレビューの依頼
・パネルレビューの実施
・必要に応じて、現地調査
・リスクの高い小規模な課題については、外部評価を経ないで決定される事がある。
▼
■プログラムオフィサーによる評価
・外部評価の結果及びコメントのとりまとめ、それを参考にして採択課題候補案を決定
・各課題の資金規模を立案
・各課題毎に審査報告書を作成
▼
■Division Director
(プログラムオフィサーの上司)による採択課題の決定
・プログラムオフィサーは採択課題候補について説明 |
■評価方法の選択
パネルレビュー又は内部ミーティング
・評価者の選任 ▼
■パネルレビュー
又は 内部ミーティング
・パネルレビューの実施
・必要に応じて、現地調査
▼
■プログラムオフィサーによる評価
・左記のNSF及びDOEと同様
▼
■Division Directorによる採択課題の決定
・左記のNSF及びDOEと同様 |
|
III. フォローアップと事務管理 |
・プログラムオフィサーが、継続的にフォローアップを行い、研究計画変更の提言(課題の縮小・中止・拡大等)を行うことで機動的な管理が可能。
・優れた成果を次の政策に反映。
・プログラム全体の運営の見直し。 |
|
注:●はプログラムオフィサーが特に行うべき役割 |
プログラムオフィサーの権限の度合い |
各資源配分機関の課題の選定方法によりプログラムオフィサーの役割や制限には違いがある |
DARPA |
・課題の策定、立案、評価(評価基準も含め)等を全て自らの裁量で行うことができる。
・外部評価ではなく、内部のミーティング(内部の専門家)によって評価を行うことができる。
・最終的な採否はプログラムオフィサーが行う。 |
DOE |
・外部評価の前に、プログラムオフィサーが自ら評価を行ない、基準に満たない申請書を返却できる。
・外部評価の結果はあくまで参考として採択の判断に活用される。
・外部評価することなく継続の決定ができる。 |
NSF |
・外部評価の結果はあくまで参考として採択の判断に活用される。 |
NIH |
・評価委員会(1次評価)及び各研究所のカウンシル(2次評価)にて、各課題の優先順位付けが行なわれるが、1次評価後に、プログラムオフィサーは科学技術及び政策的判断から採択課題候補案を作成する。その際、プログラムオフィサーの権限で、ボーダーライン近傍の課題や政策的に重要と判断する課題等については、評価委員会(1次評価)の優先順位を入れ替える。 |
|
|
プログラムオフィサーの確保とキャリアパスの事例
米国におけるプログラムオフィサーの確保やキャリアパスは配分機関によって異なる。プログラムオフィサーの確保は、(1)配分機関の傘下の研究機関の研究者が配分事務の部署へ異動、(2)公募、あるいは(3)関係者の人的ネットワークを通じたスカウト等がある。任期がある場合と、定年までプログラムオフィサーとして働く場合がある。 |
1. | NIH NIHの内部研究所(所内研究班)の研究員から、外部研究班のプログラムオフィサー(約1100名)になるキャリアパスが確立されており、定年までプログラムオフィサーとして従事する。また、大学や企業から中途採用される場合もある。 |
2. | NSF プログラムオフィサー約400名のうち約4割は、2年程度の任期付で主に大学からの出向者である(大学は休職)。部長級ポストのDivision Director、さらに上位のAssistant Directorにも、大学からの出向者が就くことがある。HPや学術雑誌上で公募を行なうが、プログラムオフィサーからの紹介やスカウト等で計画的にプログラムオフィサーを確保している。任期付の場合、任期終了後、ほとんどが大学に戻り、研究・教育・大学運営に携わる。一部パーマネントとしてNSFに残り、さらにはDivision Directorになる者もいる。
|
3. | DOE DOEの研究機関の研究者からの移動が多い。ポストが空くと、(1)DOEのオフィス、(2)DOEの研究機関に紹介、それでも適任者がいない場合に(3)ワシントン近郊への政府研究機関へ照会、最終的には(4)公募の順で適任者を捜す。定年までプログラムオフィサーやDivision Directorとして従事する。 |
4. | DARPA トップクラスの研究者、技術者を任期3〜5年最高6年で採用している。主に産業界、大学、政府研究機関、軍等から採用されており、約140名のうち、約40名は産業界からである。公募による採用も行なっているが、関係者から推薦された者の中から選ぶ場合が多い。任期後は、国防省の他の部署、軍、その他の政府機関、企業(前職の企業に戻ることは禁止)、大学等への転出が一般的である。 |
米国における配分機関の概要
配分機関 |
機関の概要 【2001年資金総額】
|
対象領域 |
課題の規模 と期間 |
プログラムオフィサーの人数 |
NIH 【国立衛生研究所、保健福祉省傘下】 |
米国最大の生命医学研究所。内部に研究部門と外部に研究費を配分する部門を各分野別の研究所に有している。予算の8割強を研究費として外部の機関に配分している。 【予算額: 14907百万ドル、米国の競争的研究資金の50%を占める】 |
生命医学 |
R01プログラム 約20万ドル/年 5年間 |
約1100名 |
NSF 【国立科学財団】 |
科学及び工学領域に幅広く助成を行なう米国の代表的な配分機関。純粋な基礎研究を中心としてプログラムが多い。
【538百万ドル、11%弱】
|
防衛と医学を除く科学・工学等の全分野
|
通常のグラント 約5〜10万ドル/年 3年間 |
約400名 内4割が大学等からの任期付 |
DOE Office Of Science【エネルギー省科学局】 |
物理学を初めとする多くの研究分野の基礎的な研究開発を推進し、成果を新エネルギーへと発展させることを目的とする部局である。DOE傘下にある研究機関(10)の管理も行なっている。 【417百万ドル、3.7%】 |
(1)基礎エネルギー科学 材料、化学、地球科学、コンピューターサイエンス等も含む
(2)生物学・環境科学 保健科学・ゲノム、大気科学等
|
通常のグラント 約20〜200万ドル/年 3年間 |
不明 |
DARPA 【国防省国防先端研究プロジェクト局】
|
最先端の科学技術を軍事に応用する事を目的として設立されたが、現在では、リスクは高いが創造的で画期的な研究に出資する事が最優先の任務とされており、軍事技術の開発にとどまらず、あらゆる分野の基礎的な研究開発に資金を配分している。 【1972百万ドル、約10%】
|
基本的には全分野 電子工学、情報技術、バイオテクノロジーが中心 |
通常のグラント 年15〜40万ドル/年 3〜5年間 |
約140名 |
プログラムディレクターの役割
- 競争的研究資金制度におけるマネジメントシステムの向上
- 各制度内の領域間・分野間・プログラム間等の資金の配分額や配分方式を決定
- 研究費の在り方(個人研究とグループ研究)
- 研究費の額の適正額の判断
- プログラムオフィサー間の調整
- 新規プログラムや新規領域設定を決定
- 採用課題の決定
- プログラムオフィサーの採用や評価
|
|