H13年度採用研究課題名と研究者紹介
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平成13年度 平成14年度 平成15年度
上田 啓次 川端 重忠 鈴木 敏彦 高柳 広 田中 義正 野崎 智義 三田村 俊秀 宮沢 孝幸 牟田 達史 吉田 裕樹
ウィルス潜伏感染機構の解明とその制御法確立の試み
大阪大学大学院医学系研究科 助教授
上田啓次
上田啓次(うえだけいじ)
1978年 大阪大学医学部に入学
 大学生活は何となく過ぎていった感が強く、成績も中の中程度だった。どちらかというと研究志向であったが、積極的なことはなにもせず、今から思うと有り余る時間を無駄にしたと後悔している。この間の一番の出来事はやはり現ボスの山西先生に出会ったことかも知れない。

 大学卒業後は一度臨床経験をすべしと思い、臨床の講座にはいり消化器病を中心とした実地経験を味わい、肝臓の不思議とそこに巣食う肝炎ウイルスの不思議に徐々にのめり込んでいってしまった。従って大学院では当時肝炎ウイルスと肝癌の発生機構を研究していた大阪大学細胞工学センター(現細胞生体工学センター)の松原謙一先生に師事し、釣本敏樹先生(現奈良先端大学)や千坂修先生(現京都大学)の教えを受けた。松原研は当時変革期にありゲノム時代創世記での研究活動を体感した。私はただ横からみていただけだったが、当時の創作に満ちた研究活動は現在の私に大きく影響しているかも知れない。そしてここでさきのお二人の先生方をはじめ現在御活躍中の諸先生方に会ったことが、現在の私の研究に対するスタンスを形作っているかも知れない。(私はウイルスに足をとられたままだったが・・・)

 サンフランシスコ(UCSF Don Ganem教授)で、自由な発想と単なる人間関係で割り切らずに優秀な人材を育てる環境にさらに3年半のめり込んでしまった。この感覚は帰国後なかなかいい仕事環境に恵まれず、いらいらしていた時期、アメリカ的発想人間として少し嫌がられた。

 ウイルス研究はどちらかというと地味で現在のトップジャーナルに次から次へとこの分野の報告が発表されているとは思えない。しかしながらウイルス学や細菌学を基盤として現在の分子生物学、細胞生物学や免疫学が発展してきたと思うと学問を支える学問としてその価値を痛感する。特に日本では感染症は長く軽視されてきた感があるが(個人的な感情ですが)、近年新種のウイルスもどんどん見つかり、生物兵器が取りだたされるにいたって、それを知るひとの存在は重要と考える。

 ウイルスなどの外来侵入者は宿主の細胞レベルから個体レベルへ様々な変化を与えている。こういった現象を一つ一つ正確に記述し、これを制御利用することができれば我々は彼等と共存することが可能となる。ウイルス研究から得られる新事実はまだまだ沢山のこされていると思う。

 そして、手法は今風でも常にウイルス学の原点に立ち帰れるような視点にたち、ウイルスと宿主の関係を深く追求して少しでも社会の役にたてればこれ以上いうことはありません。
 
 
研究所リンク
大阪大学大学院医学系研究科微生物学講座
http://www.med.osaka-u.ac.jp/pub/micro