人間と情報環境の共生インタラクション基盤技術の創出と展開

戦略目標

「ネットワークにつながれた環境全体とのインタラクションの高度化」

研究総括

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間瀬 健二 (名古屋大学 大学院情報学研究科 教授)

概要

 人工知能技術・ビッグデータ解析技術等が発展しIoT技術が社会に浸透するなか、現実社会へのサイバー空間の融合が高度にかつ急速に実現されつつあります。そこで、インタラクションの研究分野をより広く”ネットワークにつながれた環境全体とのインタラクション”として捉えることが重要になってきています。特に情報環境の知能化や人間拡張技術の進展により、環境知能と拡張された人間が共存する新しい共生社会のインタラクション(共生インタラクション)をデザインすることが急務となっています。本研究領域では、人間・機械・情報環境からなる共生社会におけるインタラクションに関する理解を深め、人間同士から環境全体まで多様な形態でのインタラクションを高度に支援する情報基盤技術の創出と展開を目指します。
 具体的には、情報科学技術を中心に認知科学、社会科学、脳科学等の学問分野と連携し、人間理解・社会デザイン・構成論的アプローチの共創をねらい、以下の研究開発に社会の叡智を結集して取り組みます。

 

 1)インタラクションを支援するための、インターフェースや人間能力の拡張に関する技術開発
 2)インタラクションを理解するための、原理や機構の解明とそれに資する情報の収集・分析に関する技術開発
 3)インタラクション技術の活用により、社会構造や人間行動の最適化を促すような環境をデザインする技術開発

 

 これらの研究開発により、急速に進展している人工知能技術等の恩恵を誰もが最大限享受することができ、全体として最適化された共生社会の実現に貢献していきます。
 なお、本研究領域は文部科学省の人工知能/ビッグデータ/IoT/サイバーセキュリティ統合プロジェクト(AIPプロジェクト)の一環として運営します。

 

平成29年度募集・選考・研究領域運営にあたっての研究総括の方針

1.背景と基本的方針
 サイバー空間と現実社会が高度に融合し、環境知能と拡張された人間(拡張人間)が共存する共生社会では、あらゆる情報やモノがネットワークにつながれた環境となります。人的・経済的・社会的資源が全体として効率的に活用され、社会のあり方、人々のライフスタイルや働き方等が大きく転換していくと推測されます。人々が恩恵をうける共生社会の実現のために、社会構造も含めた新しいインタラクションのデザインが重要です。そこで、これまでに取り組まれてきている人間と人間とのインタラクション、人間と機械等とのインタラクションに関する研究開発をさらに発展させ、インタラクションの研究分野をより広く”ネットワークにつながれた環境全体との相互作用”として捉え、「人間と人間」・「人間と機械」・「人間と環境全体」の多様な形態でのインタラクションを高度に支援する基盤技術の創出と実世界への展開を狙いとします。ここで、人間は能力・機能が拡張され、一方で機械や環境がネットワーク化して知能化していくことを予測して、インタラクションをデザインすることが重要です。インタラクションの場における人間・機械・環境の振る舞いを理解し制御することにより、社会構造や人間行動の全体としての最適化を促すシステムデザインを導き、急速に進展している人工知能技術等を活かした高度に最適化された社会実現につながります。

 

2.研究開発の目標
 そこで本研究領域では、人間同士から情報システムを含めた環境全体まで、広い意味でのインタラクションをより高度化する情報科学技術をキーテクノロジーとして研究開発を実施します。環境知能と人間拡張に関する革新的な情報基盤技術と、それらの共生インタラクション技術の研究開発に取り組むことを期待します。たとえば10年、20年後には、膨大な情報から数十、数百のタスクごとの知的エージェントが情報を洗練してわかりやすく提示してくれることが想定されます。それを活用して快適な仕事環境・生活環境をつくるには、大量のエージェントを正しく使いこなすためのインタラクションの設計が必要になります。すべてのエージェントが正しく有用な情報のみを提示してくれるとは限りません。また、自己の能力が千倍に拡張された場合、どのような認知負荷がかかるのでしょうか。その場合のインタラクションはどのように設計すればよいでしょう。人工知能技術を搭載した自動車やホームロボットを安全かつ有効に使いこなすためのインターフェースデザインはどうあるべきでしょう。そのような未来像を描きつつ、研究開発テーマを設定することを期待します。
 本研究領域では、認知科学や社会科学の観点から人間や環境等の振る舞いに関する理解を深め、個々人および集団に適した行動変容を促す環境としての社会構造をデザインすることを念頭におきます。また、多様なインタラクションのデザインにおいて、共通基盤となりうる計算論およびデザイン理論・指針の創出と、研究開発者が広く利用できるプラットフォームの構築などテーマを広くとらえることとします。さらに、インタラクションを理解するためのデータの収集・蓄積も重視しデータ共有基盤の構築を目指します。研究成果が社会に受容され、速やかに実装されるよう、倫理的・法的・社会的問題(ELSI)への配慮についても積極的な提案を期待し、また議論していきます。

 

3.研究課題の例
 以上の背景を踏まえ、本研究領域では、以下のような課題についての研究開発提案を歓迎します。
【人間拡張に関する課題】
 ・ マルチモーダルコミュニケーションの高度な支援
 ・ コミュニケーション知能の拡張のための研究開発
 ・ グループやコミュニティの形成と高度な協働活動の支援
 ・ 行動変容の支援
 ・ 能力・機能の拡張(身障者支援、スポーツ選手、VR)
 ・ 創造性支援インタラクション(デザイン支援、計算創造学、計算デザイン学)
 ・ 感性デザイン(集合知計算学)、興味・嗜好認識
 ・ 知識・知恵・わざの体系化のためのウェアラブル技術とユビキタス情報環境
【環境知能実現に関する課題】
 ・ 知的・対話エージェント、知能ロボットとのマルチモーダルインタラクション
 ・ 知能システム、自動運転車、スマートホームとのインタラクションデザイン
 ・ ネットワーク化されたライフログ環境
 ・ ライフログに基づくインタラクション知能を備えた知的エージェントや知能ロボットの実現
 ・ 環境知能との共創コミュニケーションや共同作業を実現するインタラクション技術
 ・ 絶えず変化する環境やニーズに応じた適切なサービスの構築や提供につながる技術
【インタラクションの基礎理論とモデルデザイン】
 ・ 拡張された人間を含む人間と人間のインタラクションのモデル化
 ・ スマート環境における人間の振る舞いの理解と、環境を含めたシステムのデザイン
 ・ 科学的インタラクション設計を導く計算論的インタラクションデザイン理論
 ・ コーチング理論、コミュニケーション知能のモデル
 ・ ロボット・エージェントとの親密性、感性コミュニケーション
 ・ 感情コントロール支援(メンタルヘルスケア、予防)
【プラットフォームの研究】
 ・ 人々の行動に関するデータや様々な社会的な現象の過程に関するデータの収集・解析および共有化、循環の研究開発

 

 これらのインタラクションが生じる場(ドメイン)としては、教育・医療・介護・流通・ものづくり・インフラ・交通・スポーツ等を想定していますが、これに限定しません。各ドメインでの想定するインタラクションの明確なイメージを提示してください。認知科学、社会科学、脳科学等の学問分野と協働した提案を推奨します。インタラクションの例としては、人間と環境知能、異文化・異言語間のインタラクションや、健常者と障がい者、医師と患者、教師と生徒、コーチと選手、親と子供等、立場や状況の異なる者同士がこれまで困難であったインタラクションを実現することなどが想定されますが、これに限りません。共生社会における新しい共生インタラクションの展望と提案を歓迎します。また、現行の倫理・法律・社会規制(ELSI)の遵守は当然のこと、新しい社会システムのデザインにおいては、ELSIの枠組みを変革することも必要です。共生社会におけるELSIのあるべき姿の提案も期待します。

 

4.想定する研究の進め方
 本研究領域においては、ヒューマン・コンピュータインタラクション、ヒューマン・ロボットインタラクション、マルチモーダルインタラクション、知的ユーザーインターフェース、自律エージェント、VR、AR、MR、ウェアラブルデバイス、人間拡張、環境知能、創造性支援等の研究開発について、センシング→データ解析→デザイン→アクチュエーション(→センシング→…)のループを幾度も回すことにより、基盤技術を確立しながら新しい価値やサービスを具体化するアプローチをとる研究提案を評価します。特に、社会実装を見据える場合には、デザイン思考およびアクチュエーション技術が重要な観点となるものと考えます。また、採択後にワークショップなどを通じて、チーム間の交流の場をつくり、新しいテーマの掘り起こしを促します。

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5.研究期間と研究費
 研究期間は5.5年間(2017年10月から2023年3月末まで)とします。研究期間全体における研究費は3億円を上限とします。

 

6.応募にあたっての留意点
 応募にあたっては、教育・医療・介護・流通・ものづくり・インフラ・交通・スポーツ等のドメインを設定し、そのドメインにおいてどのようなインタラクションが想定され、そのためにどのような技術を研究開発するのかを明確に示した上で、提案書に下記の点を記載してください。
 ・研究期間全体5.5年間で達成する具体的な目標
 ・研究期間前半2.5年間で達成する具体的な目標
 研究推進にあたっては、研究期間5.5年間をとおして、研究チーム間の連携を促進し、共生インタラクションの創出に向けて領域内外におけるコミュニティ作りを推進します。また、前半2.5年間までに達成する明確な中間目標を立てていただきます。それを基に中間評価を行い、必要に応じて研究加速等の支援を行います。なお、研究期間の途中であっても製品化や社会実装が可能な成果があれば、積極的な応用展開を推奨します。
 応募にあたっては、情報科学と認知科学、社会科学、脳科学等の学問分野との協働について積極的に検討してください。社会実装に向けて企業・自治体等との連携体制の構築が望ましいです。研究開始後に、認知科学、社会科学等の研究者が参画している研究チームから共通分野の研究者を集めてタスクフォースを形成し、各チームの課題や成果を共有し横断的な研究を支援する予定です。タスクフォースの成果は、所属チームに還元されるだけでなく当該分野の研究者が参画していない研究チームにも提供し、研究領域全体で共有することを想定しています。
 本研究領域に参画する研究チームに対しロボット等の製品または試作品等の提供について相談いただける企業を募っておりますので、要件を満たす企業のうち審査を通過した案件についてJSTホームページの公募案内に紹介します。適宜参考にしてください(利用条件や知財の取扱などの重要事項については、採択後にJSTと研究機関で締結する委託研究契約との整合をとりつつ、各自で事前に企業と調整してください)。また、研究チームにおける若手研究者の参画を積極的に検討して下さい。若手研究者育成の観点から、大学等の研究者に限らず、企業の研究者や卓越した社会人博士課程の学生が研究チームに参加し、活躍されることを期待しています。インタラクションの高度化のため、デバイス・インターフェースのみの開発に留まらない、深い研究構想と意欲的な姿勢を持った研究者の参加を強く期待しています。
 なお、本研究領域は文部科学省の人工知能/ビッグデータ/IoT/サイバーセキュリティ統合プロジェクト(AIPプロジェクト)を構成する「AIPネットワークラボ」の1研究領域として、理化学研究所革新知能統合研究センターをはじめとした関係研究機関等と連携しつつ研究課題に取り組むなど、AIPプロジェクトの一体的な運営にも貢献していきます。

領域アドバイザー

石黒 浩 大阪大学 大学院基礎工学研究科 教授(栄誉教授)
(株)国際電気通信基礎技術研究所(ATR) 石黒特別研究所 客員所長(ATRフェロー)
江渡 浩一郎 産業技術総合研究所 知能システム研究部門 主任研究員
栗原 聡 電気通信大学 大学院情報理工学研究科 教授
       人工知能先端研究センター センター長
小林 正啓 花水木法律事務所  所長・弁護士
中野 有紀子 成蹊大学 理工学部 教授
前田 英作 東京電機大学 システムデザイン工学部 教授
宮地 充子 大阪大学 大学院工学研究科 教授
北陸先端科学技術大学院大学 先端科学技術研究科 教授
茂木 強 科学技術振興機構 研究開発戦略センター フェロー
森島 繁生 早稲田大学 先進理工学部 教授

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