目的

目的

環境と同程度かそれ以上のやわらかさを持つロボットが環境と相互作用して生み出される運動は,これまでの固いロボットにない柔軟かつ適応的なものである.このようなヒトにも見られる運動スキルは,内部構造である制御系のみで実現されるのではなく,その身体的構造と身体を取り巻く環境を考慮する必要がある.本グループでは,このような身体と環境の相互作用を考慮しなければ生まれない歩行,走行,跳躍などの運動スキルを実現し,そこに宿る知能発現の方法について考察する.

(a) 拮抗駆動を利用した不整地歩行:柔軟な拮抗駆動型空気圧人工筋肉を用いることにより,身体の持つ弾道学的動特性を利用し,適応的な歩行を実現するための枠組みを示す.

(b) ダイナミックな行動の実現:拮抗駆動によりもたらされる駆動系の柔軟性と瞬発力を利用した走行,跳躍などのダイナミックな行動を実現する.

(c) 各移動様式間のスムーズな遷移の実現:歩行と走行など異なる移動様式を統一的に扱う枠組みを提案し,多様な様式を実現可能な運動創発ヒューマノイドの開発を進める.

(d) これらと並行し,共創知能機構グループにおける動作イメージ生成過程と動作の生成ならびに概念化の認知科学的基盤にアプローチする.

上記の実現のためには,空気圧アクチュエータをはじめとする人工筋肉とその周辺機器を配したロボットの設計,試作,作動,再設計のサイクルを繰り返すための多くの機構部品,電子部品,動作ステージなどの備品,行動計測装置などを必要とする.

成果として,適応性,走破性が高く,柔軟で危険がなく,歩行,走行,跳躍などさまざまな行動を生み出すことのできる運動創発ヒューマノイドが開発される.開発過程のロボットは他のグループへのプラットフォームを提供する.また,やわらかいヒューマノイドでなければなしえない運動知能について,運動生理学の知見からのモデル検証や他のグループとの密な討論により,その構成的理解を深める.開発過程におけるロボットは,毎年開催されるロボカップのヒューマノイドリーグにおけるデモ実験で公開し,内外の研究者への認知を高め,フィードバックを得る予定である.