歩行創発に対する股関節外旋の寄与に関する仮説の提案と実験的検証

歩行創発に対する股関節外旋の寄与に関する仮説の提案と実験的検証

乳児の二足歩行の発達について,股関節の外旋が歩行創発に重要な役割を果たしているという仮説を立てた(図1,図2にその概略を示す).

図1 股関節の外旋が歩行の創発に寄与する様子

図2 外旋がどのように前進行動を生み出すかの説明

そして,その仮説を理論的,実験的な側面から検証した.ロボットが準静的に歩行している場合について,幾何学的モデルに基づいて得られた外旋角と前進量の関係を図3に,そのグラフを図4に示す. 図5には,この理論値と,脚長約70cmの実ロボットによる実験値の比較を示す.グラフから両者がよく一致していることが見て取れる.その結果については [上田2007]に公表されている. また,実際の13か月の乳児の大きさと同等の赤ちゃんロボットPneuborn 13(図 6)を開発し,同様な実験を行ってモデルの有効性を検証した [石井2009][hosoda2010]

図3 前進量の定量的評価

図4 外旋角と前進量の解析的関係

図5 前進量の理論値と実験値の比較

図6 筋骨格赤ちゃんロボット Pneuborn 13

実際の赤ちゃんの観察を通して,股関節の外旋(足首の外向き角)と踏み出し量に一定の関係があるという仮説がどの程度確からしいかを確認する観察実験を行った. 被験者は10カ月から13カ月の乳児4名(男性2名,女性2名)で,下半身に足首2×2,ひざ1×2,腰3の計9つのマーカーを取り付け,10台のカメラによるモーションキャプチャを行った(図7). 歩行を始める前から,歩行開始後2週間程度まで,毎週1時間のデータを収集した.全体的には足首の外向き角度と進行速度の間には相関が観測されたが,横断的に優位なデータについては現在検討中である.

図7 乳児につけたモーションキャプチャ用マーカーの位置(9点)