成果

成果

発達科学,および認知神経科学の知見に構成的にアプローチした本プロジェクトの研究成果を示す.

図1は,本プロジェクトで開発した各種プラットフォームが,2歳児までの運動発達プロセスのどの機能を実装したかを示した.図2は,本プロジェクトで実施 した認知研究を,対象としたヒトの認知機能と関与する脳内基盤に対応させて示した.本来,発達原理にアプローチするには,発達過程の時系列に沿って構成す ることが望まれる.しかし、ヒトの認知発達のあらゆる側面をひとつの機構で構成することは,現在の資源では非常に困難である.限られた資源の下では,発達 過程を効率よく構築して,根底にできる発達原理を探り,示していくことが有効である.このために本プロジェクトでは,認知発達過程の中の重要な身体運動機 能,認知機能を対象として,研究を並行して進めてきた.さらに,各機能間での関連により発達ステージが構成されることから,各研究間での関連づけを進めて きた.後者の作業については特に,今後の研究課題としても取り上げた.


図1 運動発達プロセスと各種プラットフォームの関係


図2 プロジェクト成果と脳内基盤の対応 ( )内は実施した各研究グループを表す:
身体=身体的共創知能グループ;対人=対人的共創知能グループ;社会=社会的共創知能グループ;機構=共創知能機構グループ


以上の成果は,従来の科学技術規範に閉じていては,決して得られなかった物である.本プロジェクトでは,実際のロボットやコンピュータシミュレーション環境,さらには,神経科学の知見などを参考にした計算的発達モデルの構築を通じて,ミクロからマクロへの橋渡しだけではなく,そこからあらたに生まれる人間理解を目指している.まとめると,

  1. 胎児・新生児シミュレーションによる筋骨格・神経系発達シミュレーションは,これまで誰もアプローチしてこなかった初期神経発達のミステリーに構成的アプローチする手法の有効性を示しており,新しいサイエンスの道筋を示している.
  2. CB2をはじめとして,人工筋骨格赤ちゃんロボットPneu-bornシリーズ,運動機能重視のNeony,対人機能重視のKindy,コミュニケーション実験用のSynchy,そして全身感覚運動学習用認知発達ヒューマノイドのNobyなどの一連の認知発達研究用プラットフォームは,新しいサイエンスの発展を支える基盤であり,専門家ばかりでなく,認知科学者や心理学者にも利用可能な形態として販売もしており,これらの研究者との連携を強く促すことで,パラダイムシフトを起こす起爆剤になると期待される.
  3. このような構成的アプローチとの融合により,新たな認知神経科学的発達モデルが構築され,プラットフォームを使った検証実験が期待される.