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「独創的シーズ展開事業 独創モデル化」
平成19年度採択課題 事後評価報告書

平成21年1月
独立行政法人科学技術振興機構

6.評価対象課題の個別評価

環境低負荷と高収益を実現する水稲栽培用多目的農作業車の試作

企業名 有光工業株式会社
研究者(研究機関名) 西浦 芳史(大阪府立大学大学院 生命環境科学研究科 准教授)

1)独創モデル化の概要及び成果

 現在の米作りは移植栽培(田植え)が中心であり、耕起、代かきの為のトラクターや作業機、苗作りの為の設備、移植の為の田植機等多様な機械と大きなエネルギーすなわち化石燃料を必要とし、炭酸ガス排出やコスト高の問題を抱えている。
 本方式は、低炭素社会や省エネが叫ばれる中で高品質な米作りを省力的かつ環境親和的に行うため、乾田不耕起直播栽培、具体的には土壌に手を加えず前作の稲の切株直下に種籾を播く方法を提案するものであり、移植栽培の収量を可能とするものである。
 モデル化では、この直播栽培を体系化する機械として多目的農作業車とそれに搭載可能な作業機(直播機、除草機、防除機)の試作を行った。その結果、多目的農作業車は環境に配慮した充電式の電動とし、現在の栽培体系で使用される機械の1/3の動力で動くことを確認した。また、田植えまでの作業時間も1/3まで短縮することを目標とした低コスト化に目処を付け、付属搭載作業機とともに更なる改良を重ねている。

2)事後評価

(ア)モデル化目標の達成度
目標が高過ぎたり、多岐に亘って分散されたため平均達成度は60%前後であった。
目標の設定があまり明確でないため、実質達成度は高いかも知れない。

(イ)知的財産権等の発生
出願はされていないが、農薬の静電散布等、数件の出願が期待できる。

(ウ)企業化開発の可能性
一部企業化に向けたデータや装置の改良は得られているが、開発途上と考えられ、機能を限定すれば今後の企業化に期待ができる。

(エ)新産業及び新事業創出の期待度
農作業手順の優位性(米作り)を検証して、分野(静電散布、直播法)を絞り開発を進めれば新産業として期待できる。

3)評価のまとめ

 技術開発が少し欲張り過ぎて、発散気味である。現状との差別化を検証し、機能を限定(静電散布、直播法等)して実用化の優先順位を明確にし、地道に開発を進めれば、結果が出るまでには時間がかかるが実用化の道は開けると考えられる。今回の達成度は低かったが、実用化を期待したい。


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