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分科会グループF:テーマ【連携(地域・企業)・ネットワーク構築】

座長 : 伊達 紫(宮崎大学教授)

参加機関

宮崎大学、広島大学、京都府立大学、お茶の水女子大学、秋田大学、武庫川女子大学、群馬大学、金沢大学、室蘭工業大学、神戸大学、静岡大学、山梨大学、熊本大学、長崎大学、東京医科大学、高知大学、山形大学、岩手大学、弘前大学、東京女子医科大学、信州大学、宇宙航空研究開発機構

シンポジウム分科会発表
  • 既に多くのところがネットワーク形成に取り組んでいる。特に印象に残ったのは、次世代育成とか育児などにフォーカスした連携は、地域を巻き込む、あるいは企業との連携においてやりやすいかもしれないということ。コンソーシアムの設立ということも多くのところで見られ、それをもとに交流会、協議会等が開催されている。
  • 大学から企業に対する連携についてはハードルのようなものがあるが、その突破口の一つとして、大学の同窓会組織を活用して企業とつながることを模索している機関があった。効果として、交流が促進される、自機関で実施している制度をいろいろと波及できるといったことが得られたようだ。また、行政との連携では、地域内でのネットワークが構築される、保育サービスが充実した、表彰などを通じて連携機関所属の女性研究者を表に出すという機会が増えた、インターシップに取り組めないかという協議が進んだといった展開が見られたようだ。
  • 企業との連携体制構築は時間がかかるようだ。同じ県内といえども物理的にも離れているというケースがあり、また、研究内容によってはクローズな部分も多い。人材バンクにしてもオープンにしているところはなかなか少ないということもあるので、共同研究の推進やネットワークの構築は意外に難しい。
  • こうした取り組みを、女性の上位職登用へつなげていくこともとても難しい。研究職に対する研究のメンターはもちろんのこと、理事や副学長にマネジメントのメンターとしても機能してもらうという取り組みを行う大学もある。リーダーを養成するということでは一つの策かと思う。
  • 意識改革・環境整備に加え、(女性の労働力率における)M字カーブの要因を除くような支援を常々行いながら、女性採用数を増やすことで、5年後、10年後には確実に上位職につける女性研究者が育成されているような状況を目指しつつ、ネットワークの構築を行う。
発表資料
機関発表
宮崎大学:
  • 文科省などによる外部資金獲得有無を問わず、九州・沖縄で女性研究者支援に絡めて何か取り組めないかと考えたことをきっかけに、平成21年9月には宮崎大学において第1回九州・沖縄アイランド女性研究者支援シンポジウムを開催した。以降、平成26年まで佐賀大学、長崎大学、大分大学、九州大学、熊本大学と、1年に1回をめどに持ち回りで開催するということが定着した。既に平成27年度は鹿児島大学、平成28年度は琉球大学での開催予定にて九州を一巡し、さらに平成29年度には福岡女子大学主催で開催するというところまで決定している。
  • シンポジウムの開催に当たっては、主管校に全部丸投げということではなく、主管校がテーマあげ、どういう形でどういうパネルディスカッションにしたいか、どうすればおもしろいかというようなことを説明し、参加する機関で協議しながら内容を固めていく。
  • このシンポジウム開催を契機に、平成22年に、九州・沖縄アイランド女性研究者支援ネットワーク(Q-wea)というネットワークがスタートした。現在11機関が参加しているが、どうやったらネットワークに参加できるだろうとか、どうやったらオブザーバーで参加できるのだろうということを受け付ける窓口として、平成26年10月に宮崎大学に事務局を設置した。
  • Q-weaでは、これまでにも、関係者から「多様性について議論したい」とか「次世代についてもっと知りたい」というようなアイデアや希望が出てくると、そのアイデアを持った人が中心になって日時や場所などをコーディネートし、学習会といったかたちで具体化するようなことを行ってきた。この事務局の設置を通じて、これまで以上にシステマティックな連携に取り組んで行きたい。
秋田大学:
  • 大学間連携の取り組みは、「休みたいけれど、代わりの教員がいないので、なかなか育児休業等を取得できない。では、休んだときに代わりの教員をどうやって見つけるか」という、問題意識から大学間で連携して代替要員を探し出す仕組みの構築、というところから始まった。昨年度は新たに拠点型の事業実施機関に選定され、「架橋型ソーシャル・キャピタルの形成による女性研究者支援」というテーマを設定し、公設試験研究機関などへ連携を広めた。
  • 連携の課題としては、秋田県内の企業が少なく、女性研究者を抱える企業となるとさらに少ないということが挙げられる。実際に、ようやく1社が連携連絡会議に参画したところである。
静岡大学:
  • 連携の基盤づくりのため、定期的に担当者が一緒に顔を合わせてお互いを知り、理解を深める場として「定例交流会」を開催し、静岡大学が実施している取組を紹介して、連携の機関にも利用していただき、制度等を導入いただくよう働きかけている。
  • 好評な「研究支援員制度」を他機関に普及させるため、主に大学関係(県立大学や私立大学)に実際に制度を利用していただけるよう、取組を進めている。
  • 大学内でメンターの方たちの技能を上げていただく研修を行っているが、外部委託による研修会は、企業も内容に関心があるため、積極的に参加される。連携を深めるため、意見交換を行いながら、連携先が関心を寄せる取組を取り入れていくとよい。
  • 企業と大学では、情報公開に関する考え方や対応方針が全く異なるため、機関や研究者のデータベースを作るなどの取組では大きな課題を感じている。
岩手大学:
  • 普及先機関との連携として、3つの柱で研究力向上と、環境整備、意識改革を行っている。研究力向上の場合には、1つ大きな柱として、共同研究を行っている。
  • 研究力向上ということでセミナー、女性研究者ネットワーク構築も行っている。
  • 意識改革は、どちらかと言うと管理職とか、意思決定の方々への意識改革をメインにしており、今年の秋に行ったシンポジウムでは、連携機関である県立大学の学長と医大の副学長にパネリストになっていただき、本学の副学長がコーディネーターとなって、3大学のトップで女性研究者支援について話をしてもらう取り組みを行った。
広島大学:
  • 連携機関との共同研究を推進し、女性研究者の研究活動の展開拡大を図りたいと考えている。そのために、既刊の「広島大学 研究成果集」の中から女性研究者のデータを抜粋した「広島大学 女性研究者 研究シーズ集 2014」を作成し、産学官連絡会で企業等に配布するなどして、本学女性研究者のシーズの広報を行うことで、共同研究の実施・更なる展開を図ることとしている。
金沢大学:
  • 北陸地域の女性研究者・技術者同士のネットワークでもあり、女性研究者・技術者支援側のネットワークでもあるHWRN(Hokuriku Women Researchers’ Network)を構築し、取組みの企画・調整・運営にあたる専任のプロジェクト・オフィサーを1名採用した。
  • HWRN連携機関の人事部門担当者や役員で構成される「HWRN普及促進会議」を設置し、年1回の席上会議の他、メール等で情報を発信・共有し、意見交換を行いながら事業を進めている。
  • 女性研究者の研究力向上のために共同研究スタートアップ支援を行っている。これは、本学の女性研究者とHWRN連携機関の女性研究者・技術者との共同研究を支援するものである。
  • 金沢大学第10代学長の寄付により中村賞(金沢大学女性研究者賞)を創設した。
  • その他、女性研究者写真展、女子学生用インターンシップ、ワークショップやシンポジウムの開催を行っている。
熊本大学:
  • 県内の全高等教育機関のネットワーク組織である大学コンソーシアム熊本(コンソ)と連携し、女性研究者支援ネットワーク基盤の構築のため、コンソ内に女性研究者支援ワーキンググループ(11大学代表17名のメンバー)を設置し、女性研究者支援の取組の普及を行っている。
  • コンソ内への普及事業として、コンソ内大学長参加のシンポジウム開催、コンソ対象のニーズ調査、県内女性研究者44名掲載のロールモデル誌の作成・配布とWebサイトでの公開、Webサイトでの活躍する県内女性研究者の研究紹介、女性研究者交流会、女性研究者間共同研究や病児病後児保育の支援、介護なんでも相談等の実施、並びに、ジェンダー科目の公開と女性研究者の研究環境整備に関する提言を準備中。学内では研究補助者雇用事業に加え、新たにライフイベントからの復帰支援(学会旅費や論文校閲料の援助)を開始。
弘前大学:
  • 本学の周辺地域には理系学部を持つ大学は少なく、理系関連の研究所を持つ企業がほとんど存在しない。連携型への申請も検討したが、連携できる相手を見つけるのがかなり厳しい。おそらく、これは地方大学共通の悩みではないかと思う。