事業の目的

 我が国における女性研究者の割合は、これまでの女性研究者支援に係る取組等の結果、増加する傾向にありますが、欧米の先進諸国と比べると未だ低く、また、女性研究者の上位職への登用もなかなか進まない状況にあります。男女共同参画の観点はもとより、多様な視点や発想を取り入れ、研究活動を活性化し、組織としての創造力を発揮する上でも、女性研究者数の増加に引き続き取り組むとともに、女性研究者の研究力向上を図ることは極めて重要です。
 本事業では、女性研究者がその能力を最大限発揮できるよう、研究と出産・育児・介護等(以下「ライフイベント」という。)との両立や女性研究者の研究力向上を通じたリーダーの育成を一体的に推進するなど、研究環境のダイバーシティ実現に関する目標・計画を掲げ、優れた取組を体系的・組織的に実施する大学や独立行政法人等を選定し、その取組を重点的に支援するものです。

事業の概要

 文部科学省が平成18年度から平成26年度まで実施した女性研究者を支援、養成する「女性研究者研究活動支援事業」により、女性研究者を取り巻く研究環境整備、意識改革、次世代育成が推進され、女性研究者の離職の抑制、女性研究者割合の増加が加速されてきました。平成27年度からは、新たに「ダイバーシティ研究環境実現イニシアティブ」を開始し、研究環境のダイバーシティを高め、優れた研究成果の創出につなげるため、女性研究者のライフイベント及びワーク・ライフ・バランスに配慮した研究環境の整備や女性研究者の研究力向上のための取組、女性研究者の積極採用や研究中断、あるいは離職した女性研究者の復帰・復職支援及び女性研究者の上位職への積極登用に向けた取組等を支援します。

支援内容

【ダイバーシティ研究環境実現イニシアティブ】

特色型

 研究者のライフイベント及びワーク・ライフ・バランスに配慮した研究環境の改善やそれに向けた機関内の意識改革、女性研究者の裾野の拡大、女性研究者の研究力の向上及び女性研究者の積極採用や上位職への積極登用に有効な部局横断的な取組を支援

  • 女性研究者が研究活動を継続するに当たって生じる諸課題(ワーク・ライフ・バランス、ライフイベントとの両立、研究を中断することによる不公平な処遇など)を解決するに当たって、マネージャー、コーディネーター及びカウンセラーの配置や相談室の整備など、女性研究者に対する支援体制及び相談体制の確立
  • 男女問わず研究者が研究とライフイベントを両立できるようライフイベントの期間中の研究活動を支援する者(研究活動を支援する場合であっても、保育を行う者は対象とはなりません)の配置
  • 夜間保育、休日保育、病児・病後児保育、学童保育の利用に対する支援制度の構築(例:所属の研究者が表記の保育サービスを利用する際の支援)
  • ライフイベントによる研究中断(離職した女性研究者を含む。)からの復帰・復職支援の仕組の構築(例:スタートアップ研究費の支援、学会参加の支援、論文投稿の支援、柔軟な勤務制度(短時間勤務等)の構築)
  • ライフイベントを考慮した業績評価・人事評価システムの構築
  • 指導的地位(大学においては准教授以上)に占める女性研究者の割合向上に向けた取組に対する支援(例:機関に属する特に優秀な女性研究者への顕彰や研究費の支援)
連携型・牽引型

 代表機関と共同実施機関(両機関を合わせて、以下「連携機関」という。)が連携して、研究者のライフイベント及びワーク・ライフ・バランスに配慮した研究環境の改善やそれに向けた連携機関内の意識改革、女性研究者の裾野拡大、女性研究者の研究力向上、女性研究者の積極採用、研究中断あるいは離職した女性研究者の復帰・復職支援、女性研究者の上位職への積極登用に有効な連携機関における部局横断的な取組を支援

  • 連携機関で、ワーク・ライフ・バランスに配慮しつつ、共同研究やクロスアポイントメント制度等を通じた女性研究者の研究力向上、女性リーダーの育成を図るための取組、及び、そのためのマネージャー等の配置
  • 連携機関において行う共同研究等の推進に向けた勉強会等の開催や、当該取組の結果として、連携機関において特に有用と認められた、女性研究者を研究代表者とする共同研究の推進
  • 連連携機関の研究者への支援を通じた好事例の展開(例:機関内保育所や、カウンセラーを配置した相談室などの共同利用)
先端型

 大学や研究機関における単一の機関内での部局横断的な取組である従前の「特色型」での取組は自主的に行われていることを前提として更に高い目標を掲げるとともに、女性研究者の海外派遣等を通じた上位職登用の一層の推進や、女性研究者の活躍促進を踏まえたより広いダイバーシティ研究環境の形成を図る先端的な取組を支援

  • 女性研究者の海外派遣や帰国後の活躍促進を通じた、女性研究者の研究力の向上並びに上位職登用の促進を図る取組の実施
  • 機関におけるより広いダイバーシティ研究環境の実現に向けた意識改革(男性・女性ともに対象としたもの)等の取組
特性対応型

 分野や機関の研究特性や課題等について分析し、その分析結果を踏まえた目標を掲げ、研究効率の向上を図りつつ、女性研究者の活躍を促進する取組を支援

  • ライフイベントを迎えた女性研究者が効果的・効率的に研究を行うための、実験ノートの電子化、AI・IoT の活用等による研究室のスマートラボラトリ化等に係る取組
  • 当該機関において女性研究者割合や博士課程(後期)への女子の進学割合が低く、底上げが必要な分野における、裾野拡大のための学生・保護者・教員等向けの啓発活動、博士課程(後期)の女子学生を対象とした学内フェローシップ制度等の構築を通じた支援等の取組
  • 男女問わず研究者が研究とライフイベントを両立できるようライフイベント期間中の研究活動を支援する者(研究活動を支援する場合であっても、保育を行う者は対象とはなりません。)の配置
全国ネットワーク中核機関(群)

 全国で女性研究者を取り巻く研究環境整備や研究力向上に取組む機関をつなぎ、将来的に自立して活動を行う全国ネットワークの構築を目指し、国内外の取組動向の調査やその経験、知見の全国的な普及・展開等の支援を図る中核機関(群)を支援

  • 本事業の採択機関や、全国で女性研究者を取り巻く研究環境整備や研究力向上に取組む機関とをつなぐ全国的ネットワークの構築
  • 研究者のライフイベント及びワーク・ライフ・バランスに配慮した研究環境の改善やそれに向けた機関内の意識改革、女性研究者の裾野拡大、女性研究者の研究力向上、女性研究者の積極採用、研究中断あるいは離職した女性研究者の復帰・復職支援、上位職への積極登用に有効な取組に係る知見の整理
調査分析

 代表機関と共同実施機関における女性研究者の活躍促進に係る取組の調査・分析を行い、その分析結果を踏まえ、我が国の女性研究者の活躍促進のための方策の検討に資する海外の取組事例の調査・分析を行う取組を支援

補助事業期間

 事業計画は6年間(うち、原則として3年間について補助金を交付)
 ※調査分析は2年間

【女性研究者研究活動支援事業】

一般型

 研究者のライフイベント及びワーク・ライフ・バランスに配慮した研究環境の改善やそれに向けた機関内の意識改革、女性研究者の裾野の拡大に有効な取組を支援

拠点型・連携型

 代表機関と共同実施機関が、企業等他機関とも連携し、女性研究者の研究力向上のための取組や、女性研究者を上位職へ積極的に登用するための取組を支援

補助事業期間

 原則として3年間

【女性研究者支援モデル育成】

目的

 女性研究者がその能力を最大限発揮できるようにするため、大学や公的研究機関を対象として、研究環境の整備や意識改革など、女性研究者が研究と出産・育児等の両立や、その能力を十分に発揮しつつ研究活動を行える仕組み等を構築するモデルとなる優れた取組を支援する。

補助事業期間

 原則として3年間

【女性研究者養成システム改革加速】

目的

 多様な人材の養成・確保及び男女共同参画の推進の観点から、特に女性研究者の採用割合等が低い分野である、理学系・工学系・農学系の研究を行う優れた女性研究者の養成を加速する。本プログラムを実施し、機関におけるシステム改革に効果的な分野・規模で当該女性研究者の採用を行うことにより、人材の多様化、研究の活性化及び男女共同参画意識の醸成、さらには、機関として本来取り組まなければならない柔軟な組織編成や環境整備等を同時に促進し、総合的なシステム改革の構築を目指す。

補助事業期間

 原則として5年間(3年目に中間評価)

文部科学省 科学技術振興機構