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資料4

開発課題名「汎用・普及型超解像顕微鏡の開発」

最先端研究基盤領域 先端機器開発タイプ

開発実施期間 平成27年12月〜平成30年3月

チームリーダー :  池滝 慶記【オリンパス株式会社 イノベーション推進室 技術戦略部 主任研究員】
サブリーダー :  熊谷 寛【北里大学 医療衛生学部 教授】
中核機関 :  オリンパス株式会社
参画機関 :  北里大学、NTTアドバンステクノロジ株式会社、筑波大学
T.開発の概要
 近年、超解像顕微鏡法はライフサイエンス分野における基盤計測技術として注目されているが、その装置は複雑かつ高精度の光学システムを必要とし、保守管理が難しく、普及性に乏しい高価格商品となっていた。そこで本課題では、超解像顕微鏡法の普及を目指し、既存のレーザー顕微鏡に装着するだけで超解像を実現できる位相板の開発を中心に、多くのユーザーが簡便に利用でき、なおかつ、ニーズに合致した汎用・普及型の超解像顕微鏡を開発する。
U.開発項目
(1)蛍光色素分子の分光特性評価
 蛍光タンパクを含む21種類の蛍光色素分子に対し蛍光抑制反応速度を測定し、データベース化した。さらに、効率的に蛍光抑制効果を誘導し、かつ背景蛍光が発生しないイレース光の最適波長を過渡吸収分光により解明し、最終目標を達成した。
(2)ハイブリッド型位相板の開発
 スパイラル位相板と輪帯位相板の特性を併せ持つハイブリッド位相板を開発した。中心強度が完全にゼロとなる3次元中空ビーム(スーパーダークホール)生成に世界に先駆けて成功した。
(3)倒立型超解像顕微鏡装置の開発
 倒立型超解像顕微鏡装置を開発し、蛍光スケールならびに蛍光染色した微小管を用いて微細構造を空間分解できることを確認した。スパイラル位相板を用い、横分解能50 nmを達成した。また、輪帯位相板を用い、80 nmの縦分解能が確認でき、最終目標を達成した。特に、高密度で発光する複雑な空間構造体でも高い2点分解能で超解像顕微鏡観察ができることを示し、3次元超解像顕微鏡としての実用性も確認した。しかし、ハイブリッド位相板については、製造技術に目途は立ったものの、目標空間分解能を達成するまでには至らなかった。
(4)生物試料による超解像顕微鏡観察
 開発した超解像顕微鏡装置を用い、生物試料の観察を行った。リポソームの脂質膜、抗体染色したHeLa細胞、蛍光タンパク単量体DsRedを発現した神経細胞のミトコンドリア、抗体染色したラットPtk2細胞微小管の超解像顕微鏡観察ができ、最終目標を達成した。
V.評 価
 本課題は、市販のレーザー走査型顕微鏡に独自開発した超解像位相板を導入することで簡便に超解像顕微鏡観察を可能にするものである。
 開発は順調に進捗し、スパイラル型位相板、輪帯型位相板については、目標の空間分解能を達成した。また、両方の特長を持ったハイブリッド型位相板は、スーパーダークホールの生成に世界に先駆けて成功しており、さらなる改良により目標の空間分解能を達成できれば、競争力のある製品となることが期待できる。
 今後は、応用研究として生物学的にインパクトのある観察結果を鋭意取得し、実用化を早めることを期待する。
 本開発は、当初の開発目標を達成し、本事業の趣旨に相応しい成果が得られたと評価する。[A]