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資料4

開発課題名「深紫外プラズモニック・ナノ分析顕微鏡の開発」

最先端研究基盤領域 機器開発タイプ

開発実施期間 平成25年10月〜平成30年3月

チームリーダー :  河田 聡【大阪大学 名誉教授、有限会社セレンディップ研究所 主任研究員】
サブリーダー :  小林 実【ナノフォトン株式会社 取締役】
中核機関 :  有限会社セレンディップ研究所
参画機関 :  ナノフォトン株式会社、大阪大学
T.開発の概要
 光の回折限界を超えた高い分解能でナノ構造を観察する近接場顕微鏡を深紫外域に展開し、細胞内生体有機分子の分布、最先端半導体デバイス、ナノ材料の新しい観察分析評価装置としての役割を目指す。アルミニウムを用いたナノプローブを設計・製造開発し、従来、可視域でしか実現されていなかった表面プラズモンポラリトンを紫外域に励起する。10 nm 以下の空間分解能、1分子レベルの検出感度、99 %以上のイメージング再現性を目標とする。
U.開発項目
(1)金属プローブ
 プローブを繰り返し作製し、グラフェンを試料に用いて増強度を評価した。全てのプローブにおいて増強度10,000倍以上が再現され、高い歩留まりで作製に成功した。アルミニウムプローブおよびインジウムプローブで作製に成功しており、各々のプローブの先端径10 nm以下の目標を達成した。
(2)深紫外顕微鏡対物レンズ、並びに深紫外ラマン散乱顕微鏡
 結像性能に優れたNA0.9の反射対物レンズを独自に設計および製作に成功した。軽量、小型で、製造コストの低減を達成した。開発レンズについて国内およびPCT特許出願している。なお、波長帯域は目標をはるかに超えて200-2000 nmを達成した。 顕微鏡については、分光性能について評価を行い、波数分解能1.7 cm-1以下を確認し、スペクトル範囲は3000 cm-1を超える広帯域測定の実現を確認した。
(3)ソフトウェア
 機器操作・制御系について、開発途中の不具合を検証・修正し100 %の動作を確認。データ解析ツールについては、ピークフィッティング機能、特異値を分解する機能、バックグラウンドを正確に補正する機能を持つ。
(4)プロトタイプ機
 作製したプロトタイプ機は、基本性能である測定再現性99 %以上、増強度10,000倍以上、空間分解能10 nm以下をそれぞれ検証し、目標を達成した。機器の外装もレーザーとAFM部を含めて700(W)×600(D)×450(H) mm3 、本体重量は80 kgであり、目標より大幅な軽量化を達成しており、テーブルトップ装置として使用可能なものとなった。
V.評 価
 本装置は、深紫外領域でのプラズモン共鳴を利用することで従来のラマン散乱顕微鏡よりも高い空間分解能と検出感度を実現するもので、チームリーダーらが世界に先駆けて開発したものである。
 独自に設計、製作した対物レンズやラマン散乱を増強する金属プローブの開発など、全ての目標を達成している。その結果、グラフェンや生体分子の長時間イメージングに成功するなど、これまで信号が弱く観察が難しかった試料で観察できたことは高く評価できる。また、成果の一部は既に事業化も進めるなど、本装置も数年以内には製品化が期待できる。
 今後、半導体や特殊光学材料等へ用途拡大すると思われるが、生物試料等への応用についての展開も大いに期待したい。
 本開発は当初の開発目標を達成し、それを上回る特筆すべき成果が得られたと評価する。[S]