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資料4

開発課題名「PM2.5中酸性度(pH)と化学イオン成分濃度の自動連続測定技術の開発」

環境問題解決領域 要素技術タイプ

開発実施期間 平成26年12月〜平成30年3月

チームリーダー :  田中 茂【慶應義塾大学 名誉教授】
サブリーダー :  木地 伸雄【株式会社インターアクション 代表取締役副社長】
中核機関 :  慶應義塾大学
参画機関 :  株式会社インターアクション
T.開発の概要
 PM2.5の生成プロセスと挙動を把握し、その低減対策を進めるには、主要成分である化学イオン成分濃度の測定が必要不可欠であり、さらに人体への健康影響を知るには、PM2.5の酸性度(pH)を測定することも重要な課題である。本課題では、酸化チタンを塗布した平行板型拡散スクラバー(ガス捕集)とミストチェンバー(粒子捕集)などを組合せることで、PM2.5の酸性度(pH)と化学イオン成分濃度を自動連続測定できる技術を開発する。
U.開発項目
(1)微量化学イオン成分・微量PM2.5中酸性度測定の最適化検討
 平行板型拡散スクラバーで大気汚染ガス・強酸性ガスを95 %以上捕集、PM2.5粒子を95 %以上透過、ミストチェンバーでPM2.5粒子をほぼ100 %捕集した。また、化学イオン成分の検出限界はサブppbオーダーであることを明らかにしたほか、耐久性・再現性にも特に問題はなく、最終目標を達成した。
(2)自動連続測定システムの開発
 ミストチェンバー、拡散スクラバー、イオンクロマトグラフ、エアポンプ、送液ポンプなどの機器をシーケンサーで作動制御するシステムを開発した。PM2.5中の酸性度および化学イオン成分濃度を1時間毎に自動で連続測定することを実現し、最終目標を達成した。
(3)自動連続測定装置の性能評価
 開発した自動連続装置を用い、2016年1月〜2018年3月の間、1時間毎1週間のPM2.5中の酸性度及び化学イオン成分濃度の測定を16回実施した。その結果、本測定装置の性能と再現性は確立できたと判断され、最終目標を達成した。
V.評 価
 本課題は、大気中に浮遊する微小粒子状物質PM2.5の生成機構および生体への影響を解明するために必須の高精度な自動連続分析システムを開発するものである。
 空気中のガスと粒子を95%以上の高効率で分別捕集する技術を開発し、PM2.5の酸性度および化学イオン成分の濃度の高精度定量を短時間で分析可能とする自動連続測定システムを開発した。また、そのシステムにより横浜市および北京市でPM2.5の測定を通じて、再現性の良い実証データを取得し、学術上有用な知見を得たことは評価できる。
 今後は、ユーザーのニーズに対応した低価格化、小型化を検討するとともに、中国などでさらなるデータを蓄積して有用性を実証し、新たな用途への展開も図ることを期待する。
 本開発は、当初の目標を達成し、本事業の趣旨に相応しい成果が得られたと評価する。[A]