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資料4

開発課題名「高速1ショット観測を実現するフォトカソード電子源の開発」

最先端研究基盤領域 要素技術タイプ

開発実施期間 平成26年12月〜平成30年3月

チームリーダー :  西谷 智博【名古屋大学 シンクロトロン光研究センター 特任准教授】
サブリーダー :  北村 真一【日本電子株式会社 開発・基盤技術センター 副センター長】
中核機関 :  名古屋大学
参画機関 :  日本電子株式会社、東京理科大学、青山学院大学
T.開発の概要
 1ミリ秒以下のシングルショットを用いた電子顕微鏡画像の撮影が可能で、電子線の平行性、可干渉性が既存の熱電界放出型電子銃と同等以上の性能を持つ半導体フォトカソード電子銃を開発する。本開発により、電子顕微鏡の時間分解能の飛躍的向上やクライオ電子顕微鏡法のスループットと分解能向上、水溶液中、気体雰囲気チャンバー中の分子の高時間分解能動態観察などへの波及が見込まれ、電子顕微鏡法に革新をもたらすことが期待できる。
U.開発項目
(1)半導体フォトカソードの開発
 AlGaAs超格子半導体、InGaN半導体、GaN半導体を開発し、いずれも2 μAの電子ビーム電流を達成した。また、いずれも目標の24時間を大きく上回る耐久性能を示し、特にGaN、InGaN半導体では、超高真空下では300時間以上劣化しないフォトカソードを開発した。
(2)パルス電子ビームの生成
 パルス電子ビームの基本性能は、繰り返し周波数10 kHzまでのパルス駆動、パルス幅100 ns〜200 μs、パルス当たり電荷量32 nCを達成し、最終目標を大きく上回った。
(3)コンパクト半導体フォトカソード電子銃の開発
 加速電圧50kV、引出電流値5 μA、100 kHzまで調整可能なパルス駆動、熱電子源と同等以上の可干渉性を達成するコンパクト半導体フォトカソード電子銃を開発し、最終目標を上回った。
V.評 価
 本課題は、生体を損傷することなくシングルショットで動態観察を可能にする半導体フォトカソード素子およびコンパクト半導体フォトカソード電子銃の開発である。
 当初目標とした技術水準を大幅に超え、AlGaAs超格子半導体、InGaN半導体、GaN半導体とユーザーニーズに応じた幅広い半導体フォトカソードのラインナップを開発した。また、半導体フォトカソードの利点を最大限生かしたコンパクト半導体フォトカソード電子銃を開発し、それを電子顕微鏡に搭載してシングルショット観察にも成功した。さらに、事業化を展開する大学発ベンチャーを設立し、当初想定した電子顕微鏡分野にとどまらず新材料開発分野への応用など多様な応用展開を実現しようとしていることは、高く評価できる。
 本開発は、当初の開発目標を達成し、それを上回る特筆すべき成果が得られたと評価する。[S]