資料4

開発課題名「食品放射能検査システムの実用化開発」

放射線計測領域 実用化タイプ 中期開発型

開発実施期間 平成24年5月〜平成26年3月

チームリーダー :  山田 宏治【富士電機(株) 産業インフラ事業本部 計測制御システム事業部 放射線システム部 部長】
サブリーダー :  矢島 千秋【(独)放射線医学総合研究所 福島復興支援本部 環境動態・影響プロジェクト 主任研究員】
中核機関 :  富士電機(株)
参画機関 :  (独)放射線医学総合研究所、京都大学
T.開発の概要
 一般食品中に含まれる放射性セシウム濃度を非破壊で(梱包状態のまま)、高スループットでスクリーニングできるシステムを開発する。一般食品以外の飲料水、牛乳などについては、既存のゲルマニウム半導体検出器を用いたガンマ線スペクトロメトリーに変わるスクリーニング技術の性能検証を行なう。一般食品の開発目標は、測定下限値25 Bq/kg 以下、スクリーニングレベル(50 Bq/kg )で基準値100 Bq/kg 未満の判定精度を99.9 %とできるものとする。処理能力としては、米30 kg袋の場合250袋/時間、一般食品の場合100箱/時間を目標とする。本装置の実用化により、福島県などでの米全量・全袋測定に利用が想定される他、肉、野菜、魚などの検査システムとしても活用されることが期待される。
U.開発項目
(1)食品放射能測定技術の確立
 MCNP(モンテカルロコード)による効率シミュレーション計算を実施、その効率データを用いた補正計測値により、検出性能として、30 kg 入り米袋にて測定下限25 Bq/kg をバックグラウンド0.1 μSv/h にて10.3 sec (300 袋/時間)で測定可能となった。モニタ実用化完了し、平成24年9月より福島県内に製品を納入し、運用開始した。
 製品化した装置については、幅3300 o × 奥行1030 o ×高さ 1507 o、重量約2300 kg となった。検出器についても数種類のガンマ線検出器を比較検討し感度・コスト等、最適な検出器を設定した。
(2)一般食品(魚類・飲料水・牛乳・乳製品)への応用
 一般食品について、上部検出器の高さを可変構造とし、被測定物になるべく検出器を近づけることにより、バックグラウンド線量0.1 μSv/h 以下で、測定下限25 Bq/kg にて約15 sec (200箱/時)で測定可能となった。
 魚類対応として、本体装置を水洗い可能なように防水構造(本体、ベルトコンベア共)として試作を実施した。飲料水等への対応として検出方法の検討を実施し、従来の放射線使用施設に使用されている排水中放射能濃度を測定する排水モニタの技術を応用することとした。 検出限界としては、飲料水10 Bq/kg、乳製品50 Bq/kgを十分満足するが、スクリーニングレベルを2.5 Bq/kg とするには課題が明確となった。
(3)フィールド検証
 製品化後、福島県内に平成24年9月より納入し運用開始した。果実を含め、一般食品対応機については、実証試験を実施し、継続して運用されている。魚類対応機についても実証試験を実施した。
V.評 価
 既存のGe半導体検出を用いる一般食品中に含まれる放射性セシウムの濃度測定装置に代わる、短時間でかつ非破壊で測定可能とするNaI(Tl)シンチレーション検出器を用いたスクリーニング装置、食品放射能検査装置を開発した。特に、玄米専用の食品放射能検査装置は,短期間の開発で実用化され、平成24年秋より製品の販売が行われ、福島県内各所で活用された。本装置の活用により、玄米中の放射性セシウム濃度の信頼性ある評価は、品質検査における信頼性および被災地の風評被害の払拭につながるものである。玄米以外の食品(魚類・果実)のスクリーニングについては、標準体積線源を用いて課題を検証しているが、放射能の不均質分布の評価等さらなる検討や対外発表・特許出願を含めて、次の製品化が期待される。本開発は当初の開発目標を短期間で達成し、広く普及させ、特筆すべき成果が得られたと評価する[S]。