チームリーダー : |
伊藤 康博【日本バイリーン(株) 技術本部第二技術部 部長】 |
サブリーダー : |
保高 徹生【(独)産業技術総合研究所 地圏資源環境研究部門 研究員】 |
中核機関 : |
日本バイリーン(株) |
参画機関 : |
(独)産業技術総合研究所,福島県農業総合センター
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- T.開発の概要
- 環境水中の放射性セシウムは主に溶存態と懸濁物質付着態で存在している。本課題では、溶存態の放射性セシウムとの親和性が高いプルシアンブルー(PB)を用いた不織布カートリッジ、および縣濁粒子(SS)を補足する不織布カートリッジの開発を行い、既存技術では前処理に多くの時間を要している(6時間〜5日)水中の存在形態別の放射性セシウム濃度の計測に関し、短時間化(20〜60分)を図る。
- U.開発項目
- (1)PB不織布カートリッジによる溶存態放射性セシウム回収システムの開発
- Cs回収率97 % 以上を達成し、前処理時間については、濃縮量20 L〜100 Lに対し8分〜40分を達成した。ゲルマニウム半導体検出器による測定時間は定量下限0.01 Bq/Lの場合では4000 秒〜9000 秒 、定量下限0.001 Bq/Lでは20,000 秒〜60,000 秒 という結果となり目標通りである。PB不織布のpH耐性については、pH 5-10 の範囲で97 % 以上であることを確認した。
また、回収システムとしては、11 kg で持ち運びが容易な形状のシステムを作成することができた。
- (2)SS捕捉不織布カートリッジによる懸濁態放射性セシウム回収システムの開発
- SS 1μm以上については98 %以上回収することができた。前処理時間については、濃縮量20 L〜100 Lに対し8 分〜40 分 を達成した。ゲルマニウム半導体検出器による測定時間は定量下限0.01 Bq/Lの場合では4000 秒〜9000 秒 、定量下限0.001 Bq/Lでは20,000 秒〜60,000 秒という結果となり目標通りである。
- (3)フィールド検証
- 千葉大学、福島大学、国立環境研究所等と共同研究契約を締結し、各種環境水のモニタリングにおける適用可能性について検討し、廃棄物浸出水、森林からの流出水等、各地で用途別の実証試験を行った。
- V.評 価
- 環境水中の放射性セシウムの溶存態と懸濁物質付着態を現場で分離回収できる2種類の小型のカートリッジを開発するとともに、これらのカートリッジを組み込んだ携帯型回収装置を開発した。フィールド調査も十分されており、カートリッジの量産化、回収装置の製品化も検討・実施され、有効活用が期待される。今後、吸着された放射性セシウムの放射能測定システムへの展開に対してさらなる検討、たとえば吸着の不均質性による検出効率の影響やNaIシンチレーション測定器適用の評価がなされることにより、定量性の向上と活用の拡大が期待される。本装置を使用した福島現場での実証試験でその有効性が示され、汚染状況の把握や除染の効果確認がされていることは特筆すべき成果である。本開発は当初の開発目標を達成し、本事業の趣旨に相応しい成果が得られたと評価する[A]。
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