資料4

開発課題名「生物学的線量計測用の分裂中期細胞自動検出装置の開発」

放射線計測領域 革新技術タイプ 機器開発型

開発実施期間 平成24年10月〜平成26年3月

チームリーダー :  古川 章【(独)放射線医学総合研究所 緊急被ばく医療研究センター 被ばく線量評価研究プログラム 主任研究員】
サブリーダー :  竹島 哲【三谷商事(株) 情報システム事業部 ビジュアルシステム部】
中核機関 :  (独)放射線医学総合研究所
参画機関 :  三谷商事(株)
T.開発の概要
 放射線被ばくにより、リンパ球の染色体には二動原体型異常と呼ばれる形状異常が生じ、細胞分裂の中期の状態にある細胞を観察することにより、この異常を検出することができる。既存技術では細胞分裂の状態にある細胞を目視により見つけ出し、形状異常の有無を確認していますが、この方法では多くの労力と時間を要している。本開発では、顕微鏡の自動化技術と画像認識技術を用いることにより、二動原体型異常の検出に要する作業の簡便化、時間の短縮化(1スライドグラス20 min 程度)を図る。
U.開発項目
(1)画像処理アルゴリズム開発
 カラーフィルタリング機能という、従来なかったアルゴリズムを搭載し、高精度解析を実現することで従来の輝度情報だけでなく、RGBの色情報をもとに分裂中期細胞を見つけることが可能となり、さらに、XYZステージの移動と撮影の処理と、画像処理を分離してそれぞれ並列で行うことにより、高速化の大きなアシストを行うことに成功した。
(2)検査標本用オートフォーカス機能作成
 速度は1視野約3 sec(200 μmスキャン時)(目標1視野約5 sec)と向上した。また検体観察前に9点で焦点を合わせ、検体観察時にはそれを補間して焦点が合う位置を求めるという方法を採用し、検体観察時には0.2 sec以下で焦点が合い、精度もほぼ100 % となった。
(3)検出性能と検出速度の向上
 通常使用されるものと同様な実試料(スライドグラスにヒトリンパ球を培養後塗布しギムザ染色を施したもの)で検証を行い、スライドグラス1枚に対し1333視野撮影時、13 min 15 sec、すなわち1視野0.6 sec での取得に成功した結果、目標20 min に対し、5 min 以上の短縮に成功した。精度もカラー画像フィルタリング機能追加により検出性能である誤検出率を5 % 以下とした。
V.評 価
 生物学的線量を自動的に高効率で検出するため、国内の高性能な光学顕微鏡を主体的に活用し、目的とする分裂中期細胞を効率よく検出できるハードシステムと一体となったソフトウェアを構築した装置を開発した。従来の検査時間の短縮や誤検出の向上を目指し、従来の製品に比べてコンパクトで安価なシステムを構築できた。また、オートフォーカス機能、カラー画像フィルタリング機能および並列画像処理機能を組み入れ、数多くの被験者の検査を短時間で行うという可能性が示されたことは特筆に値する。今後のステップとして実用化を目指した方策や指針を明らかにして、本装置の性能の詳細な評価および実試料への展開を行うとともに論文発表・特許出願することを期待する。さらに、放射線被爆の疑いがある被験者における検証により、本装置が有効に活用できることを実証することが期待される。本開発は当初の開発目標を達成し、本事業の趣旨に相応しい成果が得られたと評価する[A]。