資料4

開発課題名「高感度かつ携帯可能な革新的ガンマ線可視化装置の開発」

放射線計測領域 革新技術タイプ 機器開発型

開発実施期間 平成24年10月〜平成26年3月

チームリーダー :  大須賀 慎二【浜松ホトニクス(株) 中央研究所第1 研究室 室長代理】
サブリーダー :  片岡 淳【早稲田大学 理工学術院 総合研究所 教授】
中核機関 :  浜松ホトニクス(株)
参画機関 :  早稲田大学
T.開発の概要
 本課題では、小型軽量で携帯可能でありながら、既存技術より極めて高感度なコンプトンカメラ方式のガンマ線可視化装置を開発する。具体的には、高性能光センサー(MPPC)により微細構造を有するシンチレータを読み出す独自開発の方式を採用し、検出器中でのガンマ線の散乱・吸収位置を三次元的に高精度で計測する。これにより、実用的な解像度を維持しつつ飛躍的な高感度化が達成でき、3 m 離れた位置から5 μSv/hの空間線量率を与える線源を10 sec 程度で可視化することが可能となる。
U.開発項目
(1)二次元構造コンプトンカメラ開発/評価
 ガンマ線検出器性能としてエネルギー分解能は662 keVガンマ線に対して、9 %(FWHM)を達成できた。計測感度として実験室環境において、カメラ位置で毎時5 μSvの線量率を与えるセシウム137点線源を10〜20 secの積算時間で識別可能となり、30 secの積算時間では十分に識別可能であることを確認した。
 カメラ本体の重量は1.9 kgであり、ノートPCと合わせても十分携行可能となった。
(2)三次元構造コンプトンカメラ開発/評価
 ガンマ線検出器性能としてエネルギー分解能は662 keVガンマ線に対して、9 %(FWHM)を達成できた。検出位置精度として吸収体ガンマ線検出器は、2 mm × 2 mm × 2 mmのシンチレータ結晶の三次元アレイを使用し、ガンマ線を明瞭に識別できた。計測感度として実験室環境において、カメラ位置で毎時5 μSv の空間線量率を与える線源(セシウム137)を10 sec程度で可視化可能であることを確認した。
 カメラ本体の重量は2.5 kgであり、ノートPCと合わせても十分携行可能となった。
(3)フィールド検証
 開発チームとしては、先ず平成25年2月に福島県において1度目の現地試験を実施し、課題対策を施し、平成25年5月に2度目の現地試験を福島県の居住制限区域内で行った。そこで得られた結果から、試作した二次元構造コンプトンカメラは、現場への持ち運び・設置が容易であり、放射性物質の集積の程度に依るとしても、居住制限区域内の環境で数分から数10分でホットスポットの分布を提示可能であり、除染現場での実用に供し得ると判断した。
 福島大学による試用では、大熊町内の毎時1〜2μSvの線量率環境にある住宅地で10分程度の測定により、放射性物質の分布画像を提示することができ、除染現場における本カメラの有効性が示され、早稲田大学による森林内での試用では、樹木の根元等の平面的な集積だけでなく、高さ方向を含めた放射性物質の動態調査に、開発したコンプトンカメラを適用する可能性が示された。
V.評 価
 環境放射能分布を測定するため、コンプトンカメラの基本である散乱体および吸収体の材質をGAGGシンチレータで構成し、浜松ホトニクス製のMPPCアレイを用いることにより、エネルギー分解能に優れ、高感度で超軽量な携帯型のガンマ線可視化装置を開発した。二次元構造コンプトンカメラは製品化され、三次元構造コンプトンカメラについても開発目標を達成している。次ステップとして、角度分解能をあげた三次元構造コンプトンカメラの製品化に向けて、実利用環境課題を解決することを期待する。プロトタイプ機を利用して、福島県内各所で行政機関や研究機間と協同で試験が実施され、汚染状況の把握に効果を上げていることは特筆すべき成果である。本開発は当初の開発目標を達成し、本事業の趣旨に相応しい成果が得られたと評価する[A]。