資料4

開発課題名「Li二次電池ミクロ界面のイオン拡散時間応答の可視化技術の開発」

グリーンイノベーション領域 要素技術タイプ

開発実施期間 平成24年10月〜平成26年3月

チームリーダー :  竹田 精治【大阪大学 産業科学研究所 教授】
サブリーダー :  小粥 啓子【(株)アプコ 代表取締役副社長】
中核機関 :  大阪大学
参画機関 :  (株)アプコ、摂南大学、自然科学研究機構分子科学研究所
T.開発の概要
 電池内部の異相界面におけるパワーフロー現象を解明するために、電池の充放電過程の各段階において、外部交流電圧と電子ビームを同期させることで電池表面および内部の動的な電位分布の変化を2次元可視化する。本技術の開発により、新しい電気化学分野である「理論・電位モデルの構築から解析・評価による実証」が拓かれ、サイエンスによって、電池劣化の解明、寿命予測が可能となり、グリーンイノベーションに貢献することが期待される。
U.評価項目
(1)表面電位分布変化の動的観察(二次元マップ)
 ベースマシンの走査型電子顕微鏡に改造を施し、電子ビーム走査系のデジタル化を行い、ラインストロボ観察のための要素技術はほぼ完成した。また試料に交流バイアスを印加しながらの二次電子エネルギー分布計測が可能となった。これを用いて全固体Li二次電池断面の一次元電位分布を観測できるようになった。
(2)実環境下での内部電位分布変化の動的観察(二次元マップ)
 全固体電池の内部電位の動的空間分布の計測について計画した要素技術は全て開発できた。すなわち、電池測定用の試料ホルダーを開発して、試料のCV測定のみならず、交流インピーダンスの測定も可能とした。さらに、印可する交流電圧が特定の位相であるときの試料のTEM像および電子線ホログラフィーを得ることもできた(位相ロック観察法)。電子線ホログラフィー法によって全固体電池の内部電位分布の動的変化を計測できる原理の検証に成功した。さらに、位相ロックした電子エネルギー損失分光(EELS)測定が可能であることを新たに示した。物質中における最大10 kHzの周期的現象に関して、ほぼ原子スケールの分解能で原子構造と荷電状態を解析できる新しい技術が開発した。
V.評 価
 電子顕微鏡で観察された固体リチウム電池のミクロ部位の電位を測定しようという技術的に非常に難しい高度なテーマに挑戦し、要素項目毎の当初目標はほぼクリアされ、開発チームの十分な努力が認められる。しかし、測定可能になった電位をどのように定義するか、電気化学的に定義された電位とどのように関連するのか、といった検討が十分になされておらず、また達成した目標の電位計測精度も電気化学的に議論するには2桁以上精度を向上する必要があり、未解決の問題が残されている。本開発は、当初の開発目標を達成したが、本事業の趣旨に相応しい成果は得られなかったと評価する[B]。