資料4

開発課題名「LIMAS 装置の活用・普及促進」

最先端研究基盤領域(旧一般領域) 開発成果の活用・普及促進

開発実施期間 平成23年11月〜平成26年3月

チームリーダー :  圦本 尚義【北海道大学 大学院理学研究院 教授】
中核機関 :  北海道大学
参画機関 : 
T.課題の概要
【装置】
 本プログラム「プロトタイプ実証・実用化タイプ」において開発した「レーザーイオン化質量分析ナノスコープ(LIMAS) 装置」を広くユーザーに開放(共同利用)する。この装置は、探査衛星が持ち帰った惑星上の物質や宇宙塵などに代表される、その量が極めて限られた貴重なサンプルを分析するために、ポストイオン化や高速の質量分析として新しい手法を導入し、より高感度化を狙ったものである。
【内容】
 本装置をユーザーに開放(共用)することにより、はやぶさ採取試料を含む宇宙試料の全元素分析や年代測定が可能となり、世界の宇宙科学の最先端分析を先導することが期待される。
U.評価項目
(1)共用装置の活用状況
 共用稼働日数は2.5年間で累計310日であり、 最終目標(合計300日)を上回った。内訳は、内部利用:累計160日、11件、外部利用:累計150日、9件であった。
(2)成果発表
 チームの成果発表は、学会発表31件、論文発表4件であり、最終目標(合計20件)を上回った。そのうち、共用先との成果発表は学会発表8件で、最終目標(合計10件)をやや下回った。
(3)その他の成果
 「はやぶさ」が地球に持ち帰った小惑星「イトカワ」の微細粒子を本装置で分析し、太陽風ヘリウムの粒子表面からの深さ方向分析結果が得られた。太陽風による宇宙風化、小惑星の表層進化等の解析について今後のさらなる進展の端緒をもたらした。
V.評 価
 本課題は、プロトタイプ実証・実用化タイプで開発したレーザーイオン化質量分析ナノスコープ装置を共用に供するもので、固体中の微量不活性ガスの同位体分析が可能な世界唯一の装置を宇宙科学分野に活用することをはじめ、産業界にも広く利用を促し、本装置の普及促進を図るものである。
 本装置を用いた共用の目標は概ね達成されており、当初の計画に掲げた小惑星「イトカワ」の微細粒子の太陽風深さ方向分析などを実施し、地球惑星科学分野への応用の端緒を開いたことは評価できる。また、産業界からのリチウムイオン電池、あるいは半導体微細構造の分析にも応えられるようになりつつあり、今後も先端材料分野、環境分野等の分析にも広く活用することが期待できる。本課題は、当初の開発目標を達成し、本事業の趣旨に相応しい成果が得られたと評価する[A]。