資料4

開発課題名「超高感度簡易迅速感染症診断システムの開発」

最先端研究基盤領域(旧一般領域) 機器開発タイプ

開発実施期間 平成23年10月〜平成26年3月

チームリーダー :  伊藤 悦朗【徳島文理大学 香川薬学部 教授】
サブリーダー :  阪井 八郎【(株)テクノアソシエ 開発部設計・モデルポートグループ グループ長 】
中核機関 :  徳島文理大学
参画機関 :  (株)テクノアソシエ、(株)ビーエル、静岡県工業技術研究所
T.開発の概要
 ここ数年、入院患者やリハビリ患者の院内感染が問題となっている。院内感染を防ぐには院内に細菌やウィルスを持ち込ませないことが重要だが、そのためには患者を含む来院者の感染の有無を短時間で判別することが必要となる。しかし、そのような判別手段は今のところ存在しない。そこで、本プログラム「要素技術タイプ」で得られた成果をもとに、現在数時間以上も要している診断を10分以内で行える超高感度簡易測定システムを開発し、感染症の拡大防止を目指す。さらに臨床評価も行い、医療現場などでの実用化も検討する。
U.開発項目
(1)チオNADサイクリング系の確立
 サイクリング系の酵素3α-HSD試料中のALPコンタミを大幅に減少させ、また、基質を改変し、酵素反応回転数を456回転/分まで向上させた。結果、酵素ALPに対して基質検出感度の目標である10-20 moles/testを達成した。test=100 μL。
(2)超高感度EIA法の確立
 抗体結合担体としてマイクロ磁性ビーズを活用し、抗原抗体反応時間を15分とした。モデルタンパク質であるインスリンの検出感度は実検体でも10-19 moles/testを達成した。
(3)専用測定器の試作とシステム評価
 マイクロ流路、マイクロビーズで構成され、超音波攪拌が可能な使い捨てカートリッジを使用する専用測定器を試作した。
 モデルタンパク質(インスリン)によるCVは、目標である5 %以内を達成した。測定レンジは、10-15〜10-19 moles/testを達成した。測定時間は約10分で目標を達成した。インフルエンザウイルスの検出感度は、1x103 TCID50/testの目標を達成した。TCID50とは、細胞を感染させる時、50%の細胞感染させるウィルスの量を指す。
V.評 価
 要素技術タイプで開発されたタンパク質の超高感度定量法を活用し、高感度かつ迅速で簡便なインフルエンザ等の早期診断システムを開発する課題である。開発は順調に進捗し、ほぼ目標は達成している。磁気ビーズ法と超音波撹拌法の適用でELISA反応速度を上げ、インフルエンザウイルスを10分程度で1x103 TCID50/testの感度で検出できるようになり、既存法を凌駕することに成功した。産学連携がうまく働いた例となった。
 今後は、外部医療機関の評価によるフィードバックを受け、現場ニーズに沿った、最先端技術の応用も視野に入れた開発を着実に推進すべきである[A]。