資料4

開発課題名「次世代質量イメージングのためのUVマイクロチップレーザーを用いた計測システムの開発」

最先端研究基盤領域(旧一般領域) 機器開発タイプ

開発実施期間 平成22年10月〜平成26年3月

チームリーダー :  平等 拓範【自然科学研究機構 分子科学研究所 准教授】
サブリーダー :  古川 保典【(株)オキサイド】
中核機関 :  自然科学研究機構
参画機関 :  (株)オキサイド、東京工業大学
T.開発の概要
 実用的高性能紫外(UV)レーザーを、高輝度マイクロチップレーザーと高機能非線形波長変換といった最先端のレーザー技術「マイクロ固体フォトニクス」で実現し、高感度かつ非破壊的光イオン化による質量分析のためのUVマイクロチップレーザーを開発する。本開発により、ボロンなど従来微小領域からの検出が困難であった元素や環境負荷分子の質量マッピングが可能となり、先端鉄鋼材料や有機薄膜太陽電池などの粒界偏析まで分析可能な次世代質量イメージング装置の実現が可能となる。
U.開発項目
(1)実証用レーザー の開発
 SHGレーザーについて、レーザー波長532 nm,繰り返し周波数1 kHz,パルスエネルギー460 μJ,パルス幅375 ps,尖頭出力1.23 MWを達成し、FHGレーザーについても波長266 nm,繰り返し周波数1 kHz,パルスエネルギー163 μJ,パルス幅264 ps,尖頭出力0.62 MWを達成している。実証用レーザーについては、波長266 nm,繰り返し周波数1 kHz,パルスエネルギー163 μJ,パルス幅264 ps,尖頭出力0.62 MWを達成した。
(2)実証用レーザー の安定化
 実証用レーザーを用いて、目標の10℃を大幅に上回る20℃以上の温度許容幅を確認し、さらに許容幅20℃、無調整での安定動作確認に関して、目標の5分より速い4分以内の安定化を確認している。
(3)質量イメージングの準備
 既存のレーザーイオン化質量分析装置では高繰り返しの質量スペクトル測定を行うとデータの取りこぼしが発生するため質量分析装置を改良し、実際に質量分析装置に展開し一部評価を行った。さらに、質量分析装置等の真空装置のレーザー導入窓付きフランジにレーザーヘッドを直接マウントするためのフランジを設計することで、質量イメージングの準備を終了している。
V.評 価
 チームリーダーはマイクロチップレーザーの研究開発実績を有しており、質量イメージングのための小型レーザー開発は予想通り順調に進んだ。既に実証・実用化タイプのプロジェクトに進んでおり、その有用性は明らかである。測定対象として想定される微粒子等は無機、有機成分、さらには状態分析や深さ方向の分析(非破壊性が求められる)など多岐にわたる。そのため、将来の応用展開には今回のレーザー特性、特にパルス幅、出力(特に分析対象への熱的影響を考えると、この2要素は重要)等について更なる検討を期待する。
 本プロジェクトを総括した場合、種々の計測分析装置に付属品として組み込める小型高性能レーザーを開発したものであり高い評価に値する。今後多くの分野にインパクトを与えると期待され、イノベーション創出に貢献し得る成果である。本開発は当初の開発目標を達成し、それを上回る特筆すべき成果が得られたと評価する[S]。