資料4

開発課題名「内視鏡のための単眼三次元異種情報計測システムの開発」

最先端研究基盤領域(旧一般領域) 要素技術タイプ

開発実施期間 平成22年10月〜平成26年3月

チームリーダー :  下山 勲【東京大学 大学院情報理工学研究科 教授】
中核機関 :  東京大学
参画機関 : 
T.開発の概要
 本課題では、従来の内視鏡用の撮像系で不可能であった、病巣の可視光画像、蛍光画像および距離情報を同時に計測し、病巣の三次元形状および内視鏡との位置・姿勢関係を三次元画像として提示する単眼三次元異種情報計測システムを開発する。この計測システムは、各画像・情報を1つの光軸上で同時に計測することで、3種類の画像の対応が明確となり、位置ズレなく、画像が統合可能になるという特徴を持つ。
U.開発項目
(1)可変焦点液体レンズの開発
 直径3 mmの液体レンズを速度5 Hzで駆動する目標を達成した。また、凹レンズを組み合わせた複合レンズ構造を採用して焦点距離4 mmから84 mmの21倍の変化を実現し、目標を上回った。
(2)MEMS三次元スキャナを用いた距離計測
 距離計測精度は、豚肝臓片試料までの距離を誤差3%以内で計測することができた。また、可変焦点レンズと二軸ミラーを組み合わせたMEMS三次元スキャナにより 画角内の8X8点を10 Hzの速度での計測を実現し、最終目標を達成した。
(3)異種情報画像の重畳
 撮影画像内計測点での輝度情報と距離との関係を求めるアルゴリズムを作成し適用した結果、平面分解能を10倍以上に向上させ、距離精度6%を実現し目標を上回った。また、色・蛍光・距離情報を10 fpsで切り替えつつ提示することを実現した。
V.評 価
 独自開発の焦点距離制御可能な液体レンズを新規な単眼立体視内視鏡へ応用することを目指す課題である。モデル物体の立体イメージングに対する最終目標は全て達成し、単眼立体視の技術は評価できるレベルに達した。しかし内視鏡として想定すべき生体表面の立体視イメージング検討が不十分であり、医療用内視鏡の要素技術として実用性の判断までには至らなかった。また、協力企業の内部事情により、本技術を用いたMEMS内視鏡実用化へのステップアップを断念せざるを得なくなったことは残念である。
今後は、非侵襲に血圧や血糖を計測するPhoto acoustic Spectroscopy (PAS)への本技術の転用等を図り、情報計測システムとしての確立を目指し、効率的・効果的に開発を推進すべきである[A]。