問題解決型サービス科学研究開発プログラム 【国立研究開発法人科学技術振興機構 社会技術研究開発センター】

平成29年3月で本プログラムは終了いたしました。

トピックス

<7>サイトビジット #3 2012.03.30

S3FIREだより<2>、<4>では、JST社会技術研究開発センター(RISTEX)の研究マネジメントの特徴である現地訪問(サイトビジット)について紹介しました。今回は、3月に行われた3つのプロジェクトのサイトビジットのご紹介です。


1つ目は、音声つぶやきによる医療・介護サービス空間のコミュニケーション革新内平プロジェクトです。
今回は金沢にある北陸先端大(JAIST)に集まり、半日議論をしました。(筆者は、東京での午前の会議終了後、小松に向かい途中から会議に参加しました。)


まず、東芝からつぶやき時空間コミュニケーションシステム、清水建設からサービス可視化・評価システムの開発状況および実フィールドでの試行状況の説明があり、両システムの連携に関する課題を議論しました。


その後、試行実験・サービス評価 グループ杉原リーダー(JAIST)から、つぶやき技術の受容性および生産性向上の評価方法について説明がありました。
介護士の仕事中のストレスの主な原因と思われる役割の不明確さ、ストレスの軽減と提供サービスの質の向上の関係など、幅広い議論がありました。また、熟練介護職員の業務の組み立て方に関して、紹介がありました。


次に、つぶやきプロジェクトでの検証方法の検討について紹介がありました。
本プロジェクトでは、フィールド実験だけではなく、学生等を対象にして仮説検証(仮想フィールド実験)を行っています。学生が介護業務を、つぶやき型デバイス、PHS、何も使わない状態で行った実験報告がありました。学生の実験では、つぶやき型デバイスの評価はPHSと同等以上ということでした。アンケート調査では、PHSと異なりつぶやき型デバイスでは、簡単にメッセージが残せたり、メッセージを受け取る人の負担が少ないというコメントがありました。さらに、インカム型(一斉送信)と比較し、つぶやき型の局所配信・見直し機能の優位性について検討しました。


最後に、内平プロジェクトリーダーからH24年度の研究開発計画、メンバー全員からサービス科学に対する研究の位置づけと熱い思いが語られました。
19時まで議論が切れ目なく行われ、現状の研究開発の情報と今後の方向性が共有されました。


次の日には、実際にフィールド調査を行っている介護施設を訪問しました。


2つめは、顧客経験と設計生産活動の解明による顧客参加型のサービス構成支援法~観光サービスにおけるツアー設計プロセスの高度化を例として~原プロジェクトです。
東京大学、首都大学東京、JTB等の共同研究者間で研究開発全体、各研究グループの状況共有と今後の研究開発の方向性について議論が行われました。


既に「S3FIRE(スフィア)だより<4>」で、原プロジェクトの紹介をしていますが、今回の主なトピックは、首都大学東京 矢部氏による旅行者の行動分析の概要報告です。
2つの宿泊地を拠点とする外国人旅行者の行動を、GPSロガーとアンケート調査によって分析しました。宿泊地によって、国の割合、旅行者のプロファイル、旅行パターンに違いが見られました。さらに、アンケート調査による旅行者の期待形成プロセスの類型化の紹介がありました。


次に、商品開発グループのリーダー東京大学の青山チームから、観光旅行商品のモデル化について説明(旅行の構成要素の部品化、表現方法、関係や制約のモデル化、階層化等)がありました。今後は、これらの分析結果を活用し、サービス提供者のためのサービス設計手法として統合していきます。


JTBの方からは、社内の多くの方々にこれらの成果を紹介し価値向上のための議論をしていきたいと、プロジェクトに対する期待が寄せられました。


そして最後は、H23年採択のサービス指向集合知に基づく多言語コミュニケーション環境の実現石田プロジェクトです。
京都大学石田・松原研究室にメンバーが集まり研究状況を共有しました。


まず、石田プロジェクトリーダーから、9.11の衝撃から文化のコンフリクトの低減を目的とし、研究テーマとしてIntercultural Collaborationを立ち上げた背景、言語グリッドでのプラットフォーム開発から多言語の統合協業モデル構築・検証プロジェクトの経緯について説明がありました。


次に、多言語協業の現場であるNPO法人パンゲアのベトナム農業支援のデータ分析結果の紹介がありました。日本の農業の専門家とベトナムの農業従事者とのコミュニケーションを実現するため、当初構想したモデルから4段階の変更を経て現在のモデルになったこと、各遷移を引き起こした要因分析の紹介がありました。現在のモデルでは、ブリッジャーと呼ばれる人による翻訳作業の負荷が高いことが、問題の一つとしてあげられています。今後は、それらを軽減するための言語機能の特定、協業モデルの最適化と検証を行っていきます。また、NPO運営者の報酬分配に対する意識調査の説明と結果の概要説明がありました。


最後に、先ほど紹介があったNPO法人パンゲアを訪問し、設立者の森氏、高崎氏から現在の活動に至るまでのお話を伺いました。識字率の低いベトナムの農業従事者とのコミュニケーションに、子供を活用するアイデア、子供と農業の専門家との情報共有のためのレシピカードの導入、それらによって子供や家族の協業向上の効果など、コミュニケーションプロセス全体の改善や設計が行われていました。石田プロジェクトとの協業によって、さらにスケールアップしていくことが期待されています。


今後もサイトビジットについてお伝えしていきます。お楽しみに!