ソーシャル・イノベーション
営利と非営利を超えて
服部篤子・武藤清・渋澤健/編
日本経済評論社 2010年
経済活動の担い手は有限の命が宿った人であるので、利潤最大化だけを目標とするモデルの現実性には限界がある、という発想や、今回の世界金融危機への反省などに基づいて、新しい経済社会のガバナンスのあり方を多面的に検討した論文集である。都心養蜂や水の浄化などの具体的事例も盛り込まれているが、全体としては現代資本主義を革新する必要性を強く意識した本になっている。日本に関しては、「市民社会の王道の素質」がある一方で、宗教的な倫理が弱いこと、人材の流動性が低いことが指摘されており、グローバライゼーションの中での日本経済のあり方を考える上でも刺激に富んだ本である。
(大守隆:東京都市大学環境情報学部 教授)