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  3. 親密圏内事案への警察の介入過程の見える化による多機関連携の推進
写真:田村 正博

田村 正博京都産業大学
社会安全・警察学研究所 所長

児童虐待事案に対して警察が
刑事的介入する判断基準を見える化

児童虐待への対応において、警察の捜査は重要です。しかし警察が動く判断基準がわからないなどの理由から、児童相談所との連携に不具合が生じがちです。そこで、警察が刑事事件としての介入を行う条件をわかりやすく示しました。

概要

児童虐待の解決には、警察を含む多機関の連携が必要な場合があります。一方、警察が刑事事件として犯罪捜査をする判断基準やプロセスがわからないなどの理由から、児童相談所は警察への情報提供をためらいがちです。「協力したが期待と違っていた」と不信感を抱くこともあり、円滑な連携が困難な状況があります。
プロジェクトでは、警察がどのような場合に、どのような要素を考慮して刑事事件としての介入を行うのかを解明し、児童相談所側の疑問を踏まえ、警察が介入することに関して児童相談所向けの資料を作りました。あわせて、規範的な検討も行い、関係機関が共通に認識できる、市民が幅広く論議するための素材も提供しました。

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研究開発の成果

警察の犯罪捜査について、特徴と、判断の枠組み、判断要素を明らかにしました。一般行政と異なる高度な立証が求められるのが捜査の大きな特徴で、判断の枠組みとしては、被害者の意思、証拠の状況と事件捜査価値判断の三つの面が存在しています。解明した内容に加えて、児童相談所の警察に対する疑問等を集め、Q&Aや用語解説などを内容とする、『児童福祉に携わるひとのための「警察が分かる」ハンドブック』を作りました。
規範的な研究を行い、多機関連携における考え方を整理し、検察の訴追裁量権を背景にした加害者への働きかけの留意点を示しました。DV事案について警察と民間支援組織の聴き方の違いを明らかにするための仮想事例調査と感性工学に基づく分析も行いました。

研究開発のアピールポイント

犯罪捜査の初めての言語化

他の機関にとってわかりにくかった警察の犯罪捜査について、特徴と構造及び背景にある理念を初めて言語化して明らかにし、被害が重大な児童虐待の場合には刑事訴追できるだけの証拠収集が大きな問題となること、被害が軽くても危険性、切迫性のある場合には次の被害を防ぐことを目的とした個人保護型捜査が展開されていることなどを明らかにしました。初めて言語化されたことで、警察自身も認識を深めることが可能になりました。

『児童福祉に携わるひとのための「警察が分かる」ハンドブック』の作成

児童相談所関係者の協力を得て、警察と捜査に関して、児童相談所が知りたいことを洗い出し、わかりやすい実用的なハンドブックを作りました。初めの「警察と刑事手続の基礎知識」(12頁)だけで必要なことは大体分かるようになっています。次の「Q&A」は、警察に関する36の質問への回答です。三つ目に、刑事手続が被害児童にプラスの影響を与えることについて、被害者学の知見を基に記述しました。警察の組織と行動に関する110の言葉についての解説も付けています。
https://www.kyoto-su.ac.jp/collaboration/20190222_ristex.html

相互理解のための場の設定と発信

このほか、福祉関係者と警察関係者が一堂に会し、福祉関係者は警察捜査の理解、警察関係者は福祉側からの要望等を踏まえた実務の改善の検討につながることを目指したシンポジウムを開催しました。お互い相手のことを知らなさすぎたという声が多く寄せられました。続けて、警察と福祉の対話を目指す、シンポジウム・ワークショップを開催しました。児童相談所から集めた警察に対する疑問や批判的な見解等を集約し、警察にも分かるようにしました。

成果の活用場面

ハンドブックを児童相談所や関係機関の職員が使うことで、警察の刑事的介入に関する行動やその意味が理解できるようになりました。警察からの派遣者や少年サポートセンターの職員など仲介役となることのできる人がこれを基に説明することで、わかりやすくて内容豊富な説明が可能になりました。理解が進むことで、円滑な連携ができるようになります。

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成果の担い手・受益者の声

担い手
警察が児童相談所に対し、丁寧な説明が不足していたことに気付かされました。児相職員はもちろん、多くの警察官が活用し、この『ハンドブック』そのものが「仲介役」になってくれると期待しています。(少年サポートセンター少年補導職員)
受益者
児童相談所ではわからない警察組織や検察との関係がよくわかりました。Q&Aは、児相や警察の視点がよく整理されていると思いました。この『ハンドブック』を今後の警察との連携の中で活用したいと考えています。(児童相談所長)

目指す社会の姿/今後の課題

児童虐待事案などについて、警察を含めた関係機関による適切な介入が早期に行われ、被害者の尊厳と安全が守られる社会を目指します。警察を含めた関係機関が他の機関の特性や制約を十分に理解できるようになることで、お互いを尊重し、子どもを守るために連携した行動ができるようになります。今回の研究の成果は、警察による捜査について他機関が理解できるようになることに貢献できると考えますが、児童相談所の対応についても、警察や他の機関が理解できるようにするための取組みが望まれます。『ハンドブック』を見た関係者から、「こういう資料があるのはとてもいいことなので、児童相談所のことが分かる資料も作って欲しい」といった声があがっています。

内容に関する問い合わせ先

京都産業大学 社会安全・警察学研究所
[連絡先] icj-ksu[at]cc.kyoto-su.ac.jp ※[at]は@に置き換えてください。

事業に関する問い合わせ先

国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)社会技術研究開発センター(RISTEX)
[連絡先] pp-info[at]jst.go.jp ※[at]は@に置き換えてください。