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「超高齢社会ははたして灰色か?」

袖井孝子
領域アドバイザー  袖井 孝子
お茶の水女子大学 名誉教授

 2012年1月30日に公表された国立社会保障・人口問題研究所の新しい人口推計によると、今後50年間に日本の人口は3分の2に減少し、1960年には現役世代11.2人で一人の高齢者を支えるおみこし型であったが、2010年には2.8人に一人の騎馬戦型になり、2060年には1.3人に一人の肩車型になると予想されている。

 人口の4割が65歳以上という超高齢社会を色にたとえるとしたら、どんな色があげられるだろうか。おそらく多くの人は、灰色を思い浮かべるのではなかろうか。それは、グレイヘア(白髪)からの連想であると共に、高齢者ばかりが多く活気に乏しい沈滞した社会のイメージである。

 労働力の高齢化は生産性を低下させる。高齢者は物を買わないので、経済が活性化しない。寝たきりや認知症の高齢者が増加して、医療や介護にかかる費用が増大する。高齢者を支えるために多大な税金や社会保険料を払わされる結果、若者世代は将来への希望を失う等など。

 こうした灰色の超高齢社会イメージの前提になっているのは、固定的で画一的な高齢者像である。現役世代何人で何人の高齢者を支えるのかという数字は、単に15歳から64歳までの人口を65歳以上人口と対比させた結果にすぎない。1960年には15歳から働く人も少なくなかったが、現在では15歳から働く人はほとんどいない。その一方で、今日では65歳を過ぎても働いている人が少なくない。すべての高齢者が現役世代に扶養されているわけではないし、高齢者のすべてが寝たきりや認知症になるわけではない。

 超高齢社会を乗り切るには、高齢者が支える側に回り、できるかぎり支えられる側に回る時期を遅らせることが必要だ。そのためには、高齢者も働いて税金や社会保険料を負担する、寄付やボランティア活動を通じて社会に貢献する、身体機能が衰えてもICTを活用して社会に参加し続けるなどが考えられる。

 高齢者の就労機会を拡大することが、若者の就労機会を狭めるという声があることは確かだ。しかし、年金を受給しつつ、比較的低い賃金でそれまで蓄えた知識や技術を活かして働くことは、必ずしも若者の職を奪うことにはつながらないだろう。また、必ずしも雇用労働だけが働く場ではない。地域社会における有償ボランティア的な仕事や趣味を活用して小遣い程度の収入を得るという方法もある。

 高齢者が社会的に活躍できる機会が増えれば、心身の健康が保たれ、結果として医療費や介護費用を減らし、現役世代にかかる負担を軽減することも不可能ではない。できるだけ長い間、高齢者が支える側に留まれるならば、超高齢社会は必ずしも灰色ではない。



(掲載日:2012年5月7日)

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