介護・保育/育児などの「ケアの質」に大きく影響する新たな概念「相互期待感」の理論的枠組みを構築し、その不一致が当事者同士の関係性に及ぼす影響を明らかにする。さらに、当事者が期待を言語化し他者の期待への理解を深める省察支援プログラムを開発・実践し、専門ケアラーや家族ケアラーへ展開し、持続可能なケア提供体制と「ケアが根づく社会」形成に貢献する。
ケア現場では、ケア当事者同士が抱く「これをやってほしい・こうすれば喜ばれるはず」といった双方の期待、すなわち「相互期待感」のズレが、関係性やケアの質に影響を及ぼす。本研究は、相互期待感に着目し、ケアの質を向上させる理論と方法論の構築を目的とする。「ケアとその価値の可視化」では、ケアラー自身で現場映像を簡易に記録できるツールや、VR 技術を活用し、ケア実践を振り返る「省察」を通じて当事者の暗黙的な期待を言語化する。期待を「行動・言語・感情・認知・役割」の五分類で可視化し、ズレが生じる構造を明らかにする。さらに、「社会システムの実践」では、可視化技術を応用した省察支援プログラムを開発し、保育・介護現場における専門ケアラー、および家族ケアラーを対象に実践・評価を行う。これにより、ケア提供者と受け手双方が互いの立場を理解し、期待を調整できる関係性を築くことを支援する。最終的には、誰もがケアにおける相互理解を深め、その価値が認められることで、質の良いケアが根づく社会の実現を目指すものである。
