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研究力復活へ、それぞれができることから取り組もう
~JST緊急シンポジウム開催報告~

2024年04月09日

3月11日(月)に、「緊急シンポジウム ~激論 なぜ、我が国の論文の注目度は下がりつつあるのか、我々は何をすべきか?~」を実会場及びオンライン配信にて開催しました。

本シンポジウムでは科学技術の研究者・関係者がそれぞれの立場から行うべきことについて活発な議論が交わされました。

JSTは、日本の研究力を復活させるため、ステークホルダーそれぞれが自分達ができることを行うことが最も重要であると考え、今回のシンポジウムにおける議論を参考にした取り組みを率先して行ってまいります。JSTでできることについては、検討し直ちに実施します。また、関係府省に対しても必要な申し入れを行うとともに、大学等研究機関、研究者コミュニティ、研究者個々人に取り組んでいただきたいことについてもJSTから積極的に発信してまいります。

1.開催概要

2024年3月11日(月)12:30~17:30
実開催およびオンライン配信
JST東京本部別館1階ホール(東京都千代田区五番町7 K’s五番町)
科学技術振興機構(JST)
内閣府、文部科学省

2.参加者数

(会場)84名、(オンライン)延べ2,002回※

※時間中の延べアクセス回数であり、同時に傍聴していた人数ではありません。

3.プログラム

12:30開会
12:30挨拶:科学技術振興機構 理事長 橋本和仁(5分)
12:40登壇者による講演(150分)
相田 卓三 先生理化学研究所 創発物性科学研究センター 副センター長/
東京大学 国際高等研究所東京カレッジ 卓越教授
内田 健一 先生物質・材料研究機構 磁性・スピントロニクス材料研究センター
上席グループリーダー
太田 香 先生室蘭工業大学 コンピュータ科学センター 教授
後藤 由季子 先生東京大学 薬学部教授
五神 真 先生理化学研究所 理事長
曽我 健一 先生カリフォルニア大学バークレー校 教授
15:10休憩(20分)
15:30パネルディスカッション(120分程度)
17:30閉会

4.パネルディスカッションにおける議論、ご意見(抜粋、要約)

パネルディスカッションでは、日本の研究力低下とその原因についての議論のほか、研究者への金銭的インセンティブの必要性や設定方法、研究者の処遇の過度な均一化や『選択と集中』の課題点、科学技術関連予算増額以前にできることは何か、国際連携の強化に向けた内向き志向の克服策、地方大学や中堅私大の取り組みのありかた、日本と国外の研究申請の違い等に焦点を当てて活発に意見が交わされました。

以下に講演、パネルディスカッションにおいて出された主な意見を掲載します。

なお、本項目「4.パネルディスカッションにおける議論、ご意見(抜粋、要約)」「5.参加者からいただいたご質問、ご意見(抜粋、要約)」にてご紹介している各ご意見は発言者・投稿者個人の見解に基づいており、所属機関を代表するものではなく、また本シンポジウムの結論を示すものではありません。

① 研究時間の確保、研究者の負担軽減

  • ・大学及び機関内の手続きの合理化、簡素化
  • ・大学への貢献(研究費の獲得による間接経費等)に応じた学内業務の減免
  • ・研究支援職をはじめとするスタッフの強化
  • ・申請書、報告書の合理化、簡素化
  • ・研究費申請、審査の効率化と低負担化

② 研究者の待遇の向上

  • ・評価に基づく待遇の弾力化
  • ・安定して生活を維持できる給与の確保
  • ・研究機関の志向を反映した研究者評価制度の設計

③ 研究費の確保(社会への理解増進を含む)

  • ・科学技術の重要性に関する共感形成方法の洗練
  • ・社会に還元するインパクト、提供できる価値の検討
  • ・科学技術関連の制度の再編、合理化
  • ・若手研究者、大学院生の独創性を活かすための支援制度改革
  • ・競争的研究費における自由発想研究の支援強化
  • ・科学技術関連予算の配分見直しによる運営費交付金、科研費予算の増額

④ 研究活動の国際化の一層の推進

  • ・『内向き志向』の脱却、積極的な国際交流の実施
  • ・最先端のネットワークに入るための質の確かな研究成果創出
  • ・学生、若手研究者が国際交流を行う機会の確保
  • ・世界のトップアカデミア、グローバル企業との連携
  • ・国際交流への支援、交流を実施しやすい制度設計
  • ・国内の研究環境における多様性構築の推進
  • ・国際ワークショップ主催のための組織的、包括的な支援

⑤ 研究ビジョンの設計、共有

  • ・研究者間でビジョンを議論する時間、環境の確保
  • ・プロポーザル作成の議論を通じた研究テーマの共有、構築
  • ・研究者、社会を魅了できる機関ビジョンの提示
     (多様性、帰属意識、地球環境課題への取り組み等を含む)
  • ・機関のビジョンに応じた弾力的な制度設計
  • ・大学のビジョン策定や運営における大学職員と研究者の連携強化
  • ・ファンド審査者(PM等)の専門性の確保、各専門分野におけるビジョンの策定、提示
  • ・戦略的な基礎研究の推進におけるスコープの拡大

⑥ 研究・論文の質の向上、システム改革

  • ・世界へのビジビリティを意識した論文誌の選定
  • ・ストラテジーを持った研究テーマ設定、研究立案力、論理・ストーリー構成力強化のための意識改革、若手指導
  • ・研究者間で積極的にディスカッションを行う風土の醸成
  • ・講座制の撤廃(講師、助教に学位授与の主査権限を付与)
  • ・論文業績の再評価、インセンティブ付与の検討、論文掲載料のサポート
  • ・大学における研究教員と教育教員の役割分担
  • ・大学における博士前後期の統合(無償化)と座学修士(収入源として有償)設置
  • ・研究支援における自由度の確保

⑦ 次世代人材育成

  • ・次世代研究者への研究の楽しさ・魅力の発信、鼓舞する指導
  • ・ディスカッション時間の確保
  • ・国外経験を積む機会の提供
  • ・若手研究者の待遇改善、雇用安定化
  • ・博士課程学生、ポスドク経験者の就職に関する産業界との連携、キャリアパスの多様化
  • ・若手向け研究費、給付型奨学金の充実(独創性を活かす自由度の高いもの等)
  • ・独立支援の拡充による独立意欲、向上心の醸成

5.参加者からいただいたご質問、ご意見(抜粋、要約)

本シンポジウムではオンライン質疑応答ツールを通じて参加者からの質疑・意見を募集しました。当日取り上げるお時間のなかったものを含め、いただいた内容の一部を要約し、以下の通り掲載いたします。

貴重なコメントを多数いただき、誠にありがとうございました。

  • ・科研費の不足等の課題を政治・行政に繋げるため、これまでの取り組みの振り返りや今後の働きかけの必要性
  • ・チャンスを『大物』研究者で独占しない、アカデミアの若返りの実施
  • ・若者に研究を生涯続けたいと思えるような姿勢や成果を見せ、鼓舞する指導を行う必要性
  • ・地方国立大学における研究費の不足
  • ・中堅の大学の強化等、裾野を広げ底上げを行うことの必要性
  • ・若手が希望を持てる日本のアカデミア再生の必要性
  • ・論文よりも産業貢献を重視した科学技術政策による自由度の高いファンドの減少、論文アクティビティの低下
  • ・公的研究費の内訳(基盤的経費と競争的研究費)の変化による影響
  • ・科学技術関連予算を増やすための財源確保について
  • ・成熟した国において科学技術予算を国がリードすることの限界について
  • ・任期終了後の職探しが絶えず続く研究職の不安定さについて

以 上

<本シンポジウムに関するお問い合わせ先>

科学技術振興機構 経営企画部 企画グループ
Tel:03-5214-7649
E-mail :kakikaku【@】jst.go.jp 【@】は”@”に変更してください。