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日米共同研究「デジタルサイエンス」分野 中間報告会を開催 ~ Digital Science for Society ~

戦略的国際共同研究プログラム(SICORP)

https://www.jst.go.jp/inter/

国際部のSICORP事業では、米国国立科学財団(National Science Foundation: NSF)と協力し、2021年度から「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)により求められる新たな生活態様に資するデジタルサイエンス」領域で4つの共同研究課題を支援しています。
https://www.jst.go.jp/inter/program/sicorp/usa.html
この分野では日米共通の意識として「自然科学と人文社会科学の融合」「コミュニティとの関係性構築」に価値を置いて研究を推進することを必須としています(詳しくはJSTnews 2022年1月号掲載記事を参照)。

2023年6月28日から2日間、中間報告会がオンラインで開催されました。

1日目は前半、支援中の4課題の研究代表者(PI)より、研究の進捗や今後の進め方について発表があり、JSTの研究主幹(Program Officer: PO)岩野和生氏、6名のアドバイザー、NSFのプログラムディレクター David Corman氏らとの質疑応答がありました。
後半は、若手研究者の海外渡航を促進するプログラムの一環で、相手側研究機関に短期間渡航した助教および博士課程の学生5名のライトニング・トークがありました。トークの後、岩野POの司会で米国での研究活動や生活について意見交換があり、初めての米国での研究活動や現地での慣れない生活ぶりについて、フレッシュな感性で語ってくれました。

2日目は一般公開で開催し、米国大使館のBrandon Possin氏、NSF Computer and Information Science and Engineering (CISE) Computer and Network Systems部門の副部長のBehrooz Alex Shirazi氏に開会の挨拶をいただきました。
前半、4課題のPIによる座談会があり、研究の社会実装段階におけるコミュニティとの関係構築の難しさが日米共通の問題意識として浮き彫りになり、研究開始の段階から信頼を得ていくことの重要性が指摘されました。
後半は“Mapping the potential of digital science to create a better future”と題したパネルディスカッションを実施しました。David Corman氏のファシリテートで、パンデミックを題材に、ヴァンダービルト大学 Assistant Professor James Weimer氏、京都大学 教授の西浦博氏、NSF Social, Behavioral and Economic Sciences部門のプログラムディレクター Sara Kiesler氏、エモリー大学 教授のLi Xiong氏、NHK解説委員 籔内潤也氏の5名による様々な視点での振り返りとこれからのデジタルサイエンスの可能性について話し合いました。

振り返りでは、データを使ったサイエンスは政策への情報提供において重要な役割を果たしたものの、科学コミュニケーションは不十分であったこと、また心理学的視点や、同調圧力などに代表される集団の文化的違いなどを含んだ、統合的なアプローチが不足していたことが挙げられました。
今後の備えとして、多様な視点、関係者を巻き込んだ準備態勢を確立することが大切で、そのためにはSTEM(科学・技術・工学・数学)教育に科学コミュニケーションを取り入れたり、非緊急時から多分野横断的な専門家のネットワークを築いたり、コミュニティとの関係構築に尽力し、緊急時にシームレスに様々な議論や協力関係を継続できるようにしておくことが必要であるとされました。

参加者からは、プログラムがとても刺激的な議論を生むように構成されており、将来の研究構想に資する重要なテーマについて充実した質疑や議論を聞くことができ、たいへん勉強になる2日間になったとの声がありました。岩野POの全体リードやアドバイザーからの的確なコメントは、参加者による議論をさらに促進するものでした。
また、パネルセッションにメディアからNHK解説委員が参加したことは、これからのデジタルサイエンス・コミュニティの活動のために大切な一歩であるとの指摘もありました。

今後もこの分野では、コミュニティとの関係に着目しながら課題の推進を進めて参ります。

  • 日米の研究者および関係者のショット。充実した2日間でした。

    日米の研究者および関係者のショット。充実した2日間でした。