トピックス
カリウムイオン電池研究を包括的に網羅した総説論文を科学雑誌に発表
研究成果展開事業
https://www.jst.go.jp/a-step/kadai/h28-s1/h28_senryaku01.html
戦略的国際科学技術協力推進事業
https://www.jst.go.jp/inter/program/multilateral/concert-japan.html
東京理科大学理学部第一部応用化学科の駒場慎一教授、久保田圭講師らの研究グループは、リチウムイオン二次電池の後継候補の一つとして期待のかかるカリウムイオン二次電池(以下、カリウムイオン電池)について、これまでの研究の全てを網羅した総説論文を科学雑誌Chemical Reviews(2020年1月15日付けオンライン掲載)に発表しました。
カリウムイオン電池は、リチウムイオン電池と比べて安価な原材料で構成することができるだけでなく、高い安全性やリチウムイオン電池と同じかそれ以上の電圧を得ることも期待できます。
駒場教授らは2015年にアルミニウム箔を基板とする黒鉛負極を使用して、カリウムイオンを含む電解液にて、高性能な充放電反応が進行することを学術誌に発表しました。その成果を利用して、正極として開発した鉄とマンガンを主成分とするプルシアンブルーを用いることで、リチウムイオン電池と同じ4ボルト級の電圧を示す新型二次電池の開発に成功し、2017年に論文発表しました。このとき、カリウムがリチウムやナトリウムと比べて電解液中でのイオンの動きが速くなることを突き止め、そのことで出力が向上して優れた急速充放電性能を示すことを明らかにしました。
今回の総説論文では、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオンのそれぞれの電池を対象に、電解液と正極・負極、そこに添加される微量成分に至る全ての材料について、合成方法やその物性といった学術的観点と、電池に応用した際の性能といった工学的な観点から、詳細に解説しています。電解液と正極・負極すべてについて、使用できる可能性のある材料を網羅的に比較した研究は他にありません。
以下の東京理科大学のウェブサイトにて詳しい内容をご覧いただけます。
https://www.tus.ac.jp/mediarelations/archive/20200115003.html
なお、今回の研究成果の一部は、科学技術振興機構(JST)の以下の事業の他、文部科学省による元素戦略プロジェクト拠点形成型、科学研究費補助金(JP16K14103, JP16H04225, JP18K14327)の支援を受けて得られたものです。
- 研究成果展開事業 研究成果最適展開支援プログラム(A-STEP)
- 研究開発テーマ:エネルギーの有効利用を支える次世代定置用蓄電技術の創出
(プログラムオフィサー:金村 聖志 首都大学東京 教授)
研究課題名:カリウムイオン電池およびカリウムイオンキャパシタの基本技術開発
(プロジェクトリーダー:駒場 慎一 東京理科大学 教授)
- 戦略的国際科学技術協力推進事業 戦略的国際共同研究プログラム(SICORP) EIG CONCERT-Japan
- 研究領域:効果的なエネルギー貯蔵と配分
(プログラムオフィサー:堂免 一成 信州大学 先鋭材料研究所 特任特別教授) - 研究課題名:高効率電力貯蔵を目指す低コストナトリウムイオン電池の開発
(日本側研究代表者:駒場 慎一 東京理科大学 教授)
- 【論文情報】
- 雑誌名:Chemical Reviews 2020年1月15日 オンライン掲載
- 論文タイトル:Research Development on K-Ion Batteries
- 著者:Tomooki Hosaka,1 Kei Kubota1,2, A. Shahul Hameeda1,2, and Shinichi Komabaa1,2
1. Department of Applied Chemistry, Tokyo University of Science
2. ESICB, Kyoto University - DOI:10.1021/acs.chemrev.9b00463