JSTトップ > トピックス > 詳細記事

最新情報

トピックス

SATREPSの2プロジェクトが出張講義 横浜市の独逸学園で
2014年05月29日 東京横浜独逸学園(横浜市都筑区)

JSTの地球規模課題対応国際科学技術協力プログラム(SATREPS)の取り組みを、横浜市都筑区の東京横浜独逸学園の生徒たちに紹介する出張講義が2014年5月29日、開かれました。同学園における出張講義は昨年4月に引き続き2回目です。二つのプロジェクトの研究代表者2人が30分ずつ講義を行い、生徒たちからはたくさんの質問が寄せられました。

講義は同学園の10、11年生(高校1、2年生)の「地理」の時間に行われ、15-17歳までの男女38人が出席しました。まず、JSTのSATREPS事務局が、世界41ヶ国で87プロジェクトもあるプログラムの全体像を説明しました。

続いて、地球温暖化による海面上昇で国土消失の危機にさらされる南太平洋の環礁国ツバルのフォンガファレ島で、生態工学的な方法で国土の維持に取り組む東京大学の茅根創教授が、自ら作成したツバルの地形図や、有孔虫やサンゴのサンプルなどを用いてレクチャーを行いました。
茅根教授は、ツバルの危機は人工護岸や、人口集中による海洋汚染などのローカルな要因が、有孔虫(ホシズナ)の生産減などを引き起こし、生態系の復元能力が低下していることを報告。そのうえで、「ツバルでは、サンゴと有孔虫が国土形成の基盤となっています。サンゴや有孔虫による砂生産を増やすと同時に、砂の堆積を邪魔する人工護岸、ドレッジや突堤などに対策を施すことで、地球温暖化による海面上昇にも強い国土を作れるように支援していきたい」と発言しました。 これに対して、生徒たちからは「ツバルで暮らす1万人の人たちはどんな仕事で生計を立てているのか」「人工護岸ではなぜダメなのか」などの質問が寄せられました。

2時限目の講義では、次世代の食糧安全保障のため、タイの研究者とともに魚介類の養殖技術開発に取り組む東京海洋大学の廣野育生教授が、魚のイラストを取り入れたスライドを用いてレクチャーを行いました。廣野教授は、急激な養殖漁業の需要増に対し、ハタやスズキ、クルマエビ類などの安全な増産技術開発を開発し、品質が高く、値段も手ごろな魚介類を持続的に増産していく工夫について説明しました。タイ水産局と共に、魚介類の生殖系細胞の移植実験を行い、借り腹技術を利用した新たな育種技術の開発、感染症予防の為のワクチン開発、魚粉に替わる代替たんぱく質飼料の開発など、興味深い話が次々と出てきて、「ワクチンと抗生物質の違いはどこにあるのか」など、夢中で質問する生徒たちの姿が印象的でした。

同学園で地理を担当するクリスチャン・ジンク教諭は「学生たちは、あと1-2年で大学に進学するが、まだ進路をどうしようか迷っている。今回のレクチャーを通して、学生らの視野が広がり、新たな刺激を受けることができた。このような機会は大変ありがたい」と話していました。

JSTでは今後も、研究の面白さや興味深い研究成果を教育の場に生かせるような試みを積極的に行っていきます。

  • SATREPS 国際科学技術共同研究推進事業 地球規模課題対応国際科学技術協力プログラム
  • (Science and Technology Research Partnership for Sustainable Development)
  • https://www.jst.go.jp/global/about.html


①レクチャーに熱心に聞き入る
東京横浜独逸学園の生徒たち


②地図やパンフレットなどでプロジェクトを説明する茅根教授


③スライドを使った廣野教授の
レクチャー