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災害被害低減のSATREPSマレーシアプロジェクトが注目を浴びる
マレーシア・ペナン

  科学技術振興機構(JST)、国際協力機構(JICA)が連携して実施するSATREPSプロジェクト「マレーシアにおける地すべり災害及び水害による被災低減に関する研究」(研究代表者、登坂博行・東京大教授)の取り組みが、現地メディアに大きく取り上げられました。

がけ崩れの発生を知らせるセンサーが設置される幹線道路沿いの斜面

  プロジェクトの目的は、急激な都市化と集中豪雨により、地すべり災害や水害が多発するマレー半島に、ハザードマップや早期警戒システムを導入することです。ハザードマップ作成のためのデータ収集には、既存データの整理や衛星観測を利用。千葉大、東京大、京都大、九州大、防災科研、ピジョンテック社、土木研究所に加え、マレーシア理科大(USM)、マルチメディア大(MMU)、テナガナショナル大(UNITEN)などが加わる国際共同研究として、2011年7月から5年間の予定で実施されています。

  8月下旬の国際学会AICCE/GIZ’12(http://civil.eng.usm.my/AICCEGIZ/index.php)の最中に開かれた記者会見で、マレー半島を横断し、主要都市を結ぶ幹線道路の斜面2か所、Kelantan川流域の2か所が、早期警戒のモデルサイトとなることが報告され、確認されているだけで、現地の七つの新聞、四つのテレビ局、三つのラジオ局、複数のインターネットメディアにも報じられました。

  現地のプロジェクトマネジャーを務めるUSMのChan Huah Yong准教授は、「日本は災害が多い国で、防災、災害対応において多くの経験を積んでいます。一方、マレーシアは、専門家が少なく、経験が浅いため、日本と共同研究をすることにより経験を積んでいく必要があります」とコメントしたことが引用されています。

  また、現地での報道を知った、研究代表者の登坂教授は「現地の報道の様子からプロジェクトに対する期待の大きさがうかがえます。Kelantan川流域には、毎年のように小規模な氾濫に見舞われる地域がいくつかあり、数年に一度は大きな氾濫被害が報告されています。今後、気候変動が進めば頻度や被害が大きくなることも予想されます。これからおよそ4年間かけ、本流域の水文観測記録や新たな観測データを利用して洪水流・氾濫流の再現・予測モデルを確立し、早期警戒・避難システムの高度化を図る予定です。また、被害を食い止めるための防災対策の提案もまとめていきたいと思います」と話しました。

  • 【関連URL】
  • 「SATREPS」
  • https://www.jst.go.jp/global/index.html
  •   地球規模課題対応国際科学技術協力(Science and Technology Research Partnership for Sustainable  Development)の略語。独立行政法人科学技術振興機構(JST)と独立行政法人国際協力機構(JICA)が共同で助成し、地球規模課題解決のために日本と開発途上国の研究者が共同で研究を行う3~5年間のプログラムです。35カ国68のプロジェクトが実施されています。
  • 「マレーシアにおける地すべり災害および水害による被災低減に関する研究」
  • https://www.jst.go.jp/global/kadai/h2215_malaysia.html
  •   近年、マレー半島では急激な都市化および温暖化による影響が起因していると思われる集中豪雨が多発していますが、地すべり災害・水害に関してその調査や観測データが不足しており、被災低減策が立ち後れています。
      本研究では、マレーシア国内で都市化が著しい地域を対象に、衛星データや無人航空機を使用した現地観測を行うとともに、地すべり災害・水害に関する地形要因、発災歴、降水量などの統計データを収集・評価し、統合データベースとして構築することを目指しています。また、地すべり災害・水害の発生危険域と危険度の評価、地図化、事前対策や早期警戒・避難などの被災低減化を支援するシステムの構築を図り、東アジア諸国における日本の科学技術の貢献を目指しています。