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研究領域の概要、研究総括の募集・選考に当たっての考え方



<社会技術研究>

「社会システム/社会技術論」
研究総括:村上 陽一郎(国際基督教大学 教授/東京大学名誉教授)
研究領域の概要
 この研究領域では、科学や技術が社会の構成にとって不可欠となっているような現代社会を前提として、新しい社会システムや制度等の構築につながる研究を対象とします。
 参考までにこの領域においてすでに存在していると思われる具体例を挙げれば、技術イノベーションを含む経済学(技術経済)、規制のための科学(レギュラトリ・サイエンス)などになりますが、科学や技術の組み込まれた社会を対象とした新たな研究課題の発掘を含みます。

研究総括の募集・選考に当たっての考え方
 現代社会は「知識に基盤を置く」(knowledge-based)であり、中でも科学や技術は社会の構成にとって不可欠であると言える。しかし、社会科学を含めた学問も、社会の構造や制度も、必ずしも科学や技術が組み込まれた社会という前提に立っておらず、現状に追いついていないと言わざるを得ない。そのような問題意識から、この研究領域では、科学や技術が有機的に組み込まれた社会を考え、社会を扱う新しい座標の構築を目指したい。
 科学・技術と社会との関連の問題から、日本社会のシステム改革の見直しまで社会システムに関する野心的な議論を期待する。また、本領域で取り扱う「社会技術」自体についても、今後の社会システム構築に資するよう、その概念や範囲、研究制度などを巡って検討する必要がある。そのような観点からの「社会技術」そのものに関する研究を特に歓迎する。領域自体が抽象度が 高いので、理論研究が多くなることが予想されるが、できる限り具体的な問題設定から出発する方法論を期待する。

「循環型社会」
研究総括:山本 良一(東京大学国際・産学共同研究センター 教授)
研究領域の概要
 個々の要素技術を超えて理工学的視点、社会科学的視点の両面から地球環境問題に俯瞰的に取り組む、広義の「循環型社会」についての研究を対象とします。
 具体的には、持続可能な開発を判断する指標群の開発、エコ効率の高い技術、製品、サービスの設計、生産、普及、循環のための新たな社会システムとビジネスモデルの構築や環境認識共同体の形成のための方法等の研究が含まれます。

研究総括の募集・選考に当たっての考え方
 そもそも「循環型社会」という研究領域が設定された理由の一つは、個別の要素技術の積み重ねでは「社会の持続的発展」が達成できないと言う認識があるからである。従って本研究領域では文理融合の研究チームが「循環型社会」実現に関わる様々な課題に挑戦することを推奨する。
 また、本領域での公募は平成15年度で終了するため、本年度は既に採択され、スタートしている6つの研究課題の基本コンセプト、「有機物の地域循環システム、マテリアルリース社会、環境格付け、問題物質群への対処法、自動車材料の地域循環システム、循環型社会のための社会的合意形成手法」と基本的にオーバーラップしない課題を歓迎する。例えば地球の限界、環境容量の明確化やサステナビリティ指標の開発、低環境負荷型のグローバル・リサイクリングネットワークの形成、エコデザインとバリアフリーデザインの統合化、マテリアルフロー指標と経済指標の統合化、循環型社会作りを強力に推進する環境教育・環境コミュニケーションのあり方、循環型の都市環境設計等である。
 人類の直面する環境危機を打開する可能性のある大胆な発想、モデル、手法、提言を期待する。

「脳科学と教育」
研究総括:小泉 英明((株)日立製作所基礎研究所・中央研究所 主管研究長)
研究領域の概要
 学習概念を、脳が環境からの刺激に適応し、自ら情報処理神経回路網を構築する過程として捉え、従来からの教育学や心理学等に加え、生物学的視点から学習機序の本質にアプローチする研究を対象とします。
 具体的には、脳神経科学の蓄積されたデータの学習・教育への適用、発達認知神経科学や進化・発達心理学、各種神経科学を基盤とした知見の学習機序や広義の教育への応用、自然科学・人文学の成果と臨床、教育、保育等の現場の知識を融合した学習・教育等、前胎児期から一生を終えるまでの全ての学習・教育過程を包括的な視点で捉え直し、少子・高齢化社会における最適な学習・教育システムとその社会基盤構築に資する研究等が含まれます。

研究総括の募集・選考に当たっての考え方
 本研究は、Human Security & Well-being(安寧とよりよき生存)を基調とした未来を見据え、従来の脳科学にも教育学にも存在しなかった学習・教育指向の新領域を創生しようとするものです。先端技術・自然科学と人文学・社会科学を架橋・融合したTrans-disciplinary (環学的)な視点から、教育関連問題の根幹にアプローチします。
 発達認知神経科学を含む脳科学、発達心理学や言語学、そして高次脳機能計測や各種情報技術を架橋・融合して実践的かつヒューマニステックな学習・教育に関する研究を志向します。学習効果・学習意欲の視点から、遺伝因子・環境因子(genetic・epigenetic, nature・nurture)と相互作用, 神経結合による環境適応、可塑性、神経伝達物質と興奮・抑制機序、髄鞘化の遺伝情報・機能発現機序、機能領野再構築、臨界期・感受性期、記憶、報償系などを包括的に研究し、一般学力・語学力のみならず、創造力・洞察力・理解力の改善、そして共感性・暖かい心・奉仕の心の育成、さらに倫理・義務を尊重する心の醸成、加齢と能力維持等のテーマを含めます。利便性・物の時代から叡智・心の時代を志向し、21世紀における人間の基本的能力向上を目指します。恣意的仮説に基づいた推論ではなく、科学的・実証的根拠を基調とした実直な研究内容を期待します。具体的な研究内容・体制については下記のいずれかを含むことが望まれます。
神経科学の蓄積された知見を、学習・教育(胎児・乳幼児教育、育児、特殊教育、語学教育、リハビリテーション、痴呆予防、遠隔教育、メディア教育、教育経済学など)に具体的に適用するための調査・基礎研究
発達認知神経科学や進化・発達心理学、各種神経科学を基調とした学習機序の研究と広義の教育への応用展開。(認知発達モデル、学習モデル、発達認知ロボティクス、発達神経言語学等の研究も含む。)
科学・人文学基礎研究者と、臨床医師、教師、保育者、各種療法士など現場の実情・実態を熟知した人々との連携体制による学習・教育研究。


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This page updated on September 18, 2003

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