総評　：　研究総括　山本　良一（東京大学 国際・産学共同研究センター　教授）

　本研究領域は、循環型社会の構築の際にボトルネックとなる問題点の解決をめざすことが一つの使命であるが、そのような観点からみると現状は未だ重要な研究課題が山積している状態であるといえる。
　要素技術に関する研究についてのみみても未だ発展の余地があり、重要であることは言を待たないが、成熟化しつつある要素技術を集成し、それを社会において運用するために必要となる社会システムまでも視野に入れた、循環型社会のあり方についてのグランドデザインを行うことは、緊急の課題と言える。このような問題意識から、個別の要素技術を超え、理工学並びに人文社会科学の両面から地球環境問題に取り組む俯瞰的な提案を期待して本研究領域を平成13年度に設定し、これまで２回の選考を重ねてきた。
　本年度は「循環型社会」研究領域の公募の最終年度であり、平成１３，１４年度にも増して意欲的な研究が２９件も応募された。既に採択されスタートしている6課題の核心的なテーマ、「有機物循環システムの再生」、「マテリアルリース社会」、「環境格付け」、「低環境負荷プロセス」、「問題物質群への対処」、「市民参加による循環型社会の合意形成法」と直接オーバーラップしない課題から１１件を面接選考対象とし、最終的にはその中から３件を採択した。すなわち、既存都市・近郊自然の循環型再生大阪モデル、いわて発循環型流域経済圏の構築に関する研究、サステナビリティ指標としての物質・材料フローである。いずれも野心的で社会的解決の急がれる研究課題でありその成果が期待される。