ホームJSTについて情報の公開・個人情報保護機構の評価に関する情報(参考) 科学技術振興事業団(平成14年度まで)の評価結果平成13年度評価結果(研究交流促進・研究支援事業、及び科学技術理解増進事業)科学技術振興事業団機関評価報告書(科学技術理解増進事業)全文科学技術理解増進事業評価報告書

科学技術理解増進事業評価報告書

第一部 科学技術振興事業団の機関評価にあたって
1.はじめに
 科学技術振興事業団(以下「事業団」という)では、国等の定める研究開発に関する評価の指針等に基づいて、事業団が運営する事業の全般にわたって評価を行い、事業団が実施している事業の内容とその科学技術振興上の意義を国民に対して明らかにするとともに、事業団の事業運営にあたっての改善事項を抽出することを主眼とする評価(以下「機関評価」という)を行っている。(資料1「科学技術振興事業団の事業に係る評価実施に関する達」参照

 事業団は機関評価を実施するにあたり事業団の外部から選任される評価者からなる総合評価委員会(以下「委員会」という)に機関評価を依頼するものとされており、熊谷信昭委員長(大阪大学名誉教授)及び13名の委員から構成される当委員会が設置された。(資料2「総合評価委員会規則」及び資料3「総合評価委員会委員名簿」参照

 事業団は多岐にわたる事業を実施していることから、機関評価については事業を「科学技術情報流通促進事業」、「技術移転推進事業」、「基礎的研究推進事業」、「研究交流促進・研究支援事業」、「科学技術理解増進事業」の5つに大別し、平成10年度から毎年度個々の事業についての評価を順次行うとともに、平成14年度にそれらの結果を総合した運営全般についての評価を行うとしており、平成13年度は研究交流促進・研究支援事業及び科学技術理解増進事業を機関評価の対象と選定した。

 委員会では科学技術理解増進事業を評価するため科学技術理解増進事業評価部会(以下「部会」という)を設けることとし、委員会委員である坂元 昴文部科学省メディア教育開発センター所長を部会長に指名した。

 部会は坂元部会長、総合評価委員3名及び部会委員6名の合計10名から構成され本事業の評価を行った。(資料4「科学技術理解増進事業評価部会委員名簿」参照
 部会は平成13年12月3日から平成14年3月11日まで3回の審議を行い、評価の状況を委員会に対して中間的に報告した。(平成14年6月19日)
 委員会での意見等を踏まえ、部会は更に1回の審議を行い評価報告書の取りまとめを行った。平成14年10月7日、委員会は部会における取りまとめを踏まえ本報告書を作成した。(資料5「審議経過」参照

 審議にあたっては、事業団から評価対象事業についての説明を受けた後、(1)事業による成果は得られているか、(2)国民に十分な説明が出来ているか、(3)効率的・効果的に業務運営がなされているか、(4)業務運営システムに問題はないか、(5)時代(社会・経済)の要請の方向に沿っているか、(6)科学技術の発展の状況と整合しているか、の視点から評価を行うこととした。また、更に、(1)事業の中でも特に重点化すべきものは何か、改善点は何か、(2)我が国が将来に向かって科学技術分野で果たすべきことに関する展望を踏まえた上での評価対象事業の展開を図るための方策如何、という視点から提言を行うこととした。(資料6「科学技術振興事業団の機関評価の目的及び評価の視点について」参照)

2.評価対象事業の概要と実績
 評価対象事業の概要と実績(平成13年度末現在)は以下のとおりである。(PDF 表1参照(PDF:225KB)
 科学技術理解増進事業の年度展開はPDF 図1「科学技術理解増進事業の年度展開」(PDF:11KB)のとおりである。また予算の推移については図2「科学技術理解増進事業の予算推移」のとおりである。

(1) 科学技術理解増進手法・素材の開発と普及

 1 )) 展示物開発
サイエンス展示・実験ショーアイディアコンテスト
新しい展示手法、実験ショー開発のためアイディアコンテストを開催。
[平成8年度~平成13年度に、6回のコンテストを開催し、30件の展示物を試作。691件のアイディアを収集し、131件を入賞、36件を表彰。
実験ショーは、ビデオ化し、科学館95館に配布するとともに、サイエンス・チャンネルで放映。]

 2 )) コンテンツ開発
バーチャル科学館
青少年が科学館や家庭のパソコンで利用可能な科学コンテンツをインターネットやCD-ROM媒体で提供。青少年の科学的な疑問に答えるQAデータ等を整備。
[平成8年度~平成13年度に、CD-ROMコンテンツ9件>、インターネットコンテンツ44件、マルチメディアコンテンツ23件を開発し、提供。QAデータ2,000件整備。]
科学番組(サイエンス・チャンネル)(配信業務については平成13年度から国立オリンピック記念青少年総合センターへ移管)
科学技術に関する話題や情報、また、それに携わる人についての映像コンテンツを制作し放送。
[平成10年度~平成13年度に、1,500本以上のコンテンツを制作、CS放送(スカイパーフェクTV、CS日本)及びCATVを介して約900万世帯が視聴可能。
また、同コンテンツ及びその概要をインターネット上で提供しており、平成14年5月よりブロードバンドによる提供も開始。]

 3 )) 新しいロボット競技開発
虫型ロボット競技会
青少年が容易に組立、プログラムし、競技を行えるロボットキットと競技ルールを開発・普及。
[平成10年度~平成13年度に、競技参加者2,820人。指導者205人を養成。]

 4 )) 科学技術・理科教育用デジタル教材開発(平成13年度から実施)
IT科学技術学習支援事業
最新の研究成果等の科学技術に関するITを駆使したコンテンツを科学技術・理科教育用デジタル教材として開発し、学校等へ提供。
[平成13年度に、教育現場におけるデジタル教材のニーズ調査を行い、これを踏まえ科学技術・理科教育用コンテンツを合計30本(うちプロトタイプコンテンツ5本についてはデモ授業等で評価を実施)開発するとともに、教育現場に提供していくための提供システムの調査研究を実施。]


(2) 理解増進活動の支援

 1 )) 科学館マルチメディア整備モデル事業
モデル科学館を選定し、インターネット、コンピュータ、テレビ会議等のマルチメディア利用環境及びコンテンツを整備。
[平成10年度~平成12年度に、全国9ブロックの拠点館にパソコン等マルチメディア機器、参加体験型コンテンツ等を整備。]

 2 )) 科学館等活動支援事業(平成13年度からの新規事業)
科学館等が地域の学校と連携して、科学技術・理科教育を推進していくことに対して備品や教材等を支援。
[平成13年度に、第1次企画として4件を選定。9館、約30校に対する支援を行った。また、第2次企画として18件を選定。34館、約100校に対する支援を行った。
また、科学館や学校からのアイディアに基づく教材開発を実施し、平成13年度は21テーマについての開発を実施。]

 3 )) 草の根活動支援
草の根実験教室支援
草の根的に開催されている科学実験、科学工作教室の開催を支援。
[平成11年度~平成13年度に、科学実験教室等389件を支援。参加者総数528,769人。]
草の根ロボット支援
研究者等により草の根的に活動されているロボット競技の開発や競技会の開催を支援。
[平成11年度~平成13年度に、18団体を支援。競技会79回開催。]

 4 )) ロボット創造国際競技大会(ロボフェスタ2001)への支援
ロボフェスタの企画、国際フォーラムの支援。
[平成10年度~ 平成13年度に、中央委員会の活動支援を行い、平成13年7月~11月に、ロボフェスタ関西、ロボフェスタ神奈川が開催された。開催期間中の入場者は56万人。]

 5 )) サイエンス・レンジャー事業(平成13年度から国立オリンピック記念青少年総合センターへ移管)
科学実験・工作名人ボランティアによる実験・工作教室の開催を支援。
[平成8年度に登録を開始し、平成14年3月現在サイエンス・レンジャー172名登録。平成8年度~平成12年度に、実験工作教室579回開催、59,734名参加]


(3) 理解増進活動の基盤整備

 1 )) 人材育成
サイエンス・レンジャー研修(平成13年度からの新規事業)
JSTが登録しているサイエンス・レンジャーに対して、研修を行うことにより、個々の能力の向上を目指す。
[平成13年8月に、3泊4日の研修を25名に対して実施。]
科学館職員研修
全国科学館連携協議会を活用して、科学館等職員の研修会を開催。
[平成8年度~平成13年度に、科学館職員研修を6回開催し、188名が参加。]
教員研修(平成13年度からの新規事業)
理科担当教諭に対し、最新の科学技術の状況を伝えるとともに、生徒の好奇心と探求心をより喚起できる授業を行えるように研修会を行う。
[平成14年1月に3泊4日の研修を実施し、48名が参加。]

 2 )) 交流・連携(人材交流・国際交流)
APEC科学技術理解増進活動に関するシンポジウム
APECにおける科学技術理解増進分野の国際会議での情報交換。
[平成9年8月に、東京で開催。外国人22名、日本人112名参加。]
日米科学技術理解増進専門家会合
平成11年の小渕-クリントン会談においてとりあげられた「科学技術の理解増進」分野の協力課題を議論する国際会議。
[第1回会合を平成12年11月東京で開催。日米合計で35名が参加。]
国際科学技術ジャーナリスト会議
科学技術ジャーナリストや研究者、企業の広報担当者等が多数集まり科学技術ジャーナリズムについて議論を行う。
[平成13年10月開催。外国人16名、日本人287名参加。]
学会協力
日本化学会、天文学会等が主催する青少年向けのイベントを連携して実施。
[平成13年8月に開催された夢・わくわく化学展2001(日本化学会)に協賛。入場者数24,000人。]


(4) 体験機会の提供

 1 )) JST科学技術講話
最先端の研究者による一般国民への講話。
[平成9年度~平成12年度に11回開催。2,143名参加。]

 2 )) サイエンス・ワンダー・ワールド
科学技術週間の最終日に小中学生と保護者を対象とした大規模科学実験ショーを開催。
[平成9年度~平成13年度に、5回開催。1,453名参加。]

 3 )) サイエンス・ワンダー・ワールド
サイエンス・キャンプ(平成13年度から国立オリンピック記念青少年総合センターへ移管)
国立の試験研究機関において、高校・高等専門学校生を対象にした夏休み期間中の2泊3日の科学技術体験プログラムを実施。教師対象も試行。
[平成9年度~平成12年度に、延べ112試験研究機関で開催。1,336名の高校・高等専門学校生が参加。(教師対象は平成11年度~平成12年度に、延べ7試験研究機関、62名参加)]


(5) 日本科学未来館

 1 )) 日本科学未来館の整備
科学技術に関する情報発信と交流のための総合拠点として、日本科学未来館の施設(展示施設、交流施設、研究施設等)並びに展示映像設備及び展示空間を整備し、平成13年7月10日に開館した。
施設整備概要 地上8階(地下駐車場2階)、延床3万3千m2
展示施設 約8千m2(1、3、5階の3層)
交流施設 約1千m2(扇形階段ホール、会議室等)
研究施設 約4千m2
展示映像設備 7種{ドームシアター、シミュレーションライド、     バーチャル体験シアター、サイエンスライブラリ等}を整備した。
以下の4分野について展示(展示物、映像、実験)を整備した。
「地球環境とフロンティア」 「生命の科学と人間」
「情報科学技術と社会」 「技術革新と未来」

 2 )) 最先端の科学技術に関する展示手法等の開発・実施・普及
  最先端の科学技術を身近に感じ体験できる展示手法や学習体験手法を先駆的に開発し、科学技術情報発信拠点の日本科学未来館において実施するとともに、全国の科学館等の連携センターとして開発した展示物等の成果を巡回展等により普及していく。
開館記念展「ユニバソロジの世界」(開期2001.7.18~9.2)及び企画展「ロボット・ミーム展」(開期2001.12.1~2002.2.11)の制作・開催を実施した。→現在、巡回展に移行(又は実施協議中)。

 3 )) 日本科学未来館の運営、科学技術と社会との交流(双方向のコミュニケーションの充実)の推進
  「科学技術活動と社会との関係を探り、語り合う場」とのコンセプトに基づき、日本科学未来館を運営し、科学技術に関する情報発信と交流のための総合拠点として、研究者・技術者、学校教員、ボランティア、内外の科学館、メディア等との連携による科学技術と社会との双方向のコミュニケーションの充実に資する交流促進活動を推進した。
平成13年7月~平成14年3月の活動実績
イベント・セミナーの開催 30項目延べ312日
入館者数 約43万人(団体入館数 1,879団体)
(注)2002.5.12 入館者50万人を達成
友の会会員数 15,358人
ボランティア登録数 420人
実験教室(実験工房) 延べ168回 参加者数 1,273人
学会等による会議等の開催数 152回(利用者数 19,469人)
入館者に対するアンケート(2001.1.2~1.6、有効回答数750人)では、93%が好印象を持ち、89%が再来館の意向を示した。
研究施設の利用状況(平成13年12月現在)
JST創造科学技術推進事業等 3研究プロジェクト(合計 6研究グループ)


第二部 評価意見及び提言
1.科学技術理解増進事業の全般的評価
 事業団の科学技術理解増進事業は、平成8年、事業団発足時から、新しい事業として開始された。以降5年の短期間に、多彩な事業を活発に展開し、我が国の学校教育機関以外の科学技術理解増進活動の中核的活動として成長してきたことは、高く評価できる。特に平成13年に日本科学未来館が開館したことにより事業団の同事業は大きく強化された。
 科学技術の振興を図るためには、科学技術が国民に理解され、支持されることが不可欠である。また、将来の科学技術活動を担う人材確保のためには、青少年が科学技術に親しめる環境を創っていく必要がある。このような観点から、科学技術理解増進事業は非常に重要であり、今後とも事業団において同事業を継続・発展させることが強く望まれる。

 事業全般について、全体として高く評価できるものの、本委員会の審議において、以下の点については、更に考慮が必要であるとの指摘があった。

(1) 事業団の科学技術理解増進事業は数多くの個別事業から構成されているが、これら個別事業の中には、その時々の緊急の課題や外部からの要請に対応して実施されているものも見うけられる。今後は、これまでの経験を踏まえ、一層の事業の体系化を図り、我が国全体としての科学技術理解増進事業における事業団の位置づけを更に明確にし、重点的な事業の展開を図っていくことが望まれる。

(2) 科学技術理解増進事業は初等中等教育における理系教育を補強する任務を負うべきと考えられるが、事業団の事業においては、これまでは学校教育との接点が不十分であり、十分に事業の効果を発揮させるまでには至らなっかた面もある。
 しかし、最近、特に省庁再編の結果、科学技術・理科教育用デジタル教材の開発や教員研修、科学館と学校との連携等、学校における科学技術・理科教育の充実に資する取組みを展開しており、今後この傾向を強化することが必要である。
 また、学校におけるIT設備の増加は、多くの新しい連携の可能性をひらいていることに留意すべきである。

(3) 各事業の参加者に展示物、コンテンツ等に対する興味を持たせる効果は十分あがっているが、今後、興味をかきたてることに加えて、本質的な科学技術の理解や知識の定着に繋がるように工夫することが期待される。その前提として、事業を実施することにより、参加者にどのような効果をもたらしたのかについて検討・分析することが必要である。

(4) 事業の内容については、「科学」に重きが置かれ、「技術」、「産業」の視点が少ない傾向が認められる。日本科学未来館において技術革新を展示テーマとする等「技術」「産業」を取り上げる取組みもなされているが、今後は科学技術理解増進活動全般において、「技術」や「産業」に関しても更に取り上げることを期待したい。

2.個別事業の評価
(1) 科学技術理解増進手法・素材の開発と普及

 事業団が全国の科学館などの中心的センターとして、優れた展示、実験ショー、科学技術関連競技の開発と普及を行い、また科学番組の作成・放映、デジタル理科教材の開発・提供などに力を入れることは日本全体の科学技術理解増進活動の大きな推進力になりつつあると評価できる。

 このうち、科学館等における展示や実験ショーの企画については、我が国では一般的に公的な機関による評価の機会が少なく、展示や実験ショーの企画を担当する学芸員等の意欲を欠く結果となっているので、事業団のサイエンス展示・実験ショーアイディアコンテストは担当学芸員等に目標を与え、優秀な人材を育てるのに大きな役割を果たすものと思われる。実験ショーについては実験内容と演出の両面から評価を行うことが望ましい。
 コンテンツの開発(IT活用のバーチャル科学館、サイエンスQ&A、サイエンス・チャンネル等)については、更にPRをして知名度をあげ学校現場で活用してもらいその結果を反映して更に改良するといった仕組みが必要である。
 また、サイエンス・チャンネルについては、国民の関心が高く利用者の多いメディアであるTVにおいて、映像や音声によりわかりやすく科学技術に関する情報を発信できることから、科学技術の理解増進を図る上で非常に有効な手段であり、今後より一層の充実を図る必要がある。このため、更なる番組の充実・強化に加えて、より視聴者数の多いメディアでの放送の実施を図るとともに、諸外国とのコンテンツの交換や、国際的なサイエンス番組のコンテストへの応募など一層の努力とPRが望まれる。また、これまで作成された番組をさまざまな機会を活用して再利用することも更に推進すべきである。
 デジタル理科教材開発は、学校教育現場で直接利用される素材の開発に事業団が初めて取組むという点で重要な意味がある。そのため、開発にあたっては、教育的観点を踏まえて、教材を使用する教員の意見を十分反映して取組むことが求められる。
 デジタル教材は、実際の体験が困難な学習内容をリアルに観察できるという点で優れた教材になりうる。短時間で理解させることができるため、授業時間が削減された教育課程においては学力低下を軽減する策としても効果があると思われるが、授業で工夫すべきところをこれらに安易に頼ると、実物や実体験でこそ身につく「実践的態度」や「身体で体得する意欲」の習得が困難になることに留意すべきである。
 教材の種類としては、内容を提示するものばかりでなくゲームのように操作できる参加型のものも開発されることを期待する。
 また、教育現場へのコンテンツの普及を図るため、提供システムの充実・高度化を図るとともに、利用法に関する教員研修やデモンストレーション、教育委員会等への周知を通じたPRを図っていく必要がある。
 更に、インターネットの普及を踏まえて、インターネットを活用した科学技術理解増進のポータルサイトの整備が必要である。
 ITを利用した教育手法については、どのような方法が有効であるかについての研究も進んでいるので(例えばチュータ型とコーチ型との融合が検討されている。)それらの成果も取り入れて事業を進める必要がある。

(2) 理解増進活動の支援

 全国の科学館活動やボランティア等による草の根的な活動に対する支援は、いずれの事業も有意義であり、基本的には現事業を持続発展させるべきである。これらの事業は、今後、学校の完全週5日制により更に重要度を増すであろう。

 事業団の事業を契機として、全国の科学館相互の連携や学校と科学館の連携が進むことは意義が大きい。また、草の根的な活動については予算的な基盤がないため苦労している教員等も多いので、更に事業の周知を図るとともに、今後、支援件数を増加させるための努力を期待する。
 今後、地方自治体に積極的に働きかけて、科学技術理解増進事業への支援、負担を求めることも有効と思われる。
 なお、実験教室等支援事業については、個々の実験実習を助成するだけでなく、全国的なコンテスト等の催しも支援対象とすることが望ましい。
 ロボット創造国際競技大会(「ロボフェスタ2001」)は、青少年にものづくりの機会を提供して科学技術の理解増進を図る趣旨で実施されたもので、総観客数が56万人を超え国民の関心を呼び、成功裏に終了した。事業団はロボフェスタ中央委員会及び各競技団体の活動を支援するとともに独自に虫型ロボット競技を主催し、ロボフェスタ2001の成功に貢献したものと評価できる。

(3) 理解増進活動の基盤整備

 科学技術理解増進事業の実施にあたっては、科学技術の内容を解りやすく参加者が興味を持てるように伝える人材が不可欠であり、その養成・訓練が重要である。この意味で、事業団が実施している科学館職員やサイエンス・レンジャーの研修、実験教室の指導者養成、更に小中学校の教員研修なども非常に重要な事業である。

 特に、青少年の科学技術に対する興味を喚起するためには教員の役割が重要であり、教員研修に力を入れるべきである。現在の教員養成制度においては、専門的知識や技能の修得が十分ではなく、理科の実験等に前向きな取組みができないといわれている。文部科学省と連携をとり、実のある研修制度を実現することを希望する。
 また、これからは、母親、学生、退職者などのボランティアが、科学館や地域での活動、学校での理科教育の支援に参加することが必要になるが、実際には危険が伴うこともあるため、活動の中核になる人材の養成、研修制度は継続的に行う必要がある。
 なお、これまでの研修形態では、実際に効果があったか確認しにくいので、研修の実施にあたって、受講者に試験やレポートを課すなど、より積極的な研修を行うこと、更に、受講者に称号等を与えることも検討課題であろう。

(4) 体験機会の提供

 JST科学技術講話、サイエンス・ワンダー・ワールド、サイエンスキャンプなどは、重要で有効な事業であり評価できる。今後も引き続き積極的な体験機会の提供を望みたい。
 母親を対象にした機会提供や、内容をより親しみ易いものにするなどの工夫も必要である。

(5) 日本科学未来館

 日本科学未来館は、最先端の科学技術に関する情報発信と人の交流を、各地の科学館と連携しつつ展開する中心的拠点として、平成13年7月に開館し、平成14年5月には入館者数が50万人を越えるなど順調に活動を開始している。そのコンセプト、展示内容、企画組織、人材の活用など、現時点で最高の取組みがなされていると評価できる。
 日本科学未来館の狙いは、中学生以上をターゲットに先端技術研究分野へ誘おうというものであり、目的にそった有効な環境を作っているとの評価がある一方、一般人にとっては、壮大なショーに終わってしまい、来館したことが科学技術の理解に結びつくか疑問があるとの意見もあった。
 また科学技術の展示と説明が主で、科学技術の未来と社会・生活との関係の展望は従となっているように感じられ、「人間社会と科学技術の在り方を探り、文化の形成に果たす科学技術の役割と未来を示唆し合い語り合い理解し合う場」としての働きもあまり十分とはいえないように思われるとの意見もあった。
 日本科学未来館のような大型の科学館についてはコストパーフォーマンスについての議論が起こりがちである。来館者数だけから見ると投資効率は低いとの意見もあるが、世界の主要国はいずれも日本科学未来館のような中心的拠点となる大型の科学館を持ち、安価な料金で国民に提供している。科学技術を特別視せずに一種の文化として継続することが大事であり、入館者数や経費を最重視することにより館の公的使命が損なわれることのないよう配慮すべきであろう。

(運営)

 最先端の科学技術に関する情報発信と交流のための総合拠点として意欲的な運営がなされていると評価できる。
 過去のものを展示していては趣旨に合わないという点で維持していくことが大変である。最新の科学技術展示は、たちまち時代遅れとなる宿命にあるので、科学技術の動向に即応する展示を常に考慮する必要がある。
 また、企画を科学者だけにまかせるのではなく、社会学者、文化人、ジャーナリスト、産業人などの企画への参加を考えることも必要である。
 中高生を狙いとするならば、教育委員会や指導主事、教科調査官などにも宣伝し、一度は見学会を持つように学校へ働きかけることが必要である。
 来館者の理解の程度、能力、関心等に応じたきめ細やかな対応が必要であり、以下のような対応が有効と考えられる。
 ・来館者のネットワーク構築などのリピータを増やすための方策
 ・科学者との交流会
 ・小学生などを対象とした標準的な見学プログラムの設置
 ・来館者の理解の程度、関心度に応じたお薦めコースの紹介
 ・大人向きの講演や子供向けの読み聞かせ

(展示)

 実物が持つ迫力というものがあり、出来る限り実物を見せることが必要である。しかし、バイオテクノロジー、ナノテクノロジーなどは目に見えない分野であるので、展示として取り扱うのは極めて難しい。その分野によく挑戦している。
 展示の素晴らしさと中高生、一般人の理解認識度のギャップを埋める展示・説明が必要である。
 展示のパネル解説については、高度で難しい事柄や字の多い解説は読まれないので避ける傾向にあるが、高度な内容を細かく丁寧にパネル解説を行っていると評価できる。最新科学、最新テクノロジーの解説は必要十分な情報を盛り込むべきであり、親と子、先生と生徒あるいは友人同士でパネルの前で行われる対話は理解増進に役立ち、そのための十分な情報が必要である。

(インタープリター、ボランティア)

 展示と来館者の仲介をするインタープリターの役割は効果的であり、非常に大きい。展示内容と一般市民との距離を近づけるため更なる努力を期待するとともに、ボランティアを更に積極的に活用すべきである。

3.提言
 委員会は、以上のとおり、事業全体として有効な活動を実施しているとの評価意見をまとめた。更に成果をあげることを期待し、科学技術理解増進事業全体として特に留意、検討すべき事項を提言として述べることとする。
 なお、事業団は平成15年度中に独立行政法人化されることとなったが、科学技術理解増進事業の重要性及び公共性はいささかも変わるものではない。独立行政法人化により活動に自由度が確保できることが考えられる一方、業務の効率性がより一層求められることになる。公共性と効率性はある面では両立しづらい部分があるとしても、本報告における評価及び提言の趣旨を汲み科学技術振興のための一層の努力を期待する。

(1) 事業の継続的な実施

 科学技術理解増進事業は、効果が直ちにあらわれるものではなく、成果については長い目で見ていくべきであり、事業を今後長期にわたり継続発展させる必要があり、現在の活動が縮小されないような努力が必要である。そのためにも、国において研究開発の費用の一定割合は理解増進に充てるといった考え方が導入されることを期待する。
 また、日本科学未来館は最先端の科学技術に関する情報発信を基本的な機能としているので、展示等は常に更新が必要となり、その点に配慮しなければならない。

(2) 全国的な活動ネットワークの形成

 事業団が国の科学技術理解増進事業のセンター的機能を果たすことは非常に重要である。科学技術理解増進事業は、本来多くの機関、人々が協力して実施してこそ効果があがるものである。そのためにも全国の科学館や草の根的な活動とのネットワークを更に強化し、科学技術の理解者、応援者を増やし、ボランティア活動を惹きつけ、その活動をバックアップするような全国的な運動を展開していくことを期待する。

(3) 学校教育等との連携

 学校、教育委員会、地方自治体との連携を深め、効果的な事業の推進を図ることが必要である。子供達に一番影響が大きいのは学校教育であり、学校教育とどのように関連を持っていくかということが重要で、子供達の発達段階を考慮し、教育カリキュラムとも整合性がとれた活動内容を考える仕組みが必要である。これらの観点から、子供達の知的好奇心、探求心に基づく学習機会を提供するためのデジタル教材の開発、研究機関、科学館と教育現場との連携活動の支援、スーパーサイエンスハイスクールとの交流等を推進する必要がある。
 また、小学校の教師のための、もっと面白く子供を惹きつけて理科教育ができる手法の開発、研修等を通じたその普及に配慮することが望まれる。更に学校においてサイエンスディベートが活発化するように教員研修の内容を工夫することも有効と考えられる。

(4) 技術への配慮

 研究開発の成果の多くは、産業技術として活用され有用な財、サービスを生み出し社会に還元されてきた。事業団の科学技術理解増進事業においても、科学、技術、それらが活用されている産業の現場をバランスよく取り上げるとともに、青少年が日本の技術、産業に誇りを持てるような事業を期待したい。

(5) 事業の対象

 子供の理科離れ対策と成人に科学技術に対する関心を喚起させることは異なるので、対象に適した活動を行う必要がある。特に子供に大きな影響力を持つ母親に対する活動を持つべきである。また、立法や産業の分野のオピニオンリーダーなど社会に影響力を持つ人達に科学技術を理解してもらうことにも留意すべきである。
 科学技術ジャーナリストが果たす役割は今後一層重要になると考えられるので、科学技術ジャーナリストとの連携を強め、その活動を支援していくことが重要である。また、学協会との連携も重要である。例えば、科学技術に関する重要な課題を学会等が取り上げ議論を行う場合には事業団も積極的に場を提供することなどの協力を行うことが望まれる。
 一方、幅広い層の国民に知識を普及し、理解を増進する観点からは、TVメディアやインターネットの活用が効果が高く、それらを利用した事業をより一層充実する必要がある。

(6) 事業の方法

 科学技術理解増進事業を更に充実させるためには、より有効な事業の手法、関心を喚起・持続させる方策等について幅広い調査・分析を行い、それに基づいた実施方策を検討する必要がある。
 事業の評価にあたっても、効果の分析が重要であり、定量的な評価にはなじまない面もあるので、多角的な評価が可能になるような評価手法を取り入れることが重要である。特に、日本科学未来館における新しい試み(例:実際に研究が行われている研究室を見せる)等についてはその評価法についての研究も併せて実施する必要があると考える。

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