JST news 2018年9月号

JSTnews
ISSN 2433-7927

JSTnewsは、国立研究開発法人科学技術振興機構(略称JSTの広報誌です。JSTの活動と、最新の科学技術・産学官連携・理数教育などのニュースを、わかりやすくご紹介します。

Index20189月号





特集

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P.03

農業を持続可能に 決め手は微生物

1900年代以降、世界の人口増加を支えたのは食料の飛躍的な増産を可能にした化学肥料だ。しかし一方で、環境汚染や資源の枯渇といった問題があり、農業の持続可能性を考えると、このまま化学肥料に依存するわけにはいかない。そこで注目したいのが、肉眼では見えない微生物だ。大気中の窒素を固定して栄養分として利用するものや、植物と共生し土壌から吸収した栄養分を植物に供給するものなど、さまざまな種類が存在する。持続可能な農業に向け、その潜在能力を引き出そうとする研究者たちを紹介する。


特集

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P.04農業を持続可能に 決め手は微生物

植物に共生する菌根菌でリン肥料を減らす

植物の根に入り込み、共生関係を築くアーバスキュラー菌根菌(AM菌)。その役割は、土壌中に菌糸を張り巡らしてリンなどの栄養分を吸収し、宿主作物に供給することである。世界的にリン鉱石の枯渇が懸念される中、この機能を応用した技術を開発することで、リン肥料の使用量を削減できないか。そんな目的を持ったプロジェクトが、自然科学研究機構基礎生物学研究所の川口正代司教授とJSTの齋藤雅典ACCELプログラムマネージャーとの二人三脚で進んでいる。


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P.08農業を持続可能に 決め手は微生物

作物が窒素固定する時代に向けて酵素のエベレストに挑戦

作物が自ら窒素を固定して、自らの生育を促進する時代が来るかもしれない。名古屋大学大学院生命農学研究科の藤田祐一教授らの研究チームは、微生物の一種であるシアノバクテリアに窒素固定酵素の遺伝子を導入し、働かせることに成功した。光合成生物では初めてで、窒素肥料を前提とした現代の作物栽培の常識を変える大きな成果だ。今後はこの窒素固定酵素の活性を高めるとともに、作物に導入する方法を模索していく。


特集

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P.10農業を持続可能に 決め手は微生物

微生物界の「キーパーソン」を農業に役立てる

植物の生育にとって有益な微生物叢(微生物の集まり)を構築するにはどうすればいいのか。京都大学生態学研究センターの東樹宏和准教授は、他の共生微生物を植物体へと呼び寄せるなど、生態系の中でつなぎ役となって微生物叢全体の形成を制御する微生物が存在する可能性を見いだし、「コア共生微生物」と命名した。このコア共生微生物を植物の種子や苗に接種して植物の生育の促進に役立てようとしている。


新連載

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P.12Vol.1 研究成果展開事業 研究成果最適展開支援プログラム(A-STEP)

究極の速さを求めて 「飛ぶ光」を撮る超高速カメラ

1億分の1秒の画像を撮影する超高速カメラを開発したのは、立命館大学理工学部の江藤剛治客員教授を中心とする産学連携の研究チームだ。イメージセンサーを用いたカメラとしては世界で初めて、光が飛ぶ瞬間を捉えることに成功した。


NEWS & TOPICS

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P.14JSTの最近のニュースから

NEWS & TOPICS

【研究成果】洪水で沈んでも背を伸ばす「浮きイネ」の仕組みと起源を解明
【イベント】デザインの楽しさを見て、聴いて、触って、体験できる展覧会
【募集】西日本豪雨からの復興のための研究課題を募集中 産学連携で被災地域に貢献
【研究成果】生体を長時間「ありのまま」観察できる近赤外蛍光標識剤を開発


さきがける科学人

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P.16戦略的創造研究推進事業さきがけ

「冬眠」が起きる未知のメカニズムに挑む

北海道大学 低温科学研究所生物環境部門 教授
山口 良文


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表紙画像

表紙写真について

未解明な微生物の世界を探求し、その潜在能力を引き出そうとする研究者たち。食料・エネルギー問題や資源枯渇の解決に向け、化学肥料だけに頼らない農業の実現に挑む。

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