JSTトップ>JSTnews>バックナンバー一覧 2012年度>2012年11月号
JSTnewsは、独立行政法人科学技術振興機構(略称JST)の広報誌です。JSTの活動と、最新の科学技術・産学官連携・理数教育などのニュースを、わかりやすくご紹介します。
本年のノーベル生理学・医学賞を、山中 伸弥 博士(京都大学 iPS細胞研究所 所長)が受賞した。今回の受賞は、山中博士の研究チームによる「成熟細胞が初期化され、多能性を獲得しうる現象の発見」=人工多能性幹細胞(iPS細胞)の樹立に対して贈られるものである。JSTは2003年度の戦略的創造研究推進事業CRESTでの山中博士を研究代表者とするプロジェクトを始めとして、現在まで、生命科学の世界に革命をもたらす山中博士の研究を支援し続けてきた。iPS細胞技術は再生医療や難病治療などの臨床応用への強い期待が寄せられている。世界が認めた日本発の成果が、更なる革命的な成果を生み出すための偉大な一歩となることを願いたい。
P.05 「ながはまルール」が参加者の利益を守り意志を尊重する
「医学の発展」と「市民の健康づくり」を目的として、滋賀県長浜市と京都大学が始めたゲノム疫学研究プロジェクト。大学と自治体、市民1万人が参加して行われるこの事業では、人権尊重と個人情報保護のために、日本初の独自ルールが制定された。歴史深い町、長浜でのゲノム研究と市民という新しいつながりが、プロジェクトの進展と健康な町づくりを後押ししている。
P.10 統合化と情報共有の先に見える光
生命科学分野の研究で日々生み出される膨大なデータから、必要な情報を活用するためには、これまで研究者ごとに作られてきた多種多様なデータベースを統合化する情報基盤の整備が欠かせない。新たな基礎研究と産業への応用を支える、統合データベース構築の取り組みを紹介する。
P.14 患者自身の軟骨細胞を活用する医療機器の製造・販売が承認
指の傷がやがて治るのは、血液が栄養成分や細胞を運び、傷ついた部分を修復してくれるからだ。しかし血管が通っていない軟骨には、このような自然治癒力がない。そのため、膝関節などの軟骨が損傷・変形すると、人工関節を始めとする対処療法に頼るほかなかった。整形外科の現場が長年抱えてきたこの課題に対し、再生医療による根本的な治療法を提案するのが「自家培養軟骨ジャック®」だ。開発から10年以上を経て、いよいよ製造販売をスタートさせる株式会社ジャパン・ティッシュ・エンジニアリング(J-TEC)を訪ねた。
P.18 戦略的創造研究推進事業さきがけ ナノシステムと機能創発
研究課題「電界による磁化スイッチングの実現とナノスケールの磁気メモリの書込み手法への応用」
京都大学 化学研究所 材料機能化学研究系 ナノスピントロニクス 千葉 大地 准教授
滋賀県長浜市では、市民の健康づくりとゲノム疫学研究のための「ながはま0次予防コホート事業」が1万人の市民参加を得て行われている。写真は、市の観光スポット「黒壁スクエア」の中心街の風景。手前は、市民の健康づくりを推進するNPO法人「健康づくり0次クラブ」によるイベント告知ポスター(いきいき健康フェスティバル)と広報誌「げんき玉」。