本プログラムは、公的資金による研究開発成果を適用して、社会技術における具体的な問題を解決する社会実装活動を支援するものであり、単にニーズとシーズをマッチングさせることに留まらず、結果として、誰が、どの様なメリットを受けるのかに主眼をおいてプログラムが設計され、審査が行われた。
今回は、安全・安心、福祉、防災、環境、経済の複数の分野にまたがり、「高齢者ドライバーの安全運転を長期間継続可能にする支援システムの社会実装」、「サハリン沖石油・天然ガス生産に備える市民協働による油汚染防除体制の構築」、「国内森林材有効活用のための品質・商流・物流マネジメントシステムの社会実装」、「物流と市民生活の安全に貢献するトレーラトラック横転限界速度予測システムの社会実装」という4件の提案が採択された。いずれも研究者からの提案ではあるが、社会実装の結果としての受益者の視点と必要条件としての研究開発成果が明確なものであった。
今年度は前回を上回る応募数(17件)があり、本プログラムの認知度が少しずつ高まっていると感じられたが、まだまだ、研究者がフィールドテストの一環として本プログラムに応募する例も多く、社会における現実の具体的な問題解決に主眼をおいた本プログラムの趣旨とは微妙なズレが感じられた。刻々と変化する社会の問題に対して、問題解決の手段として研究開発成果をいかにタイムリーに結びつけるかは困難であるが重要な課題であり、次回以降の提案に期待したい。
今後は、実装活動を通じて社会に直接的に働きかけるNPO法人や受益者に本プログラムを広く認知してもらうとともに、社会の具体的な問題解決のための研究開発成果を生み出す研究者との協働を、積極的に促進していきたい。
※ 研究開発成果実装支援プログラムの詳細(募集要項など)につきましては、以下のホームページをご覧ください。
URL:https://www.jst.go.jp/ristex/