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科学技術振興機構報 第330号

平成18年8月29日

東京都千代田区四番町5-3
科学技術振興機構(JST)
電話03(5214)8404(総務部広報室)
URL https://www.jst.go.jp

大面積露光が可能な小型レーザー直接描画装置の開発に成功

 JST(理事長 沖村憲樹)は、独創的シーズ展開事業委託開発の開発課題「マルチポリゴン方式レーザー直接描画システム」の開発結果を、このほど成功と認定しました。
 本開発課題は、新潟大学工学部教授の新田勇の研究成果を基に、平成15年3月26日から平成18年3月31日にかけて株式会社オプセル(代表取締役小俣公夫、本社:埼玉県さいたま市緑区太田窪1-1-21、資本金15百万円、電話:048-260-3308)に委託して、企業化開発(開発費約99百万円)を進めていたものです。
 本開発は、プリント基板や液晶パネルなどの製造において、複数のレーザー光源内蔵型ポリゴン走査ユニットを用いて、短時間で高精細・大面積のパターン描画を実施できる、レーザー直接描画注1システムに関するものです。
 従来のプリント基板などの光リソグラフィ注2によるパターン描画(露光)には、フォトマスク注3を用いた密着露光方式やシルク印刷方式が用いられてきましたが、描画の精細化が困難でした。また、フォトマスクを用いない、単一ポリゴン方式注4のレーザー直接描画システムも使用されていますが、装置が大型で、ビーム径が大きい難点があります。
 本新技術では、全体描画パターンを分割・区分化したものを、複数のレーザー光源内蔵型ポリゴン走査ユニット注5に分担させ、これらのユニットを連動制御し、また各区分の画像間を、平滑に接続することにより、大面積露光が行え、かつ安価でコンパクトなシステムを目指しました。このため、均一な微小ビームでの描画が可能なレンズ系と、レンズ系の偏心が生じない独特な固定方式を考案し、高精細化を実現しました。
 また、実証試験についても、ダイオードレーザー光源を内蔵したポリゴン走査ユニットを3台搭載した直接描画システムを用いて評価を行った結果、パターンの線幅誤差および画像間の接続精度が良好なことを確認しました。これにより、プリント基板の光リソグラフィ、レーザーマーキング、その他の用途において、少量多品種の高精細パターン加工を、安価で効率よく行うための有力な手段となることが期待されます。


本新技術の背景、内容、効果の詳細は次のとおりです。

(背景)  高精細で大面積露光が可能な、コンパクトなレーザー直接描画装置が要望されてきました。

 従来、プリント基板などの光リソグラフィによるパターン描画(露光)には、高価なフォトマスクを用いた密着露光方式やシルク印刷方式が用いられてきましたが、描画の精細化が困難でした。また、フォトマスク等を用いない単一ポリゴン方式のレーザー直接描画システムも使用されていますが、装置が大型でビーム径が大きい難点があります。このため、短時間で、高精細で大面積露光が可能な、コンパクトなレーザー直接描画装置が要望されてきました。

(内容)  短時間で高精細・大面積のパターン描画を実施できる、レーザー直接描画システムに関するものです。

 本新技術では、全体描画パターンを分割・区分化したものを、複数のポリゴン走査ユニットに分担させ、これらのユニットを連動制御し、また各区分の描画パターン間を平滑に接続することにより、大面積露光が行え、かつ安価でコンパクトな描画システムを目指しました。このため、均一な微小ビームでの走査が可能なレンズ系と、レンズ系の偏心を生じない独特な固定方法(シュリンクフィッタ)注6を考案し、高精細化を実現しました。
 本システムをまとめると、以下のような特徴が挙げられます。

1 全体描画パターンを80mmx80mmの要素に分割し、複数のレーザー光源内蔵型ポリゴン走査ユニットに分担させ、これらユニットを連動制御し、また描画パターン間を、平滑に接続することにより、単一ポリゴン走査方式に比して、短時間で、全体の大面積露光が行えます。

2 レンズ周辺部でのレーザービーム径の増加傾向を防止するために、特別に設計したテレセントリック注7 fθレンズ注8を用い、また、温度変化に対しても、レンズ系の偏心を生じないための独特な固定方法(シュリンクフィッタ)を導入しました。これにより、全域で微細なレーザースポット径(約10μm)を維持し、パターンの精細化を実現しました。

 このように、レーザー光源内蔵型ポリゴン走査ユニットを、目的に応じて、必要台数設置することで、大面積露光が可能なコンパクトなレーザー直接描システムを、フレキシブルに提供できます。さらに、レーザー光源を大型化すれば、大量生産用にも対応できる特徴があります。

(効果)  各種用途における高精細直接描画装置として、幅広い応用が期待されます。

 本技術のマルチポリゴン方式直接描画システムは、レーザー光源内蔵型ポリゴン走査ユニット3台使用した場合、機械的ステージ移動も併用すれば、最大240mmx200mmの大面積描画が可能です。また、従来のレーザー直接描画装置では、ビーム径が数十μmであったのに比べて、露光面全域にわたり、10μm程度の、均一なビーム径が維持できる特徴があります。さらに全体装置がコンパクトで低価格であることから、プリント基板の光リソグラフィ以外に、レーザーマーキングや、マイクロリアクタの試作等、多用途において、少量多品種の高精細パターン加工を、安価で効率よく行うための有力な手段となることが期待されます。

用語解説
図1.マルチポリゴン方式レーザー直接描画システム(3ユニット構成の例)
図2.描画テストパターンの一例
開発を終了した課題の評価

<お問い合わせ先>

株式会社オプセル 埼玉研究室 勝山 幹三(カツヤマ ミキゾウ)
〒336-0936 埼玉県さいたま市緑区太田窪1-1-21
電話:048-260-3308 FAX:048-260-3309

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