科学技術振興機構報 第1768号

2025(令和7)年5月21日

東京都千代田区四番町5番地3
科学技術振興機構(JST))

研究倫理映像教材「倫理の空白Ⅳ 研究活動のグレーゾーン2」の
オンライン公開について

JST(理事長 橋本 和仁)は、研究倫理映像教材「倫理の空白Ⅳ 研究活動のグレーゾーン2」を制作し、JSTのウェブサイトに公開しました。

JSTは、研究資金の配分機関として、公正な研究活動の推進の一環である、研究倫理教育の実施の支援を行っています。研究機関における研究倫理教育の推進が図られるよう、国内の研究倫理教育で広く活用されているeラーニングやテキストの知識習得型教材と相互に補完できる教材として、映像を活用したドラマ形式で、具体的な場面を想定して議論をしながら主体的に学習できる双方向型の教材「倫理の空白」シリーズを制作しています。1作目は、准教授と学生の異なる視点から描く「理工学研究室編」、2作目は「盗用編」、3作目は、人文・社会科学系と自然科学系それぞれの研究室を舞台にし、「研究活動のグレーゾーン」を制作しました。

シリーズ4作目となる今回は、3作目に引き続き、疑わしい研究行為(QRP)を取り上げます。QRPとは、不正行為として認定される可能性のあるグレーゾーンの研究行為のことで、研究プロセスへの信頼を損ねる可能性のあるものです。

QRPには、3作目で取り上げた、二重投稿、不適切なオーサーシップ、自己盗用、サラミ出版など以外にも、さまざまな類型があることから、今回はQRPの続編として、データ解析を主なテーマとし、データ管理なども取り上げています。またQRPは、研究分野を問わず研究に携わる多くの方々にとって関心が高いテーマであるため、幅広い分野の研究者が当事者意識を持つことができるよう、人文・社会科学編と自然科学編の2編を制作しました。

人文・社会科学編では、博士号取得を目指す学生が論文執筆に向けて再現実験をする中で、実験結果が仮説にそぐわないことが判明します。学生が、仮説を後付けして書いた論文を指導教員に見せて相談する過程が描かれています。

自然科学編では、共同研究に希望を見いだした教授から実験の担当者に指名された学生が、最初の実験では教授の仮説通りの結果が出るものの、徐々に実験結果が再現できなくなり、データを選別し始める過程が描かれています。

本教材は、幅広い研究者を教育対象として想定しています。研究室主宰者(PI)など、研究を指導する立場にある研究者が視聴する場合は、マネジメントする側として自身の研究行為や指導を振り返り、研究者としてのあるべき姿を考えることができます。また、学生や若手研究者が視聴する場合は、指導者がどのような背景や考えを持っているのかなど、指導者の立場も疑似体験しつつ、QRPを自分事として捉えることができる教材です。

これまでの3作品と同様、研究現場で起こり得る、リアリティーのあるケースを疑似体験することで、視聴者が主体的に考え、責任ある研究活動を行うための判断力を養うことができます。

研究倫理上の問題に直面した具体的な場面を想定しながらの議論が可能なため、映像の視聴とディスカッションを組み合わせたワークショップやグループワークで活用することが最も効果的です。

大学での講義や研究機関での講習など、さまざまなシーンでの活用も可能です。本教材が各研究機関における研究倫理教育の一助となり、研究不正を防止し、責任ある研究活動の推進に資することを期待しています。

研究倫理映像教材「倫理の空白Ⅳ 研究活動のグレーゾーン2」の映像は、以下のJSTウェブサイトからご覧ください。

URL:https://www.jst.go.jp/kousei_p/measuretutorial/mt_movie.html

<プレスリリース資料>

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