科学技術振興機構報 第1690号

令和6年5月7日

東京都千代田区四番町5番地3
科学技術振興機構(JST)

研究倫理映像教材「倫理の空白Ⅲ 研究活動のグレーゾーン」の
オンライン公開について

JST(理事長 橋本 和仁)は、研究倫理映像教材「倫理の空白Ⅲ 研究活動のグレーゾーン」を制作し、JSTのホームページに公開しました。

JSTは、資金配分機関として、研究公正の普及啓発を行っています。また、研究機関における研究倫理教育の推進が図られるよう、日本の研究現場における研究不正行為の現状を踏まえ、映像を活用したドラマ形式の双方向型教材「倫理の空白」シリーズを制作しています。1作目は、准教授と学生の異なる視点から描く「理工学研究室編」、2作目は、人文・社会科学系と自然科学系それぞれの研究室を舞台にした「盗用編」を制作しました。

シリーズ3作目となる今回は、疑わしい研究行為(QRP:Questionable Research Practice)を取り上げます。QRPとは、不正行為につながりかねない問題を含むグレーゾーンの研究行為のことです。具体的な例として、同じ研究成果の重複発表(二重投稿)、論文著作者が適正に公表されない不適切なオーサーシップ、研究記録の不適切な管理といったものが挙げられます。これらは不正行為につながるもので、研究プロセスへの信頼を損ねる可能性のある行為です。

QRPは、研究分野を問わず、研究に携わる多くの方々にとって関心が高いテーマとなっていることから、今回のストーリーは、幅広い分野の研究者が当事者意識を持つことができるよう、人文・社会科学編と自然科学編の2編を制作しました。QRPには、さまざまな類型がありますが、このドラマでは、主なテーマとして二重投稿、不適切なオーサーシップ、自己盗用、サラミ出版に焦点を当てるほか、データ管理も取り上げています。

人文・社会科学編では、ある研究室のメンバーが研究データの管理やオーサーシップなどの問題に直面します。また、研究室をマネジメントする立場の教授にも研究倫理上の問題が生じ、教授も自身の研究行為や指導の在り方を振り返ることになります。

自然科学編では、研究倫理教育や論文投稿の指導に熱心な准教授と、その研究室の学生に、自身の過去論文に対する研究倫理上の問題が持ち上がります。准教授と学生の双方が過去の研究行為に向き合う姿が描かれています。

本教材は、いずれのストーリーにおいても、主に研究室主宰者(PI)など、研究を指導する立場にある研究者を教育対象者として想定しています。マネジメントする側として自身の研究行為や指導を振り返り、研究者としてのあるべき姿を考えることを目的としています。また、学生や若手研究者が視聴する場合は、指導者がどのような背景や考えを持っているのかなど、指導者の立場を擬似体験しながら、疑わしい研究行為を自分事として捉えることができる教材です。

これまでの2作品と同様、ドラマならではのリアリティーあふれる映像により、研究倫理上の問題を含んだ状況を疑似体験することで、視聴者が主体的に考え、責任ある研究活動を行うための判断力を養うことができます。

eラーニングやテキストといった知識習得型教材とは異なり、研究倫理上の問題に直面した具体的な場面を想定しながらの議論が可能ですので、ドラマの視聴とディスカッションを組み合わせたワークショップやグループワークで活用することが最も効果的です。

大学での講義や研究機関での講習など、さまざまなシーンでの活用も可能です。本教材が各研究機関における研究倫理教育の一助となり、研究不正を防止し、責任ある研究活動の推進に資することを期待しています。

研究倫理映像教材「倫理の空白Ⅲ 研究活動のグレーゾーン」の映像は、以下のJSTホームページからご覧ください。

URL:https://www.jst.go.jp/kousei_p/measuretutorial/mt_movie_gapinethics3.html

<プレスリリース資料>

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