科学技術振興機構報 第102号
平成16年8月24日
東京都千代田区四番町5-3
独立行政法人科学技術振興機構
電話(03)5214-8404(総務部広報室)
URL http://www.jst.go.jp

PET診断薬原料となる18O標識水の量産プラント開発に成功

 独立行政法人科学技術振興機構(理事長:沖村憲樹)は、委託開発事業の開発課題「酸素18安定同位体標識水の製造技術」の開発結果を、このほど成功と認定しました。
 本課題は、東京工業大学名誉教授 浅野康一氏の研究成果を基に、平成13年3月から平成16年6月にかけて日本酸素株式会社(代表取締役社長 田口博、本社 東京都港区西新橋1-16-7、資本金270億39百万円)に委託して実用化開発(開発費約1,273百万円)を進めていたものです。
(開発の背景)
 ポジトロン断層撮影診断(PET)による腫瘍等の検査件数は、日米欧で保険適用が開始されたこともあり、年々増加しています。この検査に使用される診断薬18FDG※1の原料となる酸素18安定同位体標識水(18O標識水)の需要も急速に増大しており、低コストでの量産が望まれていました。
(開発の内容)
 本新技術は、高純度の酸素ガスを蒸留して、質量の異なる三種類の酸素(16O,17O,18O)のうち、18Oを濃縮、これに水素を添加することで18O標識水を生産します。18Oの存在比が小さいこと、16Oと18Oの物理化学的性質はほぼ同じであることから蒸留分離は困難とされていましたが、浅野教授の研究成果である熱と物質の同時移動モデルを応用することで詳細設計が可能となり、これにより、97%以上の高濃度18O標識水を年間100kg生産可能なプラントを建設しました。
(開発の効果)
 本生産法は、従来の水蒸留法に比べ蒸発潜熱が約1/6と小さく、その分エネルギー消費を押さえることができ、また一酸化窒素蒸留法に比べて安全に取扱えます。本技術による18O標識水は、高濃度、高品質で安定供給が可能であるため、PET診断薬18FDGの原料として、医療分野での利用が期待されます。

【用語解説】
※1 18FDG:ブドウ糖の類似化合物であるフルオロデオキシグルコースをポジトロン放出核種のフッ素18放射性同位体で標識したPET用造影剤。ブドウ糖代謝が激しい悪性腫瘍等の組織に集積するため、PETで18FDGの体内分布を画像化して悪性腫瘍検査、心機能検査、脳機能検査を行う。
本新技術の背景、内容、効果の詳細
図1 18O標識水の製造工程
図2 18O標識水製造プラント
図3 18O標識水製品
開発を終了した課題の評価

なお、本件についての問い合わせは以下の通りです。
独立行政法人科学技術振興機構 開発部開発推進課
菊地博道、今村千早(電話:03-5214-8995)

日本酸素株式会社 SIプロジェクト部
前田彰彦(電話:044-549-9261)
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