ポイント
- カンアオイ属を対象に、花の臭いニオイ成分「ジメチルジスルフィド」を含む種と含まない種の間で比較研究を行い、臭いニオイの生合成に関与する複数の遺伝子を特定。
- 特定した遺伝子の1つがジメチルジスルフィドを生合成する新発見の酵素の遺伝子であることを解明し、これをジスルフィドシンターゼ(DSS)と命名。
- DSSの機能は陸上植物が共通して保有する祖先的な酵素メタンチオールオキシダーゼから、わずかなアミノ酸配列の変化で獲得されることを解明。
- DSSはカンアオイ属だけでなく、全く異なる植物のグループであるヒサカキ属、ザゼンソウ属でも独立に進化し、全く同じプロセスを経て同じ機能を持つ酵素を獲得したことを発見。
- 植物園が戦略的に収集して維持しているリビングコレクション(生植物)が、未知の生命現象を解き明かすために決定的に重要な役割を果たしうることを示した。
国立科学博物館の研究主幹 奥山 雄大(植物研究部・筑波実験植物園/東京大学 大学院理学系研究科 准教授兼任)は、国立遺伝学研究所、昭和医科大学、長野県環境保全研究所、宮崎大学、東北大学、情報・システム研究機構 ライフサイエンス統合データベースセンター、龍谷大学、慶應義塾大学との共同研究により、腐った肉のような臭いニオイで昆虫をだまして花粉を運ばせる(腐肉擬態)花が、臭いニオイの成分「ジメチルジスルフィド」を生み出すメカニズムを解明し、またその機能を獲得する進化がわずかなアミノ酸置換でもたらされることを実験的に示すことに成功しました。
さらにそのメカニズムを担う酵素がカンアオイ属、ヒサカキ属、ザゼンソウ属という全く異なる植物で独立に進化、獲得されていることを発見しました。これは花による腐肉擬態というユニークな現象が、どのような成り立ちで進化しうるのかを明快に説明できた類いまれな成果と言えます。
本研究成果は、2025年5月8日刊行の「Science」誌に掲載(発表)されました。
本研究は、科研費(JP19H03292, JP20H02917)、科学技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業 さきがけ(JPMJPR21D3)の支援を受けています。
<プレスリリース資料>
- 本文 PDF(1.45MB)
<論文タイトル>
- “Convergent acquisition of disulfide-forming enzymes in malodorous flowers”
- DOI:10.1126/science.adu8988
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