ポイント
- 現在、再生可能なエネルギー源や未利用のエネルギー源の有効利用が世界中で広く求められているが、廃熱を利用した熱電変換デバイスの利用は限定的
- 室温程度の熱(フォノン)を用いて電荷・電子移動に変換することに成功
- 温度勾配のない室温で小規模な熱エネルギーを取り出す新しい発電メカニズムを提供
九州大学、九州先端科学技術研究所(ISIT)、フランス国立科学研究センター(CNRS)、(株)GCEインスティチュート(GCEI)の研究グループは、有機電荷移動(CT:Charge Transfer)錯体を活用した新しい発電機構に基づく有機熱電デバイスの開発に成功しました。
従来の熱電素子は、ゼーベック効果を利用した発電機構に基づいていますが、今回、九州大学 最先端有機光エレクトロニクス研究センター(OPERA)・安達 千波矢 教授らが開発したデバイスは、有機pn接合のアーキテクチャーを基礎に、有機電荷移動(CT)界面における電荷分離(CT励起子解離)を熱(フォノン)で実現し、さらに、隣接する電荷輸送層間の電荷拡散・移動を実現することで、電子とホールをそれぞれ対極に取り出すことに成功しました。本デバイスは、タンデム型OLED(有機EL)構造における電荷発生機構、熱活性化遅延蛍光(TADF)材料における励起子の熱励起機構、有機太陽電池における電荷分離機構を融合した技術です。
現在、再生可能なエネルギー源や未利用のエネルギー源の有効利用が世界中で広く求められています。廃熱を利用した熱電変換デバイスは一部実用化されているものの、毒性の高い材料を使用すること、使用する貴金属が高価であること、温度勾配を形成するための設置スペースが限られているなどの問題があり、その利用は限定的です。本研究では、日常生活環境において室温で存在する数10ミリ電子ボルト程度の微小熱エネルギーに着目し、有機CT界面の電荷分離機能、有機薄膜中の電荷拡散、およびフェルミ準位の整列によって駆動される有機ヘテロ界面でのキャリア移動現象を利用した、新しい動作メカニズムを開発しました。
本研究成果は、2024年9月19日(木)(中央ヨーロッパ時間)に科学雑誌「Nature Communications」誌にて公開されます。
本研究の成果は、科学技術振興機構(JST) CREST(研究代表者:京都大学 畠山 琢次 教授、含BNナノカーボン分子の自在合成と配向制御(JPMJCR22B3))、日本学術振興会 国際先導研究(23K20039)の支援および(株)GCEIとの共同研究により得られたものです。
<プレスリリース資料>
- 本文 PDF(1.37MB)
<論文タイトル>
- “Organic Thermoelectric Device Utilizing Charge Transfer Interface as the Charge Generation by Harvesting Thermal Energy”
- DOI:10.1038/s41467-024-52047-5
<お問い合わせ先>
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