超高速演算が可能な光量子コンピューターや盗聴不可能な暗号通信である量子暗号通信などの実現には、光子を一つ一つ発生させる単一光子源が大変重要です。最近、単⾊性に優れた光⼦が室温で安定に発⽣する新たな光子源として、窒素とホウ素の層状物質である「六⽅晶窒化ホウ素(hBN)」中の色中心が注⽬されています。しかし、発光波長の異なる複数の色中心がほぼ同じ場所に存在する場合、発生する光子よりも大きなエネルギーで励起する従来の方法では、対象の色中心以外からの発光がノイズになることが重大な問題となっていました。
今回、京都大学 大学院工学研究科 岡城 勇大 修士課程学生、嶋﨑 幸之介 博士課程学生、鈴木 和樹 修士課程学生(研究当時)、向井 佑 助教、竹内 繁樹 教授と公立千歳科学技術大学 髙島 秀聡 准教授からなる研究グループは、シドニー工科大学の共同研究グループと共に、発生する光子よりも小さなエネルギーの励起光を用いることで、特定の色中心から選択的に単一光子を発生させることに成功しました。また、この励起方法によりノイズとなる背景光子を低減できることも実証しました。
今回得られた結果は、室温で動作する良質な単一光子源への道を開くものであり、光量子コンピューターや量子暗号通信、量子センサーの研究の飛躍的な発展に貢献すると期待されます。なお、本成果は、2024年9月5日(米国東部時間)に米国化学会が発行する国際学術誌「ACS Photonics」にオンライン掲載されます。
本研究は、文部科学省 光・量子飛躍フラッグシッププログラム(Q-LEAP、JPMXS0118067634)、科学技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業 CREST(JPMJCR1674)、同 さきがけ(JPMJPR2257)、日本学術振興会(JSPS) 科学研究費助成事業(24H00195、21H04444、26220712、23K22426、19K03686)などの支援を受け、シドニー工科大学と共同で実施しました。
<プレスリリース資料>
- 本文 PDF(5.1MB)
<論文タイトル>
- “Selective Anti-Stokes Excitation of a Single Defect Center in Hexagonal Boron Nitride”
- DOI:10.1021/acsphotonics.4c00594
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