ポイント
- 酸化ジルコニウム・バッファ層を用いることにより簡便な手法でシリコン(Si:ケイ素)ウェハー上に大面積の強誘電体結晶薄膜の作製が可能になりました。
- 欠陥を抑制するのではなく積極的に導入することにより、極めて安定した電気抵抗スイッチング特性を実現しました。
- 本成果は脳機能模倣素子の開発研究に役立つだけでなく、高品質な強誘電体結晶薄膜の汎用的な作製手法としての実用化が期待されます。
東京大学 大学院工学系研究科の李 海寧 大学院生、木島 健 特任研究員、山原 弘靖 特任准教授、田畑 仁 教授と関 宗俊 准教授らによる研究グループは、同研究グループが開発を進めているバッファ層とスピンコート法を組み合わせることにより、Si基板上に大面積の強誘電体結晶薄膜を作製するための新たな手法を開発しました。本研究では、この手法を用いて作製した強誘電体結晶薄膜において、スパッタリング法などの他の手法で作製した薄膜では見られない安定した電気抵抗スイッチング特性が発現することを見いだすとともに、このスイッチングの機構が薄膜中の酸素欠陥によって説明できることを明らかにしました。この成果は電気抵抗スイッチング特性を利用した脳機能模倣素子の開発研究に役立つだけでなく、高品質な強誘電体結晶薄膜を作製できる簡便かつ汎用的な手法として、さまざまな強誘電体機能デバイスの開発に応用できるものと期待されます。
この研究成果は、2024年7月18日(日本時間)に「Advanced Electronic Materials」で公開されます。
本研究は、Beyond AI連携事業による共同研究費、JST CREST(課題番号:JPMJCR22O2)、AMED(課題番号:JP22zf0127006)、JSPS 科研費「基盤研究(S)(課題番号:20H05651)」、「挑戦的研究(萌芽)(課題番号:22K18804)」、「学術変革領域研究(A)(課題番号:23H04099)」、「基盤研究(B)(課題番号:22H01952)」、「特別研究員奨励費(課題番号:23KJ0418)」の支援により実施されました。
<プレスリリース資料>
- 本文 PDF(522KB)
<論文タイトル>
- “Epitaxial Single-Crystalline PZT Thin Films on ZrO2-Buffered Si Wafers Fabricated Using Spin-Coating for Mass-Produced Memristor Devices”
- DOI:10.1002/aelm.202400280
<お問い合わせ先>
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