ポイント
- m-ベンザイン(1,3-ジデヒドロベンゼン)の常温常圧合成を実現した
- ベンゼン環内に広がる反転シグマ(σ)結合を含むm-ベンザインの物性を実験的に明らかにした
- 新たな準安定結合/分子の発見により創薬・材料合成への新たな道が拓けた
ベンザインは、ベンゼンから形式的に水素を2つ取り除いた化学種であり、水素を取り除く位置によってオルト(o-)・メタ(m-)・パラ(p-)ベンザインの3つの異性体が存在します。東京大学 大学院薬学系研究科(兼:信州大学 先鋭材料研究所(クロスアポイント))の内山 真伸 教授と、宮本 和範 准教授(現・慶應義塾大学 薬学部 教授)、小山田 健太 大学院生(研究当時)らによる研究グループは、超原子価ハロゲン化合物の超脱離能を用いた精密反応設計により、m-ベンザインを世界で初めて常温常圧にて化学合成することに成功しました。
本技術により、ベンゼン環内に広がる反転σ結合の存在を含む、m-ベンザインの物理化学的性質ならびに合成化学的特性を初めて明らかにしました。ベンザインの合成化学の最後のピースを補完した本研究成果は今後、反転σ結合を始めとする準安定結合や面内芳香族性の本質的理解に貢献するとともに、医薬品や機能性材料の合成に役立つことが期待されます。
本研究成果は、2024年7月17日(英国夏時間)に「Nature Synthesis」に掲載されます。
本研究は、科研費「基盤研究(S)(課題番号:17H06173)」「基盤研究(A)(課題番号:22H00320)」、「学術変革領域研究(A)(課題番号:22H05125)」「基盤研究(B)(課題番号:20H02720)」、「特別研究員奨励費(課題番号:21J21600)」、科学技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業 チーム型研究(CREST)(JPMJCR19R2)ならびに長瀬科学技術振興財団、内藤記念科学振興財団、中外創薬科学財団、上原記念生命科学財団の支援により実施されました。
<プレスリリース資料>
- 本文 PDF(566KB)
<論文タイトル>
- “Room-temperature Synthesis of m-Benzyne”
- DOI:10.1038/s44160-024-00572-y
<お問い合わせ先>
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内山 真伸(ウチヤマ マサノブ)
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