ポイント
- 金属酸化物ナノクラスターで表面を保護することにより、溶液中での高い安定性と反応性を両立した微小な金ナノ粒子(直径約3ナノメートル)を開発した。
- 開発した金ナノ粒子は、空気中に豊富に存在する酸素を酸化剤として用いると、アルコールなどの有機化合物の酸化反応に優れた触媒特性を示す。
- 金以外にもさまざまな金属ナノ粒子を合成でき、触媒、センサー、エレクトロニクスなど幅広い応用が期待される。
東京大学 大学院工学系研究科 応用化学専攻の鈴木 康介 准教授、夏 康 大学院生、谷田部 孝文 助教、米里 健太郎 助教、山口 和也 教授らによる研究グループは、同研究科附属総合研究機構の石川 亮 特任准教授、柴田 直哉 教授、幾原 雄一 教授、東京都立大学 大学院理学研究科の吉川 聡一 助教、山添 誠司 教授、物質・材料研究機構の中田 彩子 主幹研究員と共同で、金属酸化物ナノクラスターで保護することにより、高い安定性と触媒活性を両立した金ナノ粒子の開発に成功しました。
金は安定で反応性に乏しい金属とされてきましたが、サイズを小さくすることで優れた触媒作用を示します。しかし、小さな金ナノ粒子は溶液中で集合しやすいため、高い安定性と反応性を両立できる技術の開発が求められています。本研究では、有機溶媒中で金属酸化物ナノクラスターを保護剤として用いた合成法により、直径約3ナノメートルの小さな金ナノ粒子を開発しました。この金ナノ粒子は、触媒反応を行う条件で安定であり、空気中に豊富に存在する酸素を酸化剤として用いると、アルコールなどの有機化合物の酸化反応に優れた触媒特性を示します。また、この技術を用いることで、金以外にもさまざまな金属のナノ粒子を合成することができます。本成果は、金ナノ粒子を利用した環境に優しい化学反応プロセスの開発、資源循環やエネルギー変換を実現する触媒、センサー、エレクトロニクスなど幅広い応用が期待されます。
本研究成果は、2024年2月6日(英国時間)に英国学術誌「Nature Communications」誌のオンライン版に掲載されます。
本研究は、科学技術振興機構(JST) 創発的研究支援事業(課題番号:JPMJFR213M、JPMJFR2033)、JST 戦略的創造研究推進事業 さきがけ(課題番号:JPMJPR18T7、JPMJPR19T9、JPMJPR20T4、JPMJPR227A)、日本学術振興会(JSPS) 科学研究費補助金(課題番号:22H04971)、JSPS 研究拠点形成事業などの支援により実施されました。
<プレスリリース資料>
- 本文 PDF(357KB)
<論文タイトル>
- “Ultra-stable and highly reactive colloidal gold nanoparticle catalysts protected using multi-dentate metal oxide nanoclusters”
- DOI:10.1038/s41467-024-45066-9
<お問い合わせ先>
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鈴木 康介(スズキ コウスケ)
東京大学 大学院工学系研究科 准教授
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